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もらいもの(仮)22

「元はと言えばね、奥さんのご主人が会社をやってらっしゃったんですよ。建設関係のね。僕もその会社で働いてて、ここはその寮だったんです。ご主人が亡くなって会社畳んだ時にここも一般の貸し部屋にして、僕は管理人的な感じで任されているんです」

「はあ」

分かったような分からないような説明だった。そもそも、この人は仕事をクビになったと言っていなかったか? 管理人として働いているのだとしたら辻褄が合わないし、一緒に住めば家賃を払わなくて済むとかいう話も意味が分からない。しかし山口さんはそんな私の不信の表情を察知し、何も言わせまいとするかのように言葉を続けた。

「それでね、たまたま入居してきたあなたを奥さんが気に入って。ねえ、一目惚れって言うか。カッコいいですからねぇ、あなた」
「もうここ住んで八年目になりますけど?」
「奥さん、ほんと控えめな人だからなあ。とにかくまあね、あなたが困ってるようだったら助けるようにと私言われてましてね。いやあ、イケメンは得だなあ。羨ましいことですよ」
「待ってください。ちょっといろいろ聞きたいことはありますが、そのさっきからイケメンとか美形とか言うのは何なんですか。人を馬鹿にするのもいい加減にしてください」

すると山口さんは真顔で私を見つめた。

「竹野内豊に似てるって言われません?」
「は?」
「あのね。そういうことあんまり否定すると逆に嫌味ですよ」

そう言うと山口さんは私に背を向け完成したばかりの床の上に横になった。狸寝入りなのは見るからに明らかだったが、これ以上の会話には意地でも応じないという心づもりだけは伝わってきた。それでもなお何らかの反応を引き出そうと私も頑張ったが、一向に埒が明かなかった。

のらりくらりとどれだけかわされ続ければ気が済むのか。問い詰めたいことは山ほどある。助けたいとか何とかいう方便はともかく、相手はなぜこの人を介して私に近付いてきたのか? そしてなぜ今になって? 話せば話すほど謎は増えていく。その場しのぎの言い逃れのせいで、却って矛盾が際立っていく。あんな説明で十分だと思われているということ自体、見くびられたものだ。それなのにどうして毅然とした態度を貫けないのか。どうして相手のペースに乗せられてしまうのか。自分で自分に腹が立った。だが一方、この時私は脳の片隅で別のことも考えていた。

竹野内豊って、どんな顔だったっけ……。


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