ムッシュ ディオールの情熱を映したハイジュエリーコレクション〜Christian Dior "Les Jardins de la Couture"
こんにちは。
6月3日夜にコモ湖のほとりで開催されたディオールのハイジュエリーコレクション "Les Jardins de la Couture"。
豊かさを湛えた美しさに圧倒されました。
ディオール ジュエリー部門のクリエイティブ ディレクターとして28年間、ヴィクトワール・ドゥ・カステラーヌは、クリスチャン ディオールの情熱を探求し、ジュエリーに落とし込んできました。
今回のランウェイ プレゼンテーションには、パリのルサージュ、インドのチャーナキヤ工芸学校による刺繍が施されたドレスが登場!
(記事「異なる文化が出会う場所。ムンバイで開催された Christian Dior Fall 2023」)
レースに刺繍。花、生地、リボン、ドレープにプリーツ。
ヴィクトワールはクチュールの装飾を、そしてムッシュ ディオールの情熱を見事にジュエリーに映し出していました。
夢。
美しいって泣けるね。美しいって嬉しいね。美しいって満たされる。
1905年1月21日、グランヴィルの名士の家に生まれたクリスチャン・ディオール 。ノルマンディーにあるこの家の庭園を、自然と草花を愛したムッシュ ディオール。
ディオールのコレクションはいつも草花たちで彩られています。
ドイツ占領下のパリ、ドレスの顧客はドイツ軍という状況下、クリスチャン ディオールは静かに美を生み出す仕事に従事します。そして戦後の物資不足の時代に、贅沢に生地を使用したコレクションを発表します。
どんな時にも美しいものに対する情熱を持ち続けた方。エレガンスを守り続けた方。
マリア・ グラツィア・キウリは、2017年秋冬のクチュールでその「豊かさ」を見事に表現したルックを発表しています。
ああなんて愛らしい!子どもの頃に描いた「お絵かき」そのもの!な Mini Milly ネックレス。
幼少期を過ごしたノルマンディーの庭園を愛し続けたムッシュ ディオール。草花とそこで過ごす小さな生物にも優しい眼差しを向けていたんでしょうね。
カステラーヌは、クチュールのジャケットにてんとう虫を生息させていました。
ムッシュ ディオールが傾けた情熱の対象に深く分け入り、自らの感性と融合させ生み出されるヴィクトワールのジュエリー。
フランスの貴族階級の出であるヴィクトワール。ジュエリーが身近にある環境で過ごしたヴィクトワールは、シャネルのコスチュームジュエリーのデザイナーを経て、1998年にディオール ジュエリーのアーティスティック ディレクターに就任します。
大きさや稀少性など、石の価値に頼らないジュエリーを生み出し、ヴァンドームの宝石の概念を覆したヴィクトワール。
それは「自らが美しいと思うものを貫いた」世界。
シャネルで培った「コスチュームジュエリー」の感覚なのでしょうね。ビジューファンタジーと呼ばれるコスチュームジュエリーは、貴石を使わず美しさを追求したもの。
その感覚をハイジュエリーで表現するなんて!
私がヴィクトワールのジュエリーに出会ったのは17年程前。グランドキャニオンからの帰りに立ち寄ったラスベガスのディオールで。指にはめ悦に入り「買って!!」と振り向いたら誰もいなかった。
服と違っていつでもあるわーと思っているうちにどんどん値上がり…
で、2023年秋冬のトワル・ド・ジュイは、ムンバイから虎と孔雀を連れて来てくれた。これはコスチュームジュエリーね。ディオールでは「ファッション ジュエリー」とカテゴライズされています。
(記事「異なる文化が出会う場所。ムンバイで開催された Christian Dior Fall 2023」)
おもちゃ大好きなビクトワール。チャーミング!
美しいと感じたものに素直に、自らに制限をかけず突き進んだ世界。
固定概念に、既存のものに絡みとられず自分にとことん従う=独創性。
そしてもうひとりのディオール、クリスチャンの妹カトリーヌ。
愛した人がその一員だったレジスタンスに参加し、収容所に送られた彼女もまた、兄と同じように草花を愛でました。カトリーヌは、1945年5月に解放された後パリに戻り、花を卸す仕事を始めます。
そんなカトリーヌを体現した香りが、ミス ディオール オードゥ パルファン。
自然を愛し、美しいものに対する情熱を持ち続けた人たち。
メゾンを脈々と支えるデザイナーたちは、このディオールの「豊かさ」と自らの「情熱」を融合させ、世界を美しさで満たしてくれる。
どんな状況下でも自分を見失わず、愛するものを手放さなかったクリスチャンとカトリーヌ。
クリスチャン ディオールというメゾンはこの揺るぎない芯が貫いています。
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