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一人と六姉妹の話 15

あ、いやだ。変な虫でも見つけた時のように私は抽斗から身を離した。いやいや、いやね、いやほんと。あの、こういうの、困るなあ。誰にも言わなかった秘密を打ち明けられるとか、そういうの要らんなあ。そこまでのつながりは要らんなあ。中立かつ無関心、長く続く安定した友人関係の秘訣ってそういうとこじゃないのかなあ。……しかしいくら言ってももう遅い。何と言うか流れ的に見ないという選択肢はない。これも開けた人間の責任というものだろう。仕方なく伏せられた写真に手を伸ばした。そして包帯を外して傷口を覗く時のようにおずおずとそれをひっくり返した。

それは色褪せたモノクロ写真で、写っていたのは、ニコニコと楽しそうに笑っている数人の女性たちの姿だった。家事の合間に集まった主婦たちの井戸端会議のように気楽でリラックスした雰囲気だ。そのうちの一人は若き日の祖母――意地悪く顔を顰めたお馴染みのあの表情ではなく、あどけなささえ漂う晴れ晴れとした表情だ。今の私よりずっと若い。そして祖母だけでなく他の女性たちも小柄で、若さゆえにはち切れそうな丸い顔をしていて、皆微笑ましいほどよく似ている。

姉妹か。扱いに困る写真ではなかったことに私は少し拍子抜けした。秘密の写真どころか、古き良きサザエさんの時代を彷彿させる、なかなか素敵な写真ではないか。皆決して美人とは言えないけれど、実にいい表情をしている。何でこれだけここに紛れ込んだのだろう。他の作業に気を取られて置き忘れてしまったのだろうか。……

しかし、この写真への関心は長くは続かなかった。この時はまだ神戸の人の存在など知る由もなかったし、2×3の話はうっすらと耳に入ってはいても、意識の中で特にそのことに焦点が当たることもなかったからだ。やがてこの写真のことは記憶からも消えてしまった。

新たな情報が何ももたらされない中でも、親戚たちは顔を合わせるたびにその人の話でもちきりだった。それにしても、二十歳そこそこの娘が身一つで街に出て行って何して暮らすかね? そりゃあ、あんた……。一同は口ごもる。時代が時代やし、いろいろあったろう。でもそれが家まで建てるかね。結婚もせんで……。誰かが言う。お金持ちの二号さんか何かしよんしゃったとやないですか。その人に建ててもろうて。一同は考え込む。しかし誰かが口を切る。ばってん、あのばあさんの姉さんぞ。全員の脳裏に、美しさや柔らかさ、女性らしさとは程遠い、あの険しい老婆の顔が浮かぶ。場が静まる。でもほら、そげんとは好きずきやから……。反駁する誰かの言葉も自信なさげに語尾が消えていく。そしてやがて謎は謎のまま、小石のように小さいが、一切その輪郭をぼかすことなく各人の胸中に再び居座るのだった。

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