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「ランタンエルメス」12ヶ月をふりかえる

こんにちは。
銀座メゾンエルメスを舞台に、2024年1月から始まった1年間限定のプログラム「ランタンエルメス」。今月12月でフィナーレを迎えます。

各月のショッパーにつけてくれるタグ。

2024年のエルメス年間テーマは「フォーブルの魂」。
フォーブル=サントノーレ24番地に位置するエルメス第1号店の魂(スピリット)を受けつぐ銀座メゾンエルメスが、2024年各月のテーマとともに物語を紡ぎました。

パリのフォーブル=サントノーレ24番地

それでは、この12ヶ月をふりかえってみたいと思います。

1月:ボタニカル

植物と共に過ごす1月は、東信さんの手掛けるフラワーショップが展開されました。
(記事「東信さん手掛けるエルメスのフラワーショップ〜1月のランタンエルメスは「ボタニカル」)

普段はメンズフロアとして展開している一階がオレンジで満たされました。

見事なボリュームのブーケをバーキンにザックリ入れて帰ろうとしていた方があまりにも素敵だったので、私もお願いした。

2002年に東さんと共に花屋を構えた椎木さん。

銀座メゾンエルメスの屋上に佇むもみじの木はメゾンに宿る生命の象徴。

以前、普段はお目にかかれない角度から見せていただいた。

2月:ジュークボックス

音に焦点を当てた2月は、特別なジュークボックスがメゾンに運ばれました。

サドルステッチが美しい。

ガラスブロックの内側はいつも賑やか。5階のアトリエで職人たちが手を動かす音、8階の吹き抜けのギャラリーからは静かな反響音、階段をリズミカルに昇降するスタッフの足音。メゾンに響く音色に耳を傾けた2月でした。

3月:ジャンピング(障害馬術)

パリで国際馬術大会 Saut Hemès (ソー・エルメス )が開催された3月は、ジャンピングにフォーカス。

シマシマのバーを見ると飛びたくなる。

銀座のメゾンには、グラン・パレからフォーブル=サントノーレ24番地の屋上まで馬の背に揺られる体験がVRで用意されていました。

飛ぶ前につい前傾姿勢になったり、手綱を引いたりと自然に身体が動いてしまい酔いそうになったけど〜面白かった。

Saut Hemèsも勿論。初日はプレスとして入場させていただき、次の日は去年速攻取ったチケットを握りしめての観戦。
(記事「エルメス主催の国際馬術大会 Saut Hemès 2024(ソー・エルメス 2024)」)

障害馬術をかじった者として、ここは特別。

4月:ティックタック

店内にはそれぞれの持ち主たちと過ごしたオブジェ(商品)たちが展示されていました。

竹宮惠子さんの鞍

私が多くの時間を一緒に過ごしているのが、馬具モチーフのシルバーたち。
小さな頃から馬好きだった私が障害飛越という競技を知ったのは小学生の時。乗馬雑誌で「馬具商エルメス」を知ったのもこの頃。ごく普通の家庭で育った私が、馬の体温を感じながら飛ぶ、という世界に入ったのは高校時代でした。
最初乗馬に反対していた父がパリ出張時に買ってきてくれた馬のリングが私のファーストエルメス。以来、40年近く一緒に過ごしてきました。

ハミに手綱に馬、はいつも一緒。

ちょうど、大きなクレーンでメゾンをラッピングしている作業中でした。

首が痛くなるまでずーっと見てた。

5月:フォーブル

パリのフォーブル・サントノーレ店が銀座メゾンエルメスにやってきました。ガラスブロックのファサードは丸ごとフォーブルに。

ピロティにはフォーブルの屋上庭園を模したフォトスポットが登場。

花火師も降りてきてくれました。

銀座メゾンエルメスの働き手による「8つのちょっといいお話」も綴られました。私が印象に残っているのが「メゾンのお医者さん」。
銀座メゾンエルメスのリペアアトリエにはプレタポルテ(既製服)の修理全般を行う職人さんがふたりいます。

グラマラスな体型じゃないので「ちょっと詰めようかな」と思ったドレスがあって。私にとって高価なものだし、手を入れたくないし〜云々と店内で悩んでいた時、エクスリブリスの刺繍が背中に入った白衣を着た職人さんがアトリエから降りてきて、一通り私の意見をドレスに反映してくださった後、「どこも直す必要がないわ。あなたはそのままで颯爽と歩きなさいな。」と。

的確な判断と、自信のないところを肯定してくださって…とてもあたたかな気持ちで帰路に着いたのを思い出した。

6月:フラヌール(そぞろ歩き)

好奇心の赴くままに、定休日の銀座メゾンエルメスを散策する、という嬉しい機会をいただきました。
(記事「定休日の銀座メゾンエルメスを探検! 「フラヌール de 銀座メゾンエルメス」〜6月のランタンエルメスは「フラヌール(そぞろ歩き) 」)

いい遠近感。

2階のカフェでは、エルメスが管理している農場から届いた、4種類のハーブ水が用意されていました。

カフェの食材は主にエルメスがカフェのために管理している農園で、無農薬・無化学肥料で自家栽培されたハーブや野菜が使われます。カフェで出た生ゴミも畑の肥料として使用しているそう。

6月は2日間だけのお菓子屋さんも登場。

可愛らしいキャンディをいただきました。

7月:ヴォヤージュ

旅を楽しくしてくれるエルメスのオブジェたち。

馬も木陰でお昼寝、な暑中見舞い。

メゾンもヨットのラッピング。馬も涼しげに泳いでいました。

8月:グルマン

パリも銀座も美食の街。エルメスのシェフ、エリザベス・ラルクトゥー=ティリーがランタンエルメスのために特別に考案してくれた「タルト・オー・シトロン」のレシピがタグにありました。店内でいただいたスミレのアイスも美味でした。

エミール・エルメスコレクションからの2012年秋冬の杖が好き。

9月:香り

エルメスから初めてフレグランスが生まれたのは1951年。レザーの香りでした。銀座のメゾンに入ると一番に迎えてくれるのが香水たち。私は4階の馬具の香りが落ち着くのよね。

むかーしのエルメッセンスのサンプル。実験器具みたいで好き。

10月:シアター

銀座メゾンエルメス10階にあるプライベートシネマ「ル・ステュディオ」で映画『LA FABRIQUE DE LA LÉGÈRETÉ ― 軽やかさの工房』が上映されました。
(記事「天翔ける馬を銀座メゾンエルメスの「ル・ステュディオ」で〜10月のランタンエルメスは「シアター」

「ル・ステュディオ」は、パリの街角にあるような小さな映画館を銀座にも届けたい、というエルメス5代目ジャン=ルイ・デュマの想いから、2001年の銀座メゾンエルメスのオープン時に誕生したプライベートシネマ。

ケリーたちが楽しそうに歌う 『四つの鞄のオペラ』が印象的でした。

11月:ブキニスト

本に焦点を当てた11月。ブキニストとはセーヌ川沿いに軒を連ねる古本屋さんのこと。

年2回刊行の『Le Monde d’Hermès(エルメスの世界)』。深く広く壮大な世界へ誘ってくれるこの冊子、届くとじっくりと読み込みます。

『Le Monde d’Hermès(エルメスの世界)2024』

エルメスのアーティスティック・ディレクターであるピエール=アレクシィ・デュマの言葉を思い出しました。

エルメスの眼差しには、「世界は美しい」ことを前提にした、ある種の純粋さがあるのです。しかし、この純粋さは決して「世間知らず」ということではありません。それはある種の信頼であり、信仰ともいうような純粋な視点で世界を見つめるということに起因しています。実体の本質はありふれたものではなく、眼差しがもたらす驚きによってその世界を探求できるのです。
エルメスの眼差しは、世間知らずなのではなく、無邪気なのです。

「Le Monde d’Hermès」2023年秋冬号

本好きの私にとって嬉しい11月でした。

東信さんの『花のない花屋』も。

絵本『くるくるとステッチ』をいただいた。

12月:マジックオレンジボックス

メゾンの象徴であるオレンジボックス。
エルメス最初のボックスは木製でした。梱包されたのはもちろん馬具。その後、クリーム色のボックスに変わります。第二次世界大戦の終わり頃にはクリーム色の紙が不足し、入手できたのがオレンジ色。西洋ではオレンジは脇役の色だったそうです。そんな事情の中、パッと目を引く鮮やかで、レザーを思わせる凹凸のある質感のオレンジボックスは、1960年以降、メゾンの象徴となりました。

床にもちゃんと蹄跡。

建築家レンゾ・ピアノによるガラスのファザード

内装はジャン=ルイの妻、インテリアデザイナーのレナ・ デュマが手掛けています。

オレンジボックスでラッピングされているので店内もオレンジであたたかい。

約1万8千個のガラスブロックは45cm角。ブロック4つでちょうどカレの大きさ(90cm)になるように設計されています。

カレといえば、大好きなワルシャワ出身のアーティストJan Bajtlikデザインの《アニマポリス》。ブックサイニングのため来日されていたので、サインをいただきました。

馬も描いてくれた!嬉しすぎる。
優しいが人のかたちになったようなオーラを纏った方でした。
2019年、3区のル・カロ・デュ・タンプルで開催されたエキシビション「エルメス カレ・クラブ パリ」

夜はメゾンが街を照らす「ランタン」に。
1837年、馬具工房としてスタートしたエルメスが、日本に家(メゾン)を構えたのは2001年。5代目のジャン=ルイ・デュマのなかには街を温かく照らすランタンとしての「銀座メゾンエルメス」のイメージがあったそうです。

街から見た姿がランタンだとしたら、その中身のアイデアは“さかさまの木”というユニークなもの。上階にはアートギャラリーや小さなシネマといったパリの街中におなじみの文化施設を設け、これを“根”として、文化や歴史、新しい創造性や時代の感性をキャッチしようと考えました。この養分は来訪者にはもちろん、アトリエやオフィスというメゾンで働く人々のいる“幹”を通り、エルメスのオブジェ(製品)という“実り”としてブティックに届けられる――そんな“さかさまの木”なのです。

ランタンエルメス

エルメスはどんな時も夢を忘れない。

2020年5月11日から営業再開、というフォーブルからのお知らせ。

類稀なる観察眼や創意工夫の才に恵まれたエミール・エルメスの想いが継承されたメゾンには、馬の気配と共に好奇心沸き立つ空気が静かに漂っています。いつでも夢の中=夢中でいたい。

さあ、銀座の「ランタン」に会いに12月のメゾンへ。

銀座メゾンエルメスは 街を照らすランタンです。
―ジャン=ルイ・デュマ エルメス 5代目社長

ランタンエルメス


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