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もらいもの(仮)18

私は叱られた子供のようにうなだれ立ち上がった。そして男に背を向けたまま、とぼとぼと歩き出した。変に逃げたと思われると怖いので、心持ちゆっくりと歩いた。とは言え、どこへ行くか。何もなければこのまま帰るが、この状況で自らすごすごとあの罠のような部屋に戻るのもさすがに情けない。考えあぐねてしばらく公園内を歩き回っていたが、それはそれで不審に思われそうで外へ出た。

この辺りで知っている場所といったらそこしかないので、足は自然と駅の近くのハローワークに向かっていた。入っていく人も出て行く人も一様に俯いている。楽しさ明るさの欠片もない、悲壮感だけが漂う馴染みの光景である。そうだ、入って仕事を探せばよいのだと、重苦しく押し黙った人の流れの中に立ち、私は考えた。こんな状況、自力で脱出すればよいのだ。あんな部屋、自立して出て行けばよいだけの話なのだ。でも……。私は昨日のことを思い出した。なかったよ。見たけどまともな求人ほとんどなかったよ。年齢とスキルのなさを痛いほど思い知らされただけだったよ……。

入っていく人と肩がぶつかってよろけると、今度は出てきた人とぶつかった。私は掃き溜めへ追いやられるように道の端に身を寄せた。ぼーっと立っているだけで邪魔なはずだが、人々は私に悪態一つつかず、睨みもせず、視線を上げて見ることさえしない。まるで私などそこに存在していないかのようだ。皆それどころではないのだ。必死なのだ。私ごときに振り向けるエネルギーなどないのだ。

まあ、まだいいか、今のところは……。私はゆっくりとその場から離れた。そりゃもちろん、考えないといけないとは思ってるよ。何にせよ働くつもりではあるよ。でもほら……。ちょっと今はまだ状況がはっきりしないというか、荷物とかもぐしゃぐしゃになってるし……。山口さんにもどう思われるか分からないし……。だから……ねえ。それは別に、今日じゃなくても……。

私は当てもなく街をぶらついた。コンビニに入ったが、腹が減っていないのと、また帰るとびっくりするほど旨いものが用意してあるのだろうという期待があると、欲しいものは何も目につかない。私は本屋に入った。今まで入ろうという気を起こしたことがなかったので自分でも意外だった。雑誌の表紙などぶらぶら眺めていたが、何となく興味を持って手に取ってみたのがサボテンの本だったというのもまた意外だった。

尾行されているような気はした。もちろんそれは気のせいで、単にどれも別の大柄の男だったという可能性もある。だがこの日本でああいう体型はそこまでありふれているものでもない。だからそう考えるのに無理があることも分かっていた。

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