もらいもの（仮）37

――　いや……　――　それ僕の話ですか？　――　全然分からないです　――　そういうことなんですって言われてもね……　いや　難しいとかそういうことじゃなくて　そういうことじゃないんですよ　それは違う　全然違うと思いますよ　――　だからそれは　そうですよ　でもそれは　そりゃ確かにね　褒められた人間ではないですよ僕は　世間的に見れば　ろくに記憶もないくらいその日暮らしで　でもあなたもね　こういう生活してみれば分かりますよ　日付なんてね　何の意味もなくなってくるんですから　生活の中に何の取っ掛かりも　覚えていられるほどの目鼻がね　そう　なくなるんですよ生活の中にね　一人だとね　ただ時間が過ぎていくだけで　だから記憶をなくしてるとか　そういうね　大袈裟な　何ですか　海外ドラマですか　ないですよ　そんな話じゃ　ないない　そういうことじゃなくて　ただ覚えてられないってこと　記憶に残るような生活してなかったってことですよ　――　それに付け込んでね　あなたたち　勝手な解釈をして　腹立つ　なんで何も言わないんですか　なんかほんとに　俺のほうがいかれてるみたいな　みんなして　――　分かった　それあいつですよ　あいつの話ですよ　そうだ　絶対そうだよ　どっかで俺のと名前が入れ替わったんでしょう　その記録ってやつ　そうですよ　それなら分かるよ　あいついかにもそんな感じだもん　何考えてるか分かんないっていうか　ああそれだ　突発的に人を傷つけるようなことしたって　まさにあいつ　それまさにさっきあいつがやったことじゃないすか　それだよ　それですよ　それなら分かる　施設で面倒見切れなくなったから引き取ったって　その奥さん　歌手でしたっけ　その人がね　そうだそうだ　愚息ってやつね　有名人ならそんなのが表に出たら困るもんね　義理の息子とは言えね　ああ　そういうことだ　でしょう　ね　だから引き取っていろいろ働かせてたんだ　――　ねえ　そうでしょう　そうだと思いません？　まじで　そんなのと間違われたら俺もたまったもんじゃないんだけど　知らないし　ねえ　――　ねえ　なんで何も言わないんですか　――　あるかもしれませんねじゃないですよ　そうなんですよ　それ以外ないから　――　……　――　は？　――　何言ってんの？　――　何その話　ファンタジー？　勝手な想像って　勝手すぎるでしょ　そんな話する場所ですかね　ここ　――　強迫観念？　は？　何言ってんのあんた