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重荷 21

ダウンタウンエリア

再開発が進み、個性的なショップや気鋭のギャラリーなどが続々オープンしている注目スポット。近年では治安も格段と向上しているが、多数の危険なエリアと隣接しているため注意が必要。特に女性の一人歩きは避けたほうがよい。夜は男性でも複数でも危険。街歩きの際は地図をよく確認し、万が一危険なエリアに入ってしまった場合は直ちに引き返そう。路上生活者に声を掛けられても決して応じないように。

バスの時間までしばらくある。この辺をぶらぶら見て回ろう。それにしても、ガイドブックの言う通りだ。通りにはレンガ造りの古い建物をリノベーションしたセンスのいい店がずらりと並んでいる。来た日の私は一体どこを歩き、何を見ていたというのだろう。何ならこの辺りだけで丸一日潰せそうではないか。計画変更しようか? 別に誰に決められたわけでもないのだから。

誘われるように入ったオーガニック化粧品の店で、カモミールの香りの切り売り石鹸の匂いを嗅ぐ。なかなかいい感じだ。値段はそこそこ、だがこういうものは出会いだから、これとラベンダーの香りのとを包んでもらう。お陰でバッグの中がとても上等な香りで満たされた。上機嫌のまま隣の服屋に入る。他に客はなく、一人きりの店員も入ってきた私に笑顔で「ハイ」と一言言っただけで、手元のタブレットに視線を落とした。建物の造りのせいなのか、店の中は吸い込まれるように静かで、ひんやりとしていている。並んでいる洋服もどれも好きな感じだ。余計な装飾がなく、シンプルで清潔で質がいい。そんなつもりはなかったけれど、思い切って何か買ってしまうか?

「それ、あなたみたいな細身の人に似合うわよ」

カウンターに肘をついたまま、店員は私が手に持っている服を友達のような親しさで指差した。営業トークだと分かってはいるが、開放的な気分のせいで思わず口が緩む。

「欲しいんだけど、今買う予定じゃなかったから」
「何するつもりだったの?」
「観光バスで街を回ろうかと。来たばかりで、この街のこと何も知らないから」
「じゃあ行ってらっしゃいよ。いいとこいっぱいあるし、店はいつでもやってるから。まだしばらくいるんでしょ?」

店員がいかにも当たり前のようにそう言うので、思いがけず背中を押される格好で店を出た。この街の人は皆自分の利益しか考えないと思っていたが、そうでもないのだろうか。そうこうしているうちにいい時間だ。バスが来るのは坂の上、地図で見ると高層ビル群の中だ。強い日差しを避け、影を選んで歩きながら目的の場所を目指す。

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