静かなる水中宮殿に想う。Mono Lake (South Tufa Trail) / カリフォルニア vol.16
こんにちは。
馬に乗った後に向かうのは、Mono Lake(モノ湖)。
モノ湖には北と南の2つのポイントがあり、ルート395を北上してきた私が向かったのは南のSouth Tufa Trail。
スモーキーな緑、空と湖の青、そこに黄色の花たちが咲き乱れ、美しい色合いを魅せてくれました。
遠くにTufa(トゥーファ)と呼ばれる石柱が見えてきます。
北米最古の湖のひとつとされるモノ湖。標高2000mに位置するこの湖は、流出入する川がない大きな水たまり、閉塞湖です。
山から流れ出したミネラルは湖へ溶け込み、流出する川を持たない閉じられた環境で水の塩分濃度を上昇させました。湖底から湧き出した炭酸水は、水中のカルシウムと手を取り、長い年月をかけ石灰岩の宮殿をつくりあげました。それがTufaと呼ばれる石柱。
1941年のある日、ロサンゼルス市水道局(DWP)がこの豊かな水を市の水源として利用することにしました。その後40年間で水位は45フィート低下し、体積は半分に減り、塩分濃度は2倍に。カリフォルニア カモメにとって安全であった営巣地は危険に晒され、露出した湖底からの粉塵で大気の質が悪化します。
そして分水により低下した湖面から姿を現したのが、静かに水中で佇んでいた白い宮殿。
1976 年、カリフォルニア大学デービス校とスタンフォード大学の学生グループがモノ湖の生態学的研究を実施。ロサンゼルス市への過度の分水による生態系崩壊からモノ湖を救うため、モノ湖委員会が結成され、1979年、彼らは国内最大の水道事業体を訴え勝訴します。
カリフォルニア州最高裁判所は、州には可能な限りモノ湖のような場所を保護する義務がある、との判決を下しました。
その後、モノ湖委員会は問題を他の場所に移すことなく、ロサンゼルス市の水の需要を満たす環境に配慮した代替水供給の確保に着手します。結果、州政府と連邦政府はロサンゼルス市に数百万ドルを提供し、水再生プラントを建設、水保全活動に資金を提供することになりました。
ロサンゼルス市は水のリサイクル、保全により、最も水を意識した都市のひとつに生まれ変わり、モノ湖にも多くの水が生成され少しづつ水位を回復しつつあるといいます。
ふと足元を見ると、黒い何かが蠢いている。
黒いのは無数のアルカリ・ハエ。海の3倍もの高塩濃度、アルカリ性のモノ湖では多くの生き物は生息できない環境ですが、このハエは水中に潜ることもでき、湖底の藻を食べて生きているそうです。
そしてこのハエは渡り鳥たちの餌になっています。
モノ湖の「モノ」は、先住民たちの古い言葉で「蠅」という意味。
湖の中で密やかにつくられていた白い宮殿は、ロサンゼルス市の分水によって私たちの前に姿を現した。太陽と空気に晒され、自らの姿を崩しながらそこに在り続ける存在は、私たちへのメッセージを抱いているように感じました。
儚く幻想的な存在は、物的なカラダから魂を抜いているかのよう。
「いつか水中に戻る日まで、抜け殻をそこに置いておくわ」って聞こえた。
そしてここは、モノ湖とヨセミテ地域に住む先住民族である Kootzaduka’a Tribal (クーザドゥカ族)が太古の昔から住んでいたという地。
彼らは「山、森、砂漠、湖、小川は私たちに必要なものすべて、食べ物、薬、衣類、住居を与えてくれました。」と伝えています。
足元を見ると、小さなピンクと
黄色のコたちが風に揺らいでいました。
黄色とピンクを見た瞬間、Delpozoが浮かんだ。
スペイン出身のデザイナーJosep Font。彼の服たちはいつも自然から生まれてる。
モノ湖のTufa。色々ぐるぐる想いが巡ったけど…やっぱり私にとってこの奇観は美しく魅了される。美しいって嬉しいね。
続く。