荘厳なクアラルンプール駅とマレー鉄道公社ビル / KL⑤
こんにちは。
今回はKLでいちばん見たかった建築物、クアラルンプール駅とマレー鉄道公社ビルへ。
2001年にクアラルンプール中央駅(KL Sentral Station)が開業する前は、主要鉄道駅であったクアラルンプール駅(KL Railway Station)。
1910年に開業した白亜の壁とアーチが美しいクアラルンプール駅は、イギリス人建築家 Arthur Benison Hubback によって設計され、「インド サラセン様式(Indo-Saracenic)」と呼ばれる建築様式を披露してくれています。
タージマハルに代表されるムガール建築や、ギリシャ建築、ムーア帝国の建築など、イギリスから見た「東」の要素が混在しています。
モスクの象徴であるミナレット(尖塔)。
地上118階、地下5階の「ムルデカ 118」が背後に聳え立つ。。
中央駅としての役割を終えたと言っても、ここクアラルンプール駅には、イースタン&オリエンタル・エクスプレスが停車するんです!(KL中央駅には停まりません)
2024年2月に運行を再開したマレー半島を縦断するイースタン&オリエンタル・エクスプレス。
1972年に製造され、ニュージーランドでシルバースターとして運行されていた日本製の車両が、ベルモンド社によってリニューアルされ、優雅な旅を約束してくれています。乗ってみたーい。
Eastern & Oriental Express | Belmond Legends
そして、2024年7月16日からこの列車に乗り込んだのが、ディオール スパ。車両の緑色、車窓の外に広がる豊かな亜熱帯の緑とトワル ドゥ ジュイが共鳴。なんて魅惑的。
ベルモンドで思い出すのが、ウェス・アンダーソンが内装を手がけたファーストクラス車両「シグナス」。
ズブロフカ共和国なパステル、雲や星、波に白鳥が漂う木製パネル、ピンクの天井に緑のカーペット。ウェス・アンダーソンのあの「対称的」な美しさが散りばめられています。
Reimagining a British icon in collaboration with Wes Anderson | Luxury Trains | British Pullman
で、シベリア鉄道終着駅であるウラジオストクを思い出す。無性に列車の旅がしたくなった。
そしてクアラルンプール駅の正面に建つのが、1917年に建てられたマレー鉄道公社ビル(Malayan Railway Administration Building)。
圧倒的量感で迫ってくるこの建物も、A.B Hubback の設計。
ムーア風のファサードが美しく荘厳。懐かしい何かが流れ込んできた。
それは言葉になる前の何か大切なもの。こういった微細な感覚を逃さないようにしてる。自由をもたらしてくれるから。
惹かれるのはやはり尖塔。
アーチによる空間の切り取り方も、階段やバルコニーの細工も、石の組み方も。対象に対する美の使い方が圧倒的に私たちと違う。
すべてが堂々としていて荘厳。
なんて優美なカーブ。
正確に石を切り出す技術、積み上げる技術、細工を施す技術…かなり高度な技術が導入されている。
ここは現在、マレーシアの鉄道業社 Keretapi Tanah Melayu Berhad (KTMB) の本部となっており、一階の一部しか開放されていませんが、
建物内に入ると、
麗しい螺旋状の階段が迎えてくれます。
そして駅の近くにはホテル。
1932年に建設され、当時の贅沢と豪華さを象徴したホテル マジェスティック。
新古典主義とアールデコ様式のハイブリッドで建てられたこのホテルは、1970年代に輝きを失い、1983年末に最後のゲストがチェックアウトした後1998年までナショナルアートギャラリーの本拠地となります。
その後2012年、マレーシア最大級の財閥YTLコーポレーションにより、当時の構造そのままに復活を遂げます。
新旧、という表現を思い付くけど…私はいつもここに違和感を覚える。
美意識とスケールが今の私たちの感覚と圧倒的にかけ離れている。これらをつくった者たちの子孫が私たちだとは思えない。繋がっていない。
理論じゃなく、感覚が納得しない。
横浜正金銀行本店として1904年に建てられたという神奈川県立歴史博物館も
横浜正金銀行として1918〜24年まで使用されていた、ウラジオストクの「アルセーニエフ記念沿海地方博物館」も
京都の旧御所水道ポンプ室などからも同じ印象を受ける。
なーんて考えながら尖塔たちを後にしました。
続く。