吐く息が白くなる寒い朝は、
自分の体温が感じられる。
雪の上にまるまる木の葉のように
いのちそのものの輪郭が浮かび上がる。
それは、ほんのりと優しい気持ちにさせてくれる。
4年ほど、一本の桜を定点撮影したことがあった。
一年の桜を眺めていて、
桜の木が大寒のころから立春にかけて
赤みを帯びていることに気づいた。
翌年からは、赤みを帯びる桜の木を
目で確認できるようになった。
すべての葉を落とし、
何も動いていないように見える冬の樹々。
最も寒い季節、
そのいのちの力、内圧を高めていることがわかり
感動を覚えた。
春、人々を感動させる
あのほんのりと淡いピンクの花びらの色は
一番寒い季節に作られている。
「寒仕込み」という言葉があるが
自然界も同じようだ。
人間もそうなのだろう。
すべての動きが止まり、ものごとが終わっていく
厳しい寒さを耐え、春への希望も失うような
人生の冬ともいえる時、
こつこつと積み重ねる時、
いつか迎えるであろう春への準備は
本人すらわからないところで
ひそやかにつつましやかにすすんでいる。
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