
103万円の壁の変更はかなり悪手
国民民主が画策している103万円の壁の変更ですが,単に国税にとどまらず様々な制度に影響が出てきます.マスコミが取り上げるのは以下の2点です.
・国税減収(4兆円) → 地方交付税減少(1兆円)
・住民税の非課税枠も引き上げ → 納税者の減少・税収減(4兆円)
直接的には地方は5兆円の税収減となります.
しかし,これ以外にも住民税非課税世帯・住民税所得割のみ非課税世帯(まとめて一般的には非課税世帯と呼ばれる)には様々な優遇措置があります.地方税の基礎控除額は国税と3万円ほどの違いがありますが,国民民主が求めるように地方税の基礎控除も引き上げるとなると,住民税非課税世帯となる世帯が年金受給層を中心に増えると思われます.
住民税非課税世帯の特典
・低所得世帯への給付措置
・国民健康保険の保険料減免
・介護保険料の減免
・高額療養費における負担軽減
・高額介護サービス費の負担軽減
・障害福祉サービスの利用料免除
・指定難病制度における負担上限の減免
・保育所の無償化
また別要件が加わりますが
・NHK受信料免除(世帯に障害者手帳保持者がいる場合)
・特定入所者介護サービス費の減免(資産要件あり)
なども受けることができます.自治体によっては紙おむつ代を支給するなど非課税世帯かどうかで色々な優遇を受けられるかが変わってきます.
これらの出費を考えると地方は5兆円では済まないインパクトがあるほか,応益負担の概念がないがしろにされかねず,年金受給高齢者ばかりが優遇されるということになりかねません.
働き控え対策として壁を変更すること自体は悪くはないですが,あくまで国税のみとし,地域サービスへの応益負担としての意味合いが強い地方住民税については基礎控除の据え置きが妥当であると思います.そもそも今でも住民税と所得税の控除額は違うわけですし.
税収のみならず様々な福祉サービス上の優遇が存在する事実を隠して(無視して)住民税を含めた壁撤廃を進めようとする国民民主党ははっきり言って詐欺的だと私は思います.