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自由でしなやか。樹々の精霊のようなニットドレス / KAKAN Fall 2024
こんにちは。
コレクション画像で流れてきた赤いニットのロングカーディガン。
言葉になる前にザーッと「豊かなもの」が流れ込んできて、展示会に行かねば!と走った、KAKAN 2024年秋冬コレクション。
こんなことは久しぶり。
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2024年秋冬コレクションが本格デビューとなるKAKANは、工藤花観とパタンナーが二人三脚で手掛けるブランド。
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工藤花観:1998年、東京都生まれ。2018年、ロンドン芸術大学 セントラル・セント・マーチンズ (Central Saint Martins)ファウンデーションコース卒業。2022年、イスティトゥート・マランゴーニ ミラノ ファッションデザインコース卒業。
パタンナー:文化服装学院ニットデザイン科卒業後「ヨウジヤマモト」で約6年の経験を積み、企業のニットデザインをも手掛ける。
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展示会場に入った途端に目に入ったのが、ふわふわの生物が床に横たわったようなドレス。
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手紡ぎの糸による手編み。
KAKANのニットウェアのデザインはテキスタイルデザインから始まります。手で「糸を紡ぐ」という工程を加えることにより、羊の種類による風合いの違い、色の組み合わせを自由に調整することができたといいます。
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それは、水彩画を描くように自由な表現をもたらしてくれたそう。
強く撚られて縮れた部分はからだを入れた時に、力のかかり方や重みで不均一に伸び、驚くほど自由で柔らかいシルエットを魅せてくれました。
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神々しいほど美しかったドレス。原始的な野生味があって自由でしなやか。
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肋骨のような、枝のような編み。朝靄の中でそっと出会った精霊のよう。
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編む工程も本来の服の作り方とは異なり、編み上げる形を決めずに編み始めたという。直感の赴くままに、自分の感性に従い生み出されたものには強烈な磁力がある。
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デザイナーと話しをしていくうちに、何に惹かれて展示会に来たのかが、答え合わせのようにクリアになっていきました。
KAKANのニットは境界線が曖昧。つまり自由。
「うちの服は生なんです。糸がなりたい形になってくれるんです。」と花観さん。
私は国境とか…不自然に引いた線や囲みに違和感を感じるので、この感覚を共有できるのは嬉しい。
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クシュっと床に寝ていた塊はトルソーに着せると、麗しいドレスに変身してくれた。
パッチワークのようにパーツを組み合わせてつくり上げたというこのドレスは、境界線なんて吹っ飛ばし美しく混じり合い自由だった。
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ファーのようなフワフワは、洗いの加工を施したもの。
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優雅な白鳥ドレスは前後逆に着ても。背中が深く開いた曲線はきっと綺麗。
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黒鳥もいるの。
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先端を羽根のように編み上げた黒鳥ドレスの美しかったこと!
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ベストは張りのあるシルクのワイドパンツに合わせたい。
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花観さんはロンドンからイタリアに移り住んだ時、アンバランスの中に潜むバランス感覚に惹かれたそうです。
時代も生まれも違うものたちがある人の感性で集合した時、そこにはその人にしか醸し出せない統一感が生じる。それは個性であり特有のバランス感覚でもある。
ああ、違いをそのまま受け入れ尊重できる方なんだな、と思った。
これがこのブランドの根底に流れている。だから惹かれた、嬉しくなった。
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誰かが作った基準に照らし合わると優劣、正誤が生じてくる。
ひとりひとりが持っているその人にしかない特性は尊いもの。いつかのCMにあったように「何も足さない 何も引かない」。ありのままが美しい。
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つまり、動物であろうと植物であろうと私たちは自然から与えられているものを一方的に消費する立場から、それらと「共生していること」を理解し、尊重する必要がある。
ファッションにおけるサスティナビリティやサーキュラーエコノミーについて考える上で重要な点は、製品の素材や生産過程のあらゆる面を考慮し、自分自身の心のときめきや感動に耳を傾け、最終的な選択をすることではないだろうか。
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「感動を纏いたい」と思っている私にとって久しぶりに嬉しい服でした。
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流れが美しいアイテムはそのままの長さで着たいけど…現実的ではないよね。という時には好みの長さに調節して下さるそうです。
手紡ぎの糸による手編み、そしてフィッティングまで。すごい!クチュールだわ。
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自由でしなやかな美しいニットたち。丹精込められたファーストコレクションをぜひ。
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KAKAN
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