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同調率99%の少女(18) :午後の訓練
--- 4 午後の訓練
爆発しない魚雷を明石ら技師から再び受け取り、那珂たちは外の出撃用水路の脇の桟橋に集まっていた。
「さて、これからまた演習を始めるよ。今回はあたしも五十鈴ちゃんも参戦することにします。」
「お~!二人ともやる気!?待ってました!」
「ほら川内、話をちゃんと聞いて。」
すぐに沸き立つ川内を五十鈴がピシャリと注意する。
「いちおー審判役もやらなきゃいけないから~、どちらかは審判も兼ねて参加ってことね。それでね、五十鈴ちゃんとも話したんだけどねぇ~はいどうぞ!」
「んん!変なタイミングで振るわね……まったく。旗艦は引き続き川内と神通がやること。私たちはあくまで一メンバーとして参加するので、一切口を挟まずに二人の指示に従うわ。二人からの的確な指示を期待しているわね。」
午前中は実は二人とも退屈していた。しかし監督役として指示した手前、身体を動かしたいから参加したいですとは午前の時に言えなかった。あくまで川内と神通の訓練の一環としての自由演習。参加するにしても二人の自主性や指揮能力を見極めるための立場としての参加という考えは堅い。先輩ズとして自制するところはする。
「え~~~!?なんかすっげぇプレッシャーなんですけど。」
川内が口をとがらせてやや不満気に吐露するとそれに神通もコクコクと頷く。
一方で駆逐艦勢に至っては
「わぁ~~。なんだか久しぶりに那珂さん五十鈴さんと一緒に訓練できますね~。私楽しみです。」と五月雨。
「そういえばこの前の雷撃訓練には私もさみも参加しなかったものねぇ。ウフフ。私も今日はずっとワクワクよぉ。しっかり軽巡のお二人のテクニックを学ばせてもらいますねぇ~。」
「わ~い!那珂さんも五十鈴さんも一緒っぽ~い!」
村雨そして夕立もほぼ似た口調と雰囲気で口にする。3人の側で黙りこくっていた不知火も
「……那珂さんの、勉強。」
とぼそっと口に出して心境を表し、訓練の主役たる二人と比べて実に脳天気な様子であった。
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鎮守府敷地外、海浜公園の沿海約1.2kmの範囲を使える時間は1時間と決められているため、訓練中のタイムロスを考える必要がある。できれば無駄なく存分に動きまわりつつ2~3巡は試合形式でこなしたいという考えを持つ那珂である。そのように考えて時間配分を気にするが、川内と神通は本格的な試合形式の演習は午前に行ったとはいえこの日が初めてのため勝手がわかっていない。とりあえずとばかりに時間配分をきにせず、午前の結果を踏まえての作戦を立てるべく先のメンバーとワイワイ話し始めている。
那珂と五十鈴は6人から少し離れてヒソヒソ話し始めた。
「ねぇねぇ。今回は使える場所が広いし、午前中のと同じ時間でこなせるかわからないよね?」
「そうね。でも鎮守府内の湾でせせこましくするよりかはよほど期待通りの任務遂行と戦いが期待できるんじゃないかしら。私はどちらかというと1試合だけでもいいから中身を取りたいわ。」
「おぉ、五十鈴ちゃんってばそういう考えでしたか~!あたしはぁ~、回数も取りたい欲張りなお・ん・な!」
「はいはい。それで、最初はどっちが審判する?」
「さらっと流してくれましたよこの人。……うーん。あたしはガッツリやりたい。五十鈴ちゃんが審判兼ねてくれる?」
「えぇ、わかったわ。」
那珂と五十鈴の分担が決まると、チームと順番の割り振りも進行していた。午後1回目の輸送隊は神通らが行うことになった。妨害はもちろん川内達だ。神通のチームには那珂が、川内のチームには五十鈴が加わりなおかつ審判も担当する。神通ら輸送隊は工廠前の湾からスタートし、海浜公園の端をゴールとする。
鎮守府Aの隣の海浜公園の浜の両端には遊歩道にもなっている突堤が湾曲してかなり沖の方まで海に突き出ている。鎮守府Aと真逆の突堤は船着場としても使われ、市や国、企業の船舶にも開放されるが、今この時は何も止まっておらず、市民の遊歩の格好の場所になっている。
那珂たちは輸送のゴールを真逆の方の突堤に定めることにした。突堤に袋詰の魚雷を荷降ろしできれば輸送隊の勝利である。
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荷降ろしとして判定するためにはゴールに誰かいなければいけないと判断した神通。輸送隊メンバーを見渡す。神通の視界には左から不知火、五月雨、そして那珂が順に入ってくる。
考えを言おうとするがまた尻込みの気配が立ち込めてしまい言いよどむ。今回は直接の先輩である那珂もおり聞く人が3人になっている。人前で何かすることが苦手な神通は2人が3人に増えたこと、今までは艦娘としては先輩でも学年的には後輩な二人だけだったために適当な口調でもしゃべることができた。しかし今回はこの状況が多大なプレッシャーとなって仕方がない。
やや鼓動が早まるがいつまでも沈黙してるわけにもいかないので普段通りにしゃべり始める。
「あの……ゴールのところに誰か一人いて、荷物を……受け渡せるようにしようかと。」
「ほう。そのこころは?」那珂が素早く聞き返す。
「私達がまとまっていっても、全員やられる可能性はあると……思います。それなら一人は先行して行かせて待っててもらって、途中で荷物を受け渡してリスクを……分散しようかと。」
おどおどした声量の小さい説明だったが那珂たちはその作戦を理解できた。しかし那珂はその作戦には前提が必要であることに気がつく。その前提を決めてなかった今、それがまともに遂行しきれるかどうか怪しい。しかしそれを試し現実を目の当たりにさせてこその訓練であり、見守る者であると考えである。などと那珂は達観ぶってはみたが、つまるところルール決めの時点の落ち度であるとも気づいていた。今言ってもよいが、それではつまらない。
那珂自身ほどではないが察しがよい神通に、今彼女自身が口にした案が破綻するかもしれない前提の落ち度についてこのタイミングで気づかれてはつまらない。とりあえず自然に任せることにした。失敗したらそれはそれで良い経験としてもらう。那珂はいくつか余計な思案もし、顔を上げて神通に向かって言った。
「川内ちゃんたちがどう行動するかによると思うけど、うん、いいと思う。今回はそれでやってみよ!さ~て、私たちに指示をくださいな。神通ちゃんの案をなんとか遂行してみせるよ。ね、五月雨ちゃん、不知火ちゃん。」
那珂の言葉に五月雨と不知火が「はい」と返事をして賛同の意を示した。
3人の反応が怖いものでなかったので神通は小さくホッと安堵の息をつく。だが安心したのもつかの間、待ち遠しいとばかりに五月雨と不知火が役割を求めてきた。
「じゃあ神通さん!早く役をください!私頑張っちゃいますから!」
「この身に代えても、神通さんの命令を。」
「それじゃあ神通ちゃん。私にも命令をくださらないかしら~?」
二人に追随して、那珂は腕を組んで貴婦人のようなふざけた振る舞いをして指示を仰ぐ。
そんな三人を眼前に見て二人は真剣に、一人は絶対自分をからかっていると気づいた。しかしそれらの要素に適切に突っ込めるほど臨機応変さは持ち合わせていないしそもそも面倒くさい。
三人それぞれへの反応は返さず神通は考えを全員見通して伝えた。
「……ということです。」
神通の指示通りに先行してゴールの突堤に行って待つ役割は五月雨となった。輸送担当は不知火、護衛は旗艦神通と那珂という構成である。
指示を受けた那珂は未だ気にしていた。だが任された五月雨が上手く行動すれば神通の面目は保たれる。こと訓練中の身に至っては保てても仕方ないが。心の中でそう締めくくる那珂だった。
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妨害側の川内たち4人は先に浜辺の沿海に来ていた。鎮守府敷地内の湾とは異なり、身を隠せる障害物的なものは一切存在しない。あえて身を隠せるとすれば鎮守府側の突堤や浜辺中央の船着場くらいだが、足場の石の背が低すぎる。
川内たちは悩んでいた。こうも見通しがよいとどう作戦を立てていいかわからないのだ。
「えーっと。あの~だね。これだけ視界がいいと作戦もなんも思いつかないんですがね。」
「別にいいっぽい?神通さんたちが来た時に邪魔すれば。」
「そんな簡単な考えでいいのかしら~?」
呆ける川内に楽観的&僅かに現実的な心配をする夕立と村雨がそれぞれ口にした。それでも悩んで頭をクルクル動かす川内を気にかけた五十鈴が提案する。
「夕立の言うことに一理あるわね。神通たちが進む針路を塞いだりとにかく袋奪う。相手の出方は完全にはわからないんだし、その場で臨機応変に動きまわったほうがいいわ。」
五十鈴の案を聞いて川内はうーんと唸ったのち、自身も案を述べだす。
「よし。皆適度に動けるようにとりあえず陣形だけは決めとこう。浜辺ちかくの海でもこんだけ広いんだからあたしたち一人ひとりが2~3人分の動きをしないといけないわけだ。つまり4人で普通のサッカーばりにフォワード、ミッドフィルダー、ディフェンダー、ゴールキーパーをする的なもんだよね。」
「サッカーかぁ~。あたしよくわかんないっぽい。球蹴ってゴールに入れるだけでしょ?」
「私もよくわかりません。」
「一応なんとなくわかるけど……ゴメンなさい、詳細なルールまではちょっと。」
川内が案に交えたサッカーの役割に3人はそれぞれ申し訳無さそうに言い合った。
「えっ?3人ともサッカーしたことないの!?」
他校だが一学年先輩と中学生二人のまさかの発言に唖然として聞き返す川内。
「授業ではしたことありますけどぉ~。男子じゃないんですし、普通はやりませんしルールとか全然わかりませんよ。」
「うんうん。○組の○○ちゃんとかはスポーツ好きだから男子に混じってお昼休みとかよくサッカーしてるっぽいけど。あたしたちはやらないしルールもわからないっぽい。」
自身の数少ない経験と常識に当てはめ、てっきり一般的な中高生の女子でもサッカーくらいはやったこともあって多少はルールも知っているものだとばかり思っていた川内は、目の前の二人の言い振りにあっけにとられた。そして心の中でひそかにもたげてきたのは、やはりあたしは普通の女子ではないのかもしれないという、懸念。
今まで築き上げてきた、男子に混じってゲーム話やスポーツをするという男勝りな自身の世界観と、あのいじめ以来光主那美恵と出会ってから少しずつ目覚めた(と自身では思っている)自身の女子本来の世界観が心の奥底でカチンカチンと刃を交えてせめぎ合っている気がする。
だがそれはそれ、今は今である。このモヤモヤはあとで明石さんや提督と趣味の話でもして発散させよう。そう心に決め、引きつった笑顔で3人に簡単に説明をすることにした。
五十鈴は説明の早々にある程度理解の表情を表すも夕立たちは未だ要領を得ないという表情を続ける。業を煮やした五十鈴が喩え方を変えろと突っ込んできたので川内は大人しく従うことにした。そして自身らの共通したネタである艦娘の行動に置き換えて説明を進めたことで、中学生組はようやく理解に至った。
「……というわけだから。簡単に言うと異なるポイントで神通達を待ち受けて動けばいいってこと。五十鈴さんの最初の考え聞いてそう思ったんだ。どう動くかは3人に完全に任せるから、頼むね?」
「う~~わかった。とにかくあたしはあそこあたりで待ってて神通さんたちが近づいてきたら撃ちまくればいいってことだよね?」
「私はあっちの端の船着場みたいなところの近くで待ってて近づかれたら邪魔すればいいんですね?」
「で、私は川内、あなたとタッグを組んで中央を担当すればいいわけね。了解よ。」
「はい。あたしと五十鈴さんで神通たちを全員叩き潰すくらいの勢いです。」
「わ、わかったわよ。あなた結構物騒な言い方するわね……。」
3人の理解を見てようやく仕切りなおしだ。あとは神通たちが近づいてきたら、まさに試合または妨害作戦開始である。ゲームとして考える脳の一部では、タワーディフェンス的だなぁ~という思考をした。課金すればこの場で艦娘増えたりしないかなとほんの少しだけ現実逃避する余裕も川内にはまだある。
頭をブンブンと振って前方、つまり鎮守府のある方向を向き直した。目の前には夕立がスイ~っと移動して鎮守府寄りの突堤に近づいている。後ろを振り向くと村雨が隣町の海浜公園寄りの突堤にもうまもなくたどり着くという状態だった。
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神通らは単縦陣に並んで湾口を出て川を下り海へと出た。出る前、すでに川内たちが海へと向かっていなくなったのを見計らい、神通は工廠に戻って偵察機を1機手に持って戻ってきた。それを見た五月雨が言い、その感想に不知火もコクリと頷く。
「あ、また偵察機使うんですね?それならバッチリですね~。」
二人の反応を受けて若干慌てるもすぐに冷静さを取り戻し、神通は偵察機を左腕の発着レーンに載せる。すぐに飛び立たせて偵察機のコントロールに意識を向けた。今度は見つからないよう、最初から高度を上げるため機体を上に向け、工廠の上空でクルクル旋回させる。ある程度高度を確保できたタイミングで川内達の待ち受ける浜辺の沿海に向けて旋回して向かわせよう。そう考えて神通は実行に映した。
偵察機からの視界で川内らの陣形がはっきり見て取れた。しばらく遠巻きに旋回して前方斜め下に向いたカメラで敵チームの様子を収める。川内らがこれ以上動かない様子を確認した神通はすぐに偵察機を帰還させて五十鈴たちに伝える。
「私たちから見て……手前の、最初の突堤の側に夕立さん、その先に川内さんと五十鈴さん、そして奥の突堤の側に村雨さんがいます。先に五月雨さんをゴール地点に行かせるには……あ!」
神通はそこまで言いかけて、ある一つのことに気がついた。それは先程自分が打ち明けた案の問題であった。神通の様子に那珂はわずかに口の両端を上向きにし、気づかれないように笑みを作りすぐに真顔に戻る。
「あの……五月雨さん。」
「はい?」
五月雨の全く何も不安のない気にしてない雰囲気の反応に神通は心苦しかったが、ここで言わないと危ないことが容易に想像出来たため、意を決して打ち明ける。
「さきほど私が……お話した五月雨さんに先にゴールに行ってもらう案、あれを考えなおそうと思っているのですが。」
「えっ!?ど、どうしてですか?私じゃ役不足ですかぁ……?」
先程までの素の明るさのリアクションはどこへやら、まゆをさげて不安顔になって聞き返してくる五月雨。明るい印象しかなかった五月雨に悲しそうな顔をさせてしまった。神通は焦ってブンブンと頭を振り全力でその言を否定し、弁解する。
「いいえ。そうじゃ……ありません! 私のさきほどの案をそのまま進めると、五月雨さんが真っ先に攻撃されて危ないことに気づいたんです。ですから作戦を一から練りなおそうと思うんです。」
神通の弁解と再提案を聞き、一同はしばらく沈黙を保っていた。神通にとって次の反応が心苦しいが、覚悟して待つ。
「そうだ!私思いつきました!」
若干俯いていた五月雨が勢い良く手を上空向けて差し伸ばして発言する。
「お?おぉ?なになに五月雨ちゃん?」
那珂が尋ねると得意げな表情を浮かべて語りだした。
「はい。あのですね、神通さんの作戦で、私このまま先に行って囮になろっかなって思ったんです。そうすればぁ、私が夕立ちゃんたちを引きつけてる間にあとは神通さんと那珂さんで不知火ちゃんを守っていけば敵が少なくなります!いかがですか!?」
目をキラキラさせながら3人に向かって話す五月雨。何の根拠があるのか異様なほど自信満々な様子をみせている。その褒めてもらいたそうな子犬のような様を見て那珂は抱きしめたい衝動に駆られたが今は試合中だし海上まっただ中。ふざけて転べば二人ともびしょ濡れだ。湧き上がる欲望を必死に抑え、後を任せるべく神通に視線を送る。
神通は那珂の視線に気づき、視線と頭を僅かに下に傾けて思案し、そして五月雨に向けて言った。
「そう……ですね。本当であれば……ううん。お願い、できますか?」
「はい!私、頑張っちゃいますから!」
元気いっぱいに返事をする五月雨。その側で那珂は神通の下した決断を密かに思い返す。
この演習試合が初の(模擬)戦闘であり、作戦実行の勉強の機会である神通(と川内)。二人は艦娘仲間と話し合い、お互いの得手不得手を確かめ合って知る経験がまだない。二人の指揮能力・チームの運用能力がどこまで発揮できるのか、楽しみでもあり不安でもある。
神通自身の身体面や遂行能力もそうだが、この演習という集団戦を経て事前に仲間同士のことを知って実戦に活かせるようになってくれるのを密かに期待したい。今ならどんな失敗もガンガンしてもらおう。
那珂の見立てでは、囮になるならば自在に動ける自分が相応しいと考えていた。不知火のことを那珂はまだ詳しく知らないため判断できないので、あえて役割の編成からは除外する。そして五月雨と神通では、学年的な差はあるが経験や実線での体力面からすると、五月雨の方がまだまだ上であるという捉え方である。しかしどちらも那珂自身より機動力は低いため、無難に行動して立ち回りできる輸送担当の護衛が本当ならば相応しいはず。
リーダーたる人物に進言するのもメンバーの役目だが、今回はあえて黙ることにした。
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神通たちは作戦を話し合っていた河口を出て完全に海に出た。消波ブロックの先はすぐ浜辺になっており、突堤が海へと伸びている。そのそばには夕立が立っていた。
「夕立さんが……います。」
「あ、気づいたみたいですよ。なんか単装砲構えてます!」神通に続いて五月雨が言った。
神通たちが進み、ある程度距離が詰まってきたその時夕立が動き出した。
「五月雨さん、お願いします。」
「はい!」
最後尾にいた五月雨はわずかにスピードをゆるめて神通達3人から離れたかと思うと11時の方向に向けて一気にスピードを上げて進みだした。そして神通の前方数十m先に出て夕立を狙い定める。
「ゆうちゃーーーん!かくごーーー!」
「えぇ!?さみが突撃してきた!?生意気っぽい!返り討ちにしてやるーー!」
五月雨が突撃してきたのを敏感に反応を示し、友人ながら何かピンと来るものがあった夕立の意識は完全に五月雨に向かった。
ドゥ!
五月雨の初撃が夕立に向かう。その軌道は本気で狙ったわけではない甘いものだったため、夕立はそれを難なくかわす。そしてお返しとばかりに反撃に転じた。
ドゥ!
夕立のそれもやはりわかりやすい軌道だったため、さすがの五月雨でもあっさりとかわすことができた。というよりも速度をあげたためかわすというよりも当たらなかったというのが正解だ。
「ちょ!待てさみ!突撃はあたしのほうが得意なんだからね!させないっぽい!!」
五月雨が夕立を通り過ぎ、方向転換すべく急旋回して夕立と向かい合う。夕立は五月雨と対峙する形になった。
「「えーーい!」」
ドゥ!
ドゥ!
お互い似たような急スピードで突進しながら砲撃しあい、そして……
ベチャ!
五月雨のペイント弾が夕立にヒットした。 急に止まり、付着したペイント弾のペイントをぼうっと眺めていた夕立だが、カチンときて頭に血が上った彼女はほどなくして奇声をあげてジタバタしはじめる。
「きーーーー!!!ぜ~~~~~ったい許さないぃ!!!」
歪めた顔と視線を自身の後ろへ通り過ぎていた五月雨に向ける。五月雨もちょうど方向転換し終わって夕立の方を向いていた。友人の本気の怒り顔を目の当たりにした五月雨は一瞬怯むが、五月雨もまた時雨らと同様に夕立にツッコみ、適度にあしらう術を身に付けていたため、戦場とはいえその対処はわかっていた。そのためすぐに平常心に戻り、怒りで顔を歪めたままの夕立に対して言った。
「ふ~~んだ。運動神経良いゆうちゃんを見返してやるんだから。私だって負けないよ~!」
「てえぇぇーーーいい!」
「やあぁーー!!」
再び夕立と五月雨はお互い間近で砲撃による着弾を狙うべく急スピードで突進し始めた。
--
五月雨と夕立が激しい戦闘を始めたその脇では、神通・那珂そして不知火がその戦いを横目にして通りすぎようとしていた。3人とも、特に那珂は自分では知っていたと思っていた五月雨が目の前で展開させる熱く燃えるような戦いっぷりに驚きを隠せないでいる。
「ひぇぇ~。五月雨ちゃんってばあんな戦い方もできたんだぁ~。人は見かけによらないなぁ~~。見直しちゃったよあたし。」
「は、はい。私の想像を……遥かに超えて囮以上の活躍ですよ……。」
「見る目、変わった。」
3人が3人感心の感情しか持てないでいた。
「おおっと。あっけにとられてる場合じゃないや。神通ちゃん、今のうちにすすも?」
「は、はい!」
那珂の気づきと促しで神通は我に返り、激しく戦っていいる夕立に気づかれないうちにと速度をあげて進みだした。
3人はすでに地元の浜の沿海、中央部に入りかけていた。その先には川内と五十鈴が真横に並んで立っていた。
--
「な、何やってるのよ夕立は。あの五月雨は明らかに囮じゃないの。あ、あ~あ~。夕立ってば完全に五月雨しか見えてないわねあれ。」
「うーん、五月雨ちゃんを囮に使うとは。神通もなかなかやるな。」
川内が素で感心のように語ると、隣に立っていた五十鈴がツッコむ。
「なに感心してるのよ!前線は神通の作戦勝ちよ?ほらもう神通たちこっちに向かってきてるじゃないの!夕立ってば自分が作戦に引っかかってることすら気づいてないかもしれないわねあれ。」
「アハハ、仕方ないっすよ。それじゃあ、お次はあたしと五十鈴さんの番ですよね。あたしたちはあんな簡単な作戦に引っかかったりしないから。二人で神通たちを全滅させてやりましょう。」
非常に軽快な口調で思いを口にする川内を見て五十鈴は額を抑えて僅かに苦悩した。しかしその意気込みは買う。
夕立のラインを超えて中央の沿海に侵入してきた神通たちを未だ遠目ながら見る川内と五十鈴。編成は神通・那珂・不知火という並びで一直線で向かってくる。
「ほう、ありゃあ単縦陣ですな。」
「単縦陣。そうね。艦娘の陣形よね?」
五十鈴が反芻して尋ねる。それを見て川内は少しドヤ顔になって解説を始めた。
「はい。でも、実際の軍艦の艦隊にもありますよ。サッカーで言えばフォーメーションのことです。艦隊ゲームとかだと攻守ともにバランスが取れた、味方の能力値補正が一番ノーマルで扱いやすい陣形なんです。まぁ現実はどうだかパンピーのあたしたちが知るわけないっすけど。まぁつまり相手のどんな行動にも誰でも対処しやすい陣形ですね。」
「なるほどね。あなた結構物知りね。」
五十鈴が感心すると川内はさらにドヤ顔になって笑い始める。
「アハハハ。五十鈴さんに褒めてもらえるなんて嬉しいなぁ~。まぁあたしの知識はゲームとか漫画で得たものなんで、普通の女子な五十鈴さんや村雨ちゃんたちにはわかりづらいことがあるかもですけど、ガンガン頼ってください!」
一応自分を卑下しているつもりらしいが微塵もその配慮が感じられない川内の物言い。五十鈴はすぐに気にするのをやめる。
「はいはい。ホラ、そろそろ相手のお出ましよ。どっちが誰を攻撃する?指示をちょうだい。」
川内は五十鈴の確認を受けて、視線は迫ってきている神通に向けたまま数秒して言った。
「あたしは那珂さんと戦いたい。後ろに不知火ちゃんもいるから、あわよくば不知火ちゃんを狙います。五十鈴さんは神通を片付けてください。あの子の体力とか素早さなら、五十鈴さんなら簡単でしょ?」
「……簡単に言ってくれるわね。あんたら川内型とは艤装の作りや出っ張りが違うんだから実際はそう簡単に行かないと思うわよ。けど後輩に負けるのは嫌ね。全力を尽くすわ。」
「はい、期待してます。」
神通たちは川内たちの目の前十数mにまで迫った。一旦止まり、川内たちと対峙する。
「さて、目の前に川内ちゃんと五十鈴ちゃんがいるわけですが。神通ちゃんどうする?」
那珂の問いかけを受けて神通は数秒考えた後どもりつつも答えた。
「は、はい。……ええと、うーんと……。あの、那珂さん。」
「はーい?」
「那珂さんの……全力に期待してもいいですか?」
「おぉ!?どーした神通ちゃん?」
神通は深呼吸をした後再び口を開いた。
「私では……きっと五十鈴さんはおろか川内さんにもかなわないと思います。狭い湾ではなんとかなりましたけど、これだけ広い海の上だと、私きっと早々にバテてしまう気がします。だから、那珂さんに川内さんと五十鈴さんのお二人を倒して欲しいんです。」
神通のとんでもない頼みに那珂はさすがに躊躇する。戦闘能力的には問題ないと踏む。が、問題があるのは演習の時間だ。ここで本当の本気を出すとあっという間に勝負がつきかねない。それでは後輩二人のためにならないかもしれない。そう感じて一応反論した。
「さすがにそれはなぁ~。あたしが本気出すとあっという間に倒しちゃうよ?それじゃあ神通ちゃん面白く無いでしょ?」
傍から聞いていれば自信過剰・自意識過剰な物言いな那珂のセリフだが、それを言われても許せるだけの実力(の一端)は、これまでの訓練の指導で神通はわかっていた。
そのため食い下がって那珂にお願いを続ける。
「……私にとっては、那珂さんの本気を見ることはためになると思っています。那珂さんの全力を見たいんです。……ダメ、ですか?」
「う……。」
妙に母性本能をくすぐられる小動物のような後輩の表情を見た那珂はその表情が真剣なことを配慮し、それに答えてあげる気持ちになった。二人のためにするならば、自分の本当の本気を見せるのもある意味その目的に適う。
「それじゃーあたしが二人を倒したら、神通ちゃんは不知火ちゃんを連れて村雨ちゃんを倒してね。ぐれぐれも言っておくけど……あたしのこれからの行動をボケ~っと見てないで、さっさと動いてね?」
セリフの後半に進むにつれ、那珂の声は低くドスの利いた声になっていく。神通はそれに敏感に気づき、一瞬「え?」と小さく声を発する。
那珂が神通の横に立った。
神通がチラリと横を見ると、那珂の表情は普段の明るくチャラけた雰囲気は完全に消え、静かな気配の中にも鋭い睨みで獲物を狩ろうとする猟者の表情になっていた。
那珂が身をかがめて溜めの体勢を取る。 そして次の瞬間。
ズバァ!!!
神通が最初の1週間で見た時の様子とは全く異なる、激しい水しぶきをあげて強烈なスタートダッシュをし川内たちとの距離を一気に詰める那珂が眼前に垣間見えた。そしてその場にいた全員は次の瞬間、那珂の身体が5~6mの空中に飛び上がったのを目の当たりにした。
「「えっ!?」」
川内と五十鈴が驚きの声をあげた直後、上空から那珂の掛け声と砲撃音が辺りに響いた。
「てやぁ~~!」
ドゥ!ドゥ!
那珂の両腕の単装砲からペイント弾が発射されたのだ。
「あ……危ない!!」
辛くも気づいた五十鈴は川内を全力で突き飛ばし、川内を砲撃から逃れさす。
ベチャ!
五十鈴の右手に持っていたライフルパーツに白いペイントが付着した。爆発するわけではなく衝撃等も本物よりはないが、それでもペイント弾の落下速度に応じた衝撃がライフルパーツを押し下げ、五十鈴の腕にその軽度の衝撃を伝える。
「くっ!」
五十鈴が顔を歪めた後上空を見るとそこには誰もいない。那珂はスタートダッシュの勢いを最大限に利用した跳躍力でもってジャンプの頂点近くで砲撃し、そのまま川内たちの背後へと降り立っていたのだ。
突き飛ばされていた川内が背後に回りこんだ那珂の行動に気づく。
「那珂さんは……上にはいない?……あ!うしr」
が、その反応は今この時、同調率98%でなおかつ艤装の仕様上の性能の70~80%を発揮して動いていた那珂にはゆっくりすぎる反応速度だった。
「遅いよ川内ちゃん。」
ドゥ!ドゥ!ドゥ!
ドゥ!ドゥ!
ベチャ!ベチャ!ベチャチャ!
那珂がそう言い放ち終わるのとほとんど同時に川内の右肩・右脇腹、右足の太もも、そして五十鈴の背中に2発にペイント弾がヒットしていた。
当初の決め事における一人3発ペイント弾がヒットしたら轟沈扱いをあっさりと、しかも2人同時に那珂はやってのけた。しかし那珂はすぐにあることに気づいて普段の軽い言い方で宣言する。
「あ!まっず~~い。あたし5発以上打っちゃったわ~。ゴッメ~ン!川内ちゃんか五十鈴ちゃんどっちでもいいから2発取り消していいよぉ~!」
後頭部をポリポリ掻きながらそう言う那珂を背後にし、五十鈴はとてもそんな気分になれないほど青ざめていた。ゆっくり振り返る、その途中で川内の表情が伺えた。その川内も五十鈴と同じような気持ちの顔つきになっている。
「い、いい。いいわ。普通に負けでいいわ。せ、川内、あなたが復活しなさい。」
「えっ!?え……えと。あの……じゃあそのはい。」
戸惑いつつもどうにか返事を小さな声でひねり出す川内。それを受けて那珂は軽い口調で言う。
「というわけで、あたしはもう砲撃できないので川内ちゃん、あたしを轟沈させるチャーンス到来!」
「うえっ!!?」
軽々しく那珂は言ってクネクネとアクションを交える。しかし今のその姿に対してさえ、川内はとても那珂に対抗できるほどの戦意を持ち合わせていなかった。さきほど右耳から入ってきた那珂の言葉が、あまりにも恐ろしい死の宣告のような印象で脳に焼き付くように残る。
あれが自身の先輩である光主那美恵の、那珂の本気なのか。同調して普通の人間よりはるかにパワーアップすると言われる艦娘だが、それでもとてもあんなアクションをしてまで戦うことなどできそうにない。格が違いすぎる。あれで本当に着任して数ヶ月の女子高生なのか?
戦意を失ってはいたが、心の中ではズキリと痛む何か・暗闇の中に薄ぼんやりとした光を放つ何かがあった。それは今の川内自身には明確に理解することは出来ないものだったが、右を向けばそこにいる先輩那珂が恐ろしいのと同時に、ポジティブに捉えられる感情で見られる存在であるのは確かだった。
「あ、やっぱりあたしも負けで……いいです。」
「え~~!それじゃあつまんないよ!あたしルール守らなかったんだからせめて川内ちゃんからは1発喰らわないとスッキリしないよ。」
口を尖らせてブーブーと筋の通った不満を漏らす那珂を見て川内はようやく気持ちを奮い立たせようと思い立ち、そして両手で自身の頬を軽く叩き、小声でつぶやいた後気合を入れて那珂に視線を向けた。
パン!
「あ~~。こんなウジウジ怖がるなんてあたしらしくない。だったら……やってやる。」
右手の連装砲を那珂に向けながら川内は言った。
「それじゃあ那珂さん。お返しです。いっきますよ!」
ドゥ!ドゥ!
川内が撃った直後、那珂はその砲撃めがけて直進してきた。そして……
ベチャ!ベチャ!
自身の言動通り、自らペイント弾に当たりにいった。すでに鬼気迫る表情は完全に消えてなくなり、普段の茶化しを言う明るい表情でもって額をわざとらしくぬぐう那珂。言っている最中で肝心の神通たちが危惧したとおり呆然と立ち尽くしているのに気づいた。
「よし。これでスッキリした。おーい神通ちゃん!?なんでまだいるの?早く行きなっていったでしょぉ~?」
--
川内と五十鈴があっけにとられていたのと同じく、神通と不知火も呆然としていた。那珂の普通の艦娘すら超越しているのではと思える程の動きを見て驚くなというほうが無理なのであった。
神通と不知火は ようやく我に返る。
「は、はい……!」
那珂・川内&五十鈴のいる領域の脇をそうっと通る神通と不知火。川内がその隙を狙うものとばかり思っていた那珂だったが、その密かな期待は裏切られ、那珂を撃ったあとも呆然と立っている川内が目に飛び込んできた。その態度に彼女らしくないと思った那珂はやはり発破をかける。
「あっれ~、川内ちゃ~ん?今なら神通ちゃんたちを撃てるチャンスだったのに、どーしたのかなぁ?」
「ふぇ!?あ、え……あ!そうか。あ~あ。」
那珂から言われて初めて気づいたという様子を見せる川内。その様は素の反応であると那珂は気づく。そのまま行かせてもよいが今は試合中、あえて川内の好きそうなネタを絡めて作戦を吹っかけることにした。
「それじゃー川内ちゃん。あたしはあと1発当たれば轟沈だよ。ここでスーパーチャンス!直々に一騎打ちを申し込もうと思うんだけど……受ける気はあるかな?」
「え、一騎打ち!?」
この先輩は突然何を言い出すのか。川内は那珂の突然の申し入れに驚かされた。この日連続しての驚きだ。
今の状況を川内なりに頭の中で整理しはじめた。何かのゲームでそんな展開があったのを思い出す。修行を受けた主人公が、最後の仕上げとして、師匠から本気のバトルを申し込まれて戦うイベントだったか。勝てば師匠の最強技を伝授してもらえ、一人前の戦士として冒険が始まるゲーム。そんなことを川内は思い出した。そしてそれを自身の今の状況に当てはめる。
つまりあたしは那珂さんから優秀な弟子(後輩)として認められている!?
これまでわずか1~2ヶ月の付き合いではあるが那珂こと光主那美恵という人物の人となりを知ってきたつもりである。普段からちゃらけていて軽かったり突然真面目になったりとらえどころの難しい先輩。
この先輩のこの申し入れ、その思いに答えるには一騎打ちを承諾すべきだろうという結論になった。その思いが口から飛び出ようとする。
「の、望むとこr
望むところです、そう言い終わる前に先ほど轟沈した五十鈴が叫んだ。
「ダメよ川内!今すぐ神通を追いなさい!」
五十鈴から突然の叱責に近い注意を受けて川内はハッとした表情になる。
二人の側におり、ようやく冷静さを取り戻していた五十鈴が審判に専念しようと思考を切り替えようとしていた矢先に聞こえてきた那珂の提案。
川内の返答は五十鈴によって押しとどめられた。
川内チームの実質的な頼みの戦闘力は、もはや川内しかいない。彼女を足止めしさえすれば後は神通・不知火vs村雨となる。似た気質を持つ3人ではあるがゆえに、2対1なら数でどうにか押せる。
那珂はそう考えていた。
そして川内を制止した五十鈴は那珂がそう考えていると瞬時に察した。しかし川内の思考は那珂の言葉を鵜呑みにしようとしていたのだ。
「うぇ!?で、でm
「いいから!!」
五十鈴の怒号が響き渡る。他校の先輩たる五十鈴の初めて見る叱責。五十鈴が気づいたことなぞ思いもしなかった川内は怒鳴られ、とにかくも踵を返して神通たちの向かった背後へと戻り始めた。
「ちっ。五十鈴ちゃんにしてやられたわ。」
「……ったく。那珂、あんたにもね。なんであんなこと言ったの?」
わざとらしく悔しそうに舌打ちをして愚痴る那珂に五十鈴は質問する。
「そりゃあーた、作戦ですよ作戦。あたしはもう砲撃できないし実質負け要員ですからぁ?知恵を張り巡らせてあっちの旗艦さんを足止めするしかないじゃない?」
「いや、そういうこと言ってるんじゃなくて。普通に足止めする行動なり取ればいいんじゃないかってこと。」
「あ~言い方のほうね。」
那珂の回答は五十鈴の意にそぐうものではなかったため、言い換えて質問する。那珂はその意図にようやく気づいた。
「川内ちゃんのこと考えたらさ、きっとゲーム的な内容で吹っかけたらノってくれるんじゃないかって思ったの。それでなくても呆けてるあの子を現実逃避から呼び戻すのに効果的なんじゃないかって。」
「はぁ……そういうことね。」
那珂は同じ足止めでも、人によってそうなるための内容を変えるつもりでいた。単に戦闘中の進路妨害を実行するのではない。効果的に相手の意識をそらし、確実に動きを制限させる。
それが深海棲艦相手に通用するかどうかは別として、少なくとも艦娘あるいは意思の疎通が図れる相手には通用する手法を考えて実践しようとしている。
五十鈴は那珂の考えの一端を理解することができた。そんなこと、各々をよく理解していないとやれない芸当だ。少なくとも、自分はあまり協調性があるとは言えないので同じことはきっとやれないだろう。五十鈴はそう自己分析して捉えることにした。
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