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同調率99%の少女(12) :五月雨・時雨・夕立・村雨たち
--- 2 五月雨・時雨・夕立・村雨たち
五月雨達は大鳥婦人の娘を取り囲んでおしゃべりに興じている。
「ねぇさつきちゃん。」
「え?なぁに高子ちゃん?」
大鳥婦人の娘が五月雨を本名で呼ぶ。最初の艦娘であり大鳥親子とは提督ともども他の皆より面識がある五月雨は彼女と最も親しい。五月雨は大鳥婦人の娘へ向いた。
「みんなお友達同士で艦娘のお仕事って、どう?楽しい? 学校では人気とかある?」
一般人の純粋な質問を受け、五月雨は時雨たちと顔を見合わせて答え始める。
「ん~そうだね~。仕事って言っても、私達にとってみれば部活動そのままって感じだから、時雨ちゃん、ゆうちゃん、ますみちゃんたちと一緒にお仕事出来て楽しいよ。学校で人気って……どうなんだろ?」
最後の問いかけに対し五月雨は再び時雨たちに視線を向けて返事を確認しようとする。それを受けて時雨たちも口を開いて答え始めた。
「艦娘部作って最初の頃は学校中で注目されたけどすぐに落ち着いたよね。だから今も特別目立ってるわけでもないし、みんなもう日常になった感じかな。」と時雨。
「でも私達の活動は新聞部がすぐに取り上げてくれて、毎回みんな興味津々に読んでくれてるから、密かに注目されまくってるかもしれないわねぇ。」
村雨も時雨に続いて、自身の中学校の事情を伝える。
「そういや白浜さん、その新聞見るたびにグヌヌって言って拗ねてるっぽいけどね~。」
夕立は自身の中学校の艦娘部にいるもう一人に軽い口ぶりで触れ、オチをつけたのだった。
大鳥婦人の娘、高子はそれを聞いて質問した。
「その白浜さんってだぁれ?艦娘?」
「私達の艦娘部の部長で、私達の友達。白浜貴子ちゃんっていうの。」五月雨がまず最初に答えた。
「私と同じ名前なんだぁ。」
「漢字は違うわよぉ。」
五月雨からの回答を聞いた高子が自身の名と同じだとどうでもいい感想を発すると、村雨は空中で字を書いて違いを知らせて促した。
引き続き五月雨が白浜貴子についての紹介を再開した。
「でも一人だけ合う艤装がまだ見つかってないから、うちの鎮守府に来てないの。」
「一番お姉さんっぽいんだけど、ヘタするとゆうを差し置いて一番子供っぽいからね、白浜さん。」
「ウフフ、それは言えてるかもねぇ。」
五月雨がその友人を説明すると、時雨は夕立を引き合いに出して白浜貴子を冗談めかして評価し、村雨はそれに同意した。そのとき、食べ物を取りに行って口に入れて戻ってきた夕立が自分に触れられたのを耳にして、時雨と村雨に文句を言った。
「フグァ!もぐもぐ!!もがふごご!!」
時雨は額を抑え、ジト目で夕立に突っ込んだ。
「……そういうところが子供っぽいって言ってるんだよ、ゆう。」
「アハハ……貴子ちゃんもああいうところ、あるもんね~。」
「そうそう~。」
五月雨と村雨は時雨のツッコミにウンウンと頷いて激しく同意していた。高子はそんな4人の様子を見て苦笑いしつつ、仲の良さを見て羨ましいと感じていた。
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「ねぇ高子ちゃんの中学校は艦娘部ってないの?」
何気なく五月雨は聞いてみた。高子は頭を振って返事をする。
「多分ないと思う。あんまりわかんないなぁ。」
「高子ちゃんは何部に入ってるの?」時雨も高子に質問した。
「私は弓道部入ってたけど……1年の終わりでやめちゃった。」
「そうなんだ。何か理由あるの?」
時雨のさらなる質問にやや影を落としながら答えた。
「お姉ちゃんの真似で始めたのはいいんだけど、才能ないって先生や同じ部の先輩から言われて……辛くなって、それで。」
少々地雷に踏み込みそうな答えが返ってきたので時雨はまずいと思い、村雨と見合わせて話題を変えることにした。なお、夕立は皿いっぱいに持ってきた料理をモグモグしている最中のため一同は無視した。
「ねぇ高子さん。あなたも艦娘やってみたら?」
「私が!?」
「うん。2年生の途中から何か部に入るのって時期的にもう気まずいだろうし、だったら例えばこの鎮守府で艦娘になれば、私達と楽しくやれると思うの。どう?」
村雨が提案すると、高子はゆったりした口調で歯切れ悪く返事をする。
「う~~ん。お姉ちゃんが職業艦娘っていうのになったから興味はあるといえばあるんだけど……。」
「「「えっ!?お姉さん艦娘なの!?」」」
何気なく触れた姉の存在に五月雨たちは驚いて聞き返した。
なお夕立は(以下略)
「うん。お姉ちゃん大学生でね。この前、県のなんかの募集に行ったら、それでこの前なったって。」
「な、なんていう艦娘?」
「えーっとね。空母っていう種類の、たしか祥鳳っていう艦娘だって。」
五月雨が聞くと高子は思い出すような仕草をした後答える。時雨と村雨はその回答を聞いて?を顔に浮かべた。
「空母って……なんだろう?」
「さぁ~私達駆逐艦って種類だから違うのだとは思うけれど。提督に聞く?」
その場にいた4人+1人は誰も空母という種類がわからなかったのでいまいちピンとこない。そのため少し離れたところで明石たちと雑談していた提督に向かって聞いてみた。
「ねぇ~提督さぁ~ん!」
村雨が大声で叫んで提督を呼んだ。那珂や妙高たちも反応を示すが、言葉が提督に限定されているためすぐに自分らの話に戻る。
「なんだー?」
提督は明石たちに手で謝る仕草をして離れ、村雨たちのいる一角に近づいていった。
提督が来たので一同を代表して時雨が聞いてみた。
「あのね提督。高子ちゃんのお姉さんが祥鳳っていう空母の艦娘らしいんだけど、空母って何?」
「えっ?大鳥さんの上の娘さんって艦娘だったのか!?」
「はい。そうなんです。」高子が答える。
「そうか。空母っていうのは戦闘機とか飛行機を載せる船のことでね、艦娘の世界ではドローンナイズされた空飛ぶ物を自在に操る艦娘のことなんだ。」
「「「ドローンナイズ?」」」
五月雨・時雨・村雨は同時に反芻した。
「あぁ……駆逐艦担当の君たちは知らないか。色んなものに取り付けて飛行できるようにする装置のことだよ。それを取り付けたのが、艦娘の世界では攻撃機とか、偵察機として扱われるんだ。そして実際の船としての空母よろしく、空母艦娘も攻撃機や偵察機を発艦させて操り、深海凄艦を離れたところから攻撃して戦える、スペックの高い種類だよ。うちにはまだ着任してないけどな。」
「へぇ~じゃあ私達駆逐艦よりも強いんですかぁ?」と村雨。
「スペック上はね。ただ俺は空母の艦娘を管理したことないから本当のところはどうだか。というか五月雨、君は初期艦研修の時に駆逐艦だけでなく他の艦種も一通り教わったって聞いたけど?」
提督は説明をした後にふと気づいて五月雨に指摘をする。直後はポカーンとしていた五月雨だったが、すぐに顔を真赤にして慌てた様子を見せ始める。
「あ、アハハ……あのぉー。ゴメンなさい、忘れちゃってました。」
「な~んだ!さみったら、実は教えてもらってたのぉ?それ早く言いなさいよぉ。」
村雨が肘で五月雨の二の腕や脇を突っついてすかさずツッコんだ。
「うぅ~、だから忘れてたんだってばぁ。」
五月雨は困り笑いしながら村雨のツッコミをなんとか逃れようと身をモジモジと小刻みに動かす。時雨や高子はそのやり取りを見てアハハと苦笑いをして眺めて傍観している。
提督も五月雨たち女子のイチャイチャ空間にまったりと飲み込まれようとしていたが話の流れを本来の流れに戻した。
「そうそう。操れるっていえば、那珂も一応艦載機を使うことができる艦娘の種類だったな。」
提督は以前報告を受けた合同任務の時の那珂の行動を思い出した。鎮守府Aとしては当時は常備していなかったため持たさせられなかったため、那珂は任務のとき都の職員からドローンナイズドマシン、つまり超小型の飛行機を偵察機としてを使った。
那珂から詳しくその時の状況を聞くために提督は那珂を呼んだ。
「お~い、那珂。」
突然呼ばれた那珂は提督の方を振り向いた。
「は~い!なぁに提督?」
「ちょっといいかな?」
那珂は三千花らと話していたがそれを中断し、飲み物を入れた紙コップだけ持って提督や村雨たちのいる一角まで歩いてきた。
「どしたの?」
「那珂は以前の合同任務のときに、偵察機を使ったって報告してくれたよな?」
「あ~うん。東京都の人から借りたよ。それがなぁに?」
「こちらの大鳥さんのところの大学生の娘さんがね、どうやら艦娘らしいんだ。それも空母の。」
「空母?確か艦載機使える艦だったよね。ってかその人も艦娘なんだ!?」
「あぁ。それでさ、那珂も操ることができる艦娘だろ? みんなに説明して欲しいんだ。」
提督は五月雨や高子らを手のひらで指し示す。そう促された那珂だったが少々困惑気味だ。
「って言われてもなぁ~。あたしだってすべてわかってやったわけじゃないよ?本読んだことを試しただけだし。」
そう言って那珂は合同任務の時につかった偵察用の艦載機たるドローンナイズされたおもちゃの飛行機を使った時の状況を説明した。その当時側にいた五月雨だがきちんと見ていたわけではないのでその説明に興味津々で聞き入っている。説明が終わると、五月雨はもちろん提督含め全員拍手をした。
「やめてよやめてよ!提督も拍手しないで!恥ずかしい!」
「いいじゃないか。俺も実際に動かした艦娘のこと聞けて嬉しいんだよ。それが那珂ならなおのことさ。」
「う~~~あとで覚えてろよ提督ぅ。」
自分が意図せぬ注目を浴びて恥ずかしがる那珂だったが、求められた説明は最後まできちんとした。那珂から艦載機を扱うことについて聞いた一同は思い思いの感想を述べる。
「すごいね那珂さん。あと空母の人もそういうことができるなら無敵じゃないかな?」
「うんうん!うちにも空母の艦娘来てほしいわよね~。」
時雨と村雨は素直に感想を口にした。
「なんかどういう話題っぽい?あたしも欲しい~。」
「ゆうちゃん……話聞いてないなら変な入り方しないほうがいいよ……。」
夕立はようやくモゴモゴした口が落ち着いていたのか、さきほどまで全然聞いていなかった提督らの話に突然入ってきた。そのため話題に乗り遅れたがとりあえず欲しがるという反応を示してみたのだった。それに五月雨が弱々しくツッコミを入れる。
「お姉ちゃんもそういうことできるんですね~。すごいなぁ~私もそういうことしてみたいなぁ~。」
「ははっ。なんなら高子ちゃんも、うちの艦娘の試験受けに来てみるかい?」
「私なんか……お姉ちゃんやそちらにいる那珂さんみたいにすごくないし。」
高子が羨ましそうに言葉を漏らしたのを聞き提督は彼女に誘いかけてみた。が、自信ないのか返事は芳しくない。
それをそばで聞いていた夕立が無邪気に提案に乗った。
「あたしたちみたいな駆逐艦なら一緒にやれるっぽい?ねぇ高子ちゃん、一緒にやろーよ?」
それに時雨が乗る。
「そうだね。まあ駆逐艦とも限らないけど、高子ちゃんに合う艤装が配備されるといいね。」
「うーん……機会があったら。」
「じゃあその時は、お母さんを連れて正式に試験受けに来てくださいね。」
提督はややからかうように高子に誘いの言葉をかけた。高子は家族以外の大人から冗談めいた言葉をかけられて照れくさそうに「はい。」と答えて俯いた。
五月雨は目の前にいる高子のことも気になるが、それよりも自分らの方の友人の白浜貴子のほうが心配で気になっていた。
「それはそうと。那珂だけじゃなくて、川内と神通も艦載機を使うことができるから、当面は3人がうちの最大のホープだな。」
提督は何気なく那珂、そして離れたところで学校の友人と話に興じている2人を眺めて展望を口にする。
那珂は口に出して返事こそしなかったが提督からその言葉を聞いて頷く。連装砲・魚雷でただ戦うだけではない、現状、川内型の3人にしかできないとされる艦載機の操作、その方面でも川内と神通の二人を教育し、適切な活躍ができればとなんとなく考えを膨らまし始めていた。
ひと通り話すと、提督はその場を離れて明石たちのいる場に戻っていった。
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