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アメリカの選挙広告の実態
兵庫県知事選挙はポストストーリーが色々続いているようです.選挙期間中も活動したSNSコンサルにポスター代を含めて料金を支払ったことが買収になるのではという話が出ているようです.ポスターとビラと固定電話だけが選挙のツールだった時代とは違って,一分一秒で状況が変化していくネットの時代どこからが準備行為で,どこからが選挙活動かというのはかなり線引が難しい問題だと思います.2013年にようやくネット選挙解禁をしたとはいえ,日本の公選法のそもそもの発想が昭和の時代で止まってしまっていることが,一般市民がいつも通りに何気なく行ったことが選挙違反に問われかねないような粗悪な制度となっている原因なのでしょう.
さてアメリカでは強力な力を持つ合衆国憲法修正第一条の影響もあるのか,SNSや広告を最大限活用して選挙を行うことはもはや当たり前となっています.10年以上前のオバマ時代からすでにネットは最も重要な選挙ツールとなっていたようです.また有償の広告も大して規制されていないことから,自分の住んでいる地域に限っていえば,選挙が近づくとYoutubeで流れる広告がほとんど選挙広告ということもありました.
ネットでの選挙広告ですが,住んでいる州がレッドステートのため,そもそも大統領選では混戦が予想されなかったためか大統領選に関する広告は皆無でした.しかし,同時に行われる下院議員選挙はかなりの激戦区であったため,事後の地元紙によると総投票数50万前後(兵庫県で言えば西宮とか姫路の総人口ぐらい)に対して民主共和双方で数億円以上のTVネット広告費が投じられたそうです.トータルの選挙費用は40億円ほどかかっているとか.1人に対して8千円ぐらいキャンペーン費用がかかっている計算です.
(ちなみに人口1400万人を有する東京都知事選の全選挙費用は最多の石丸候補ですら2800万円(1人あたり2円)ですから,いかにアメリカの選挙費用が桁違いというか,日本が極貧選挙を行っている実情が見えてきます)
内容については5月ぐらいは「相手候補が製薬マネーで優雅な生活をしている・誰もが安く医療を受けられるべきだ・私はそういう社会を目指す」というようなマトモな広告だったのですが,8月以降は互いの批判合戦が繰り広げられ,「この候補はラディカルで危険人物だ.この地区をブルーに戻していいのか?」とか「この候補はレイプも含めて妊娠中絶を全部禁止する運動をしたとんでもないヤツだ」みたいな罵倒合戦が繰り広げられ,時には地元の警察官(保安官代理かも)や教師・退役軍人といった信頼される職業の人が「この候補を支持します」と主張するほのぼのとした応援広告もあったのですが,とかくネガキャンがすごかったです.挙句の果てには「相手候補の政策に反対する人は相手候補事務所●●ー●●●●に電凸しよう」みたいな広告も普通に有名なテレビアプリ上で流れてきて,奥谷事務所前で演説する立花孝志が可愛いぐらいに思えるようなものもありました.政党が流したものなのか,支援者が流したものかは分からないのですが,「SNSはいかがなものか」とか言っている日本はまだまだ甘いよと思ってしまいます.
選挙が終わってようやく掃除機とかリフォームの広告を久しぶりに見た気がしますが,SNSが本格的に選挙に絡んでくるとプラットフォームの仕様の問題や金銭的な支出は避けられず,ネット解禁と有償運動や事前運動の禁止を掲げる日本の公選法は早々に破綻するだろうと予測します.斎藤事案はその先駆けといったところでしょうか.実際のところ,SNS上は日本の制度では選挙違反とも言えるような投稿が氾濫しており,本気で取り締まると拘置所が埋まってしまうでしょう.
公選法の取り扱いが今後どうなるかわかりませんが,不信任決議もなかなか決めなかった斎藤さんのことですし,明らかに有償広告で投票を呼びかけていた木村江東区長の件と比べてもグレーなので,仮に立件されても最高裁まで争うのではないかと思います.その間3年ほど,県政は止まり兵庫県は混乱するでしょうが,私は好意的に捉えています.やはり井戸県政20年,さらにそれ以前から続く昭和の行政体質を変えるには,2,3年では済まず5,6年の混乱期間が必要だろうと思うからです.関わった外郭団体も斎藤県政3年ではとても体質が改善しているように思えませんでした.
県政が止まれば若者支援などの目玉事業も難しくなりますが,各種大型事業も止まるので,利権に巣食う勢力も先が読めず事業から離れていくでしょう.何よりネットでの分断された世論が既得権益側の不正を次々と告発していくでしょうから,それはそれで既得権益側にとってはかなりの抑止力となるはずです.
僕自身は兵庫県行政の再生と安定は,斎藤知事の次の知事が本丸だと思っています.やはり職員や議会と軋轢ができてしまった斎藤知事では新規事業を次々進めていくのは難しい.ただし自ら盾となってハコモノ行政をストップさせ続け,既得権益を打破していく役割は果たせると思います.また今の幹部達は自分が中堅となっていろいろ差配できるようになってからは井戸県政しか経験していませんから,その仕事のやり方が身に染み付いてしまっています.彼らが定年退職し,井戸時代を知らない若手が増えて世代交代が進んで初めて県職員も自由な発想で行政を進めていくことができるのだろうと思います.その下地が整うまでの間,あと数年辞めずに粘ってほしいものです.