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遊園地

野ねずみさんとリスさんは遊園地にやってきました。
入ってきた瞬間、その景色、匂いに圧倒されます。

「すごくにぎわっているねぇ。何に乗る?」
「まずはメリーゴーランドに乗ろうよ!」

とてもよく晴れた空。
いろとりどりの風船。ポップな赤、青、黄、たくさんの色が浮かんでいます。

遊園地そのものがなんだか大きな風船みたい。
ふくらんでいる、とリスさんは思いました。

野ねずみさんとリスさんはメリーゴーランドのりばへ向かいます。

なつかしいワルツがきこえてくる。
小さい頃、よくおとうさんとおかあさんと乗ったなぁ。
今はとなりに野ねずみさんだ。
リスさんはとても嬉しくなってきました。

さあ、順番がまわってきて木馬のうえにふたりが乗ります。

ワルツ、ワルツ、ワルツ。
そうだ、これはワルツだ。

リスさんはまわっていく景色と、音楽のリズムひとつひとつをかみしめて、そんなあたりまえのことを思っていました。


「休憩にわたあめでも食べようよ!」
メリーゴーランドをのりおえ、野ねずみさんの提案にリスさんはえがおでこたえます。

わたあめ屋さんでわたあめを買い、ふたりはベンチにこしかけます。

わたあめのようなかたちの雲が、空からぽっかり浮きでている。
触ってみたら印象派の絵のようにぼこぼこしているのかもしれない。
リスさんはそう思いました。

「食べたらどこへいく?」
野ねずみさんに話しかけられ、リスさんははっとしてふりむきます。
「そうだねぇ。どこへ行こうか」

野ねずみさんと話しながら、リスさんはそっとわたあめを触ります。

やっぱりこれはでこぼこしていない。

印象派のような雲は刻一刻とかたちをかえていきます。


たくさんのりものにのったふたり、最後にのるのは観覧車です。

「わくわくするねぇ」
「うん!」

ゴンドラにのりこむ。
窓の外にゆうぐれの景色がみえます。

ぼくたちは、息をするために音楽する
いつだって遊園地の中。
回転木馬にのって秘密をかわし、
えいえんを奏でようとする。

そうである限り恍惚していたい
この美しい景色に。

「ずいぶんおとなっぽいこと言うんだね」

こんな心の声がきこえたらきっと野ねずみさんにそう言われてしまう。
リスさんはそう思ってひとりでふふっとわらいました。

分かちあえなくてもいい。ただとなりにいてくれるおともだちが、どんなに大切か。


「楽しかったね!」

ふたりは遊園地から出ていきます。
とおくで蝉の声がきこえていました。

「うん」

リスさんはふりかえります。入ってきたときとはちがうように見える景色。
ふくらんだ大きな風船は、かたちのないままどこかとおくへとんでいったようだ。

「でもぼくびっくりしたんだぁ」
「えっ」

野ねずみさんはふふっとわらって言いました。
「リスさんが観覧車にのって外をみているとき、すごく大人っぽい顔をしていたから」

あっ。
野ねずみさんは、意外とよくみてるんだ。
分かちあえない、そんなこともないのかなぁ。
リスさんはそう思ってまた少し嬉しくなりました。

「また来ようね」
「うん!」

絡めとられずに残ったわたあめは、空に浮かんで、水彩画の絵のようなちぎれ雲になりました。

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