星空のワンピース
うさぎさんは小さい頃、かわいいものが大好きでした。
特に赤いリボンがお気に入りで、いつも片耳にちょうちょ結びをしてつけていました。
そうすると、うさぎさんは自分がおとぎ話の主人公になったような気がして、しあわせだったのです。
うさぎさんはまた、ファッション雑誌を読むのが好きでした。
モデルさんが着ているかわいい服はいつだって憧れでした。
いつかこういうお洋服を着て、たくさんおでかけするんだ。
うさぎさんはそう決めていました。
大人になったうさぎさんは星の解説員になりました。
あわただしいながら、充実した日々を送っていました。
そんな大人になったうさぎさんは「かわいい」から少し距離を置いていました。
モノクロの服がよく着る定番の服になっていたのです。
うさぎさんはある日、勉強のためにとなり町の図書館へ行きました。
だいすきな星や宇宙の本をよみ、大満足で図書館をでていきました。
久々にきたその町はやっぱりきらきらして
いて、見るもの全てに目をうばわれます。
そんな時、一瞬目にうつったある店のショーウィンドウで足を止めます。
そこにはかわいいワンピースが展示されていました。
「あ、これ…」
星空が裾いっぱいに広がっている紺色のワンピース。
袖はパフスリーブになっていて、襟には白いレースがあしらわれています。
うさぎさんは吸いこまれていくように店内に入っていきました。
「すみません、あの、ショーウィンドウのワンピースは…」
うさぎさんは店員さんに聞きます。
「あのワンピースですね!こちらへどうぞ。」
店員さんにうながされ、お店の奥へすすむとあのワンピースが目の前にあらわれます。
「別売りではございますが、こちらを首元の方に結ぶと…」
店員さんはするするっと手を動かしました。
「わあ…」
見ると赤いリボンが襟元に結ばれていました。
うさぎさんは思い出しました。
幼い頃のときめきを、自分がだいじにしていたものを。
ときめきはきらきらと変光星のように輝きました。
お店を出ると、もう辺りは暗くなっていました。
たくさん着て、たくさんおでかけするんだ。
買い物袋をさげたうさぎさんは、ふと何かに呼ばれた気がして上を見上げました。
夜空のうさぎ座を、流れ星が音を立てて横切っていきました。