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抽選会 12

「ああ、話にならない」私は言った。「ねえ、もうそもそもの話なんですが、私はこれ何の抽選なのかも分かってないんですよ。肝心の中身を誰も説明しようとしないじゃないですか。尋ねても質問の意味が分からないような顔をする。誰に聞いてもそうですよ。ええ、私は単にやりたくないと言ってるだけじゃないんです。一体これは何なんですかと聞いているんですよ、最初から。分かりもしないものの相続とか言われたって、何をどう考えようもないでしょう」
「あのー、抽選会のとき倒れた吉倉さん、いらっしゃったでしょう」
「はい。あのおばあさんのことですか」
「吉倉さんのとこはあのー、お孫さんかな」男の方は確認を求めるように若い女の方を見た。女が頷いたので男は続けた。「そう、お孫さんがね、市内の方にもともと住まれてた方ですけどね、今戻られて代わりにされてます」
「知りませんよ。本当に嚙み合わないですね」
「はい」男は全然聞いていない様子で言った。「じゃあ、いいですかね」

無理やり押し付けられるボードを前に私は大きく溜息を吐いた。溜息くらいのジェスチャーで通じる相手でないことは分かっているが、言っても分からないのだからどうすればよいのか。その時、若い女の方が言った。

「叔母様ですよね、お亡くなりになったのは」

その声の響きには、ほんの少しだが思慮深そうな、少なくとも男の方よりは話が通じそうな感じがあった。

「ええ」
「叔母様ということは、お母様かお父様の……」
「母の妹です」
「そうですか」女は何かメモをしながら続けた。「生前にご希望は何か聞いていらっしゃらなかったですか」
「希望? このことでですか? いや、そんな次元のあれじゃなくて、もう私がこっちに来た時点で喋れる状態じゃなかったんです。もともと付き合いもなかったし、と言うか、私、子供の頃からここに来たこともほとんどなかったんですよ。そもそも亡くなった祖父母のこともほとんど聞いてませんし」
「へえ。それでここに来られたんですか」女は興味深そうに目を見開いたままもう一度繰り返した。「それでここに」
「ええ。でもね、皆さん見てるとこれ、知らないで済まされることではないんでしょうから、もちろん必要な手続きには応じますよ。ただその、何だか知りませんがその役ですか? それは申し訳ありませんが辞退させていただきます」
「それはできないんですよ」男が口を挟んだ。それと同時に女も口を開いた。
「それで平気なんですか?」

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