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一人と六姉妹の話 27

少年は猛然とその後を追った。若い女は散歩でもしているようにぶらぶらと辺りを見回しながら、生垣の葉っぱを手持無沙汰にちぎったかと思うと、その感触を軽く確かめ、そのまま落とした。少年はその女の一挙手一投足を殊更に見咎めながら眉を顰めた。何というふてぶてしい女だろう。身内の嫁入りという時に持ち場を離れるなんて、よくもそんなことができるものだ。よその人間のくせに我が物顔で村の中を歩いているというのも感じが悪い。分かっているのだろうか。俺の従兄はこれから戦争に行くんだぞ?

それにしても、少年の目にやはり風景はいつもと違って見えた。少年には生まれ育ったこの小さな村のことで知らないことはない。木一本、岩一つが自分の身体も同然だ。だが、それに借り物のような縁遠さを感じるのは、むしろ迷い込んでしまったのは自分の方であるようにさえ感じてしまうのは、もしかすると視界に映り込むあの変な女のせいかもしれなかった。

女はのんびりと、しかし迷いなく集落を貫く坂道を上っていく。どこかふわふわと地に足のつかない感じがしたまま、少年もいつの間にか自分の家の前を通り過ぎていた。家の並びを抜け、坂道を登り切った先には小さな神社がある。女は鬱蒼と茂る木々のトンネルをくぐり、そこへ続く苔むした石段を登り始めた。

今から行く気か? 少年は一瞬躊躇した。というのも、神社まではかなりの距離がある。その上、いつも湿った石段は急で滑りやすい。子供の遊び場としては格好だが、その険しさのため、足の悪い年寄りなど普段は下で参拝を済ませることも多い。あの女、分かっているのだろうか。しかし、そう考えている間にも、相変わらず夢見るような足取りで石段を登っていく相手と自分との距離は次第に開いていく。荷物はここに置いていこうか。しかし、頭によぎったその思い付きを少年は直ちに追い払った。これは持って行く。そしてあの女の目の前に突き出してやる。……

少年は足を滑らせながらも苦労して上を目指した。抱えた袋のために前を行く女の姿は見えなかったが、葉陰が途切れ、再びあの眩しい白い光が顔に当たり始めたのを感じて、ようやく何とか登り切ったことが分かった。鳥居の前で一旦袋を下ろすと、少年は上がった呼吸と腕の疲労を落ち着かせた。それから辺りを見回す余裕も出てきて、少年は顔を上げたが、目の前で同じく息を切らしていると思った女の姿はそこになかった。境内に人の気配はなく、風に枝が揺れる音さえ聞こえない。少年は再び袋を抱えると、気色ばんで鳥居をくぐった。

「おい」少年は叫んだ。「――おい!」

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