兵庫県は実は日本の縮図

元兵庫県民として思うのは兵庫県というものは本当におもしろい県だということです.兵庫五国と言われますが,摂津・播磨・淡路・丹波・但馬と5つの旧国から成り,多種多様な地形・産業・人々がいる.地元びいきと言われるかもしれませんが,こんな県は日本中どこを探してもないんじゃないかと思います.私自身はもともとは兵庫県の出身ではないですが,兵庫県の面白さに取りつかれてずっと住んできました.

(1)日本海あり,太平洋あり,瀬戸内海あり

小学校の社会で習う太平洋ベルト地帯.日本は太平洋側と日本海側で大きく人口や産業,気候が異なります.兵庫県は神戸や姫路と言った太平洋ベルト地帯に属する地域もあれば,豊岡や浜坂など完全に日本海側に属する地域もあります.淡路島は定義上は瀬戸内海内ということになっていますが,南には太平洋からの荒波が直接到達するエリアがある一方で,西側は穏やかな瀬戸内海が広がり,海水浴をするときも気分でどちらかを選ぶことができます.

(2)大都市あり,地方中核都市あり,過疎地域あり

神戸や阪神間は大阪とともに東京圏に次ぐ大都市地帯を形成しています.特に阪神地域は六甲山が迫る中で数多くの宅地が南斜面に密集しており,人口密度も高い.一方で姫路のような城下町が元となった典型的な地方中核都市もあります.また北部に行くと山林地帯があり過疎地域も多く,天国に一番近い村と言われるような大型車が入れないような限界集落もあったりします.

(3)一次産業から高度知識産業まで


山林や田畑が広がるエリアもあれば,阪神工業地帯や神戸製鋼製鉄所のような巨大な工業地域もあり,三宮のようなオフィス都市もあり,神戸医療産業都市のように研究開発産業が集積しているエリアもあります.東京や大阪は工業や知識産業の集積地はありますが,ごく一部エリアを除いて広大な山林地帯はあまりないのではないでしょうか.

(4)乾燥した気候あり,温暖な気候あり,積雪地帯あり


冬の瀬戸内海は非常に乾燥します.海のおかげで極寒となることは少ないですが,晴れた日が続くことが多い.一方で車で2時間走ると積雪1メートルを超えることもある豪雪地帯があります.淡路島に行けば温暖な気候がみられます.この気候の違いから取れる作物にもかなり違いがあります.

(5)若者から高齢者まで

東京などの都会では若者が多いですが,大都市とド田舎を抱える兵庫県は若者から高齢者まで均等に分布しています.大都会では学生が多く,学生向けの店や起業する若者などへのサポート施設をよく見かけます.一方で高齢者の認知症診療では,大都市ではヘルパー不足で認知症の親の介護に悲鳴を上げる子育て層が問題になる一方で,田舎では町並みが数十年前と変わらないため重度でも認認生活ができますが,誰にも認知症と気づかれず,噂がすぐ広がる地域性もあって支援が難しい特性があったりします.

兵庫県の問題は日本の問題になりうる

今回の兵庫県知事を巡る混乱も,根本的にはこの五国の多様性に問題の根源があるように思います.経済が成長し,カネが十分にある時代は都市も田舎も均等にお金を撒いて各地で産業を発展させていけばよかった.しかし,人口減少の時代に入り,おカネも人材も潤沢ではなくなっている今,資金やリソースを誰に集中的に回すべきか,誰が何を失い何を得るのか,その対立が都市 vs 田舎,若者 vs 高齢者,太平洋側 vs 日本海側,一次・二次産業 vs 知識産業,リアル vs ネットなど,日本の縮図である兵庫県のありとあらゆる面で生じていて,その戦いが議会内であったり,知事と職員の静かな対立へとつながっていき,元県民局長と立花孝志の強い刺激を受けて大爆発した,というのが大きな目で見たときの今回の事件の本質のように思えるのです.

兵庫県という東京・大阪・愛知ほど大きくはない一つの地方県の問題が,ここまで大騒ぎになったのは,もちろん事件のセンセーショナルな内容というのもありますが,根底に横たわる対立の構図が多くの日本国民にとって他人事には思えなかったというのもあるんじゃないでしょうか.

この問題に対して辞職や逮捕,解散などで簡単に結論をつけて蓋をするのではなく,混乱の中でじっくり時間をかけて議論していくことが今後の日本のためにも重要であると私は考えています.

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