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一人と六姉妹の話 21

「ふうん……。この人がねえ……」母が再び写真を手に取り、しげしげと眺めた。「まあ、お義母さんのあの性格からすれば、そんな変わった人がおったというのも分からんこともないけど。……でもやっぱりちょっと普通やないよね。どういうことなんやろ。それとも知らんけどその時代やったらそういうのも普通やったとか? そういうことない?」

「ないんじゃない、多分」私は言った。

「ねえ、あんたこの伯母さんのこと本当に何も聞いちょらんと?」母は父に言った。「もう一回よーっと思い出してごらん。時々会ったことがあるんやないと? 他の伯母さんと似ちょうき勘違いしちょうだけやない?」

「知らんてだから」父は煩そうに言った。

母は、ドラマの成り行きを推測するときのように至極真剣に考え込んだ。

「……お父さん死んだきやっと帰ってこれたんやろか。生きちょう間は戻ってきたら絶対許さんち言われちょったけど。そんな顔よね。ずっと会われんかったけどやっと会えたみたいな、みんな。でもやっぱり表には出てこれんきこうしてさ、裏でさ。そうじゃない? お義母さんもさあ、ほら、こんな嬉しそうな顔、あたし見たことない」

「婆さんも笑うことぐらいはあったて。そげなこと言い出したらきりがなかろう」

「でもそうでも思わんことには何も分からんやないね。あんた、気持ち悪くない? 中途半端なことばっかり出てきてさ、どういうことやったのか分かる人、もう誰もおらんやないね。皆死んでしもてさ。何なんよ。気になるばっかり。もやもやする」

その時、傍らでうつらうつらしていた祖父が出し抜けに言った。

「何をやいやい言いようとか」

1925年生まれの祖父は、身体は健康、意識もすこぶる明瞭である。昼間はうとうとしているが、それは老齢による衰弱のためではなく、夜中に起き出して田畑を見回り、夜明けとともに仕事を終えて昼間は寝る、という動物的なリズムで暮らしているせいである(滞在当初、私はそのことを知らず、寝ているばかりと思っていた祖父の活動ぶりに気付いた時は非常に驚いた)。百歳も近くなると誰でもそうなるものなのか、人間というより地球に同化しつつあり、何となく、同じ次元で会話をするような相手ではない気がしていた。もっとも、この件については祖母方の話、しかも嫁ぐ前の話であり、祖父にはあまり関係ないことだろうと誰もが思っていたというのもある。

「お義母さんのお姉さんの話ですよ。あっちのお父さんのお葬式にみんなで集まったと、覚えてない?」

「……知らん」大儀そうに祖父は言った。

母は祖父に写真を見せ、なおも食い下がった。

「この人と思うけど。誰も知らんかったけど、神戸におんしゃったとげな。何か聞いてなかったですか?」

祖父は写真を一瞥した。

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