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【ゼロからわかる中国ビジネス②】ーKOLが誕生する土壌

今回はライブコマースから一歩踏み込んだ話をします。ライブコマースの主体となるKOL達がどのような生態系にいるかを記事化してみようと思っております。

KOLとは


KOLは一言でいえばKey Opinion Leaderの略です。この言葉はメディア理論の概念「Opinion Leadership」の発展であり、中華圏のネットビジネス会社がマーケティングの意味でよく使っています。基本的にインフルエンサーと同じ意味合いですが、中国の場合フォローワーを多く抱えている人という特徴以外、ネットでよく影響力のある文章を投稿する人も対象になっています。つまりマーケティングとメディア両方の機能が入ってます。


KOLが誕生する土壌


KOLは近年注目される理由に、大量に”生産”されたことがあると考えられています。経済の三要素を例えすると

経済に労働、資本、土地という三要素があります。KOLの経済システムにも同じく三つの構成要素でアナロジーできます。
・労働力ーKOL
・資本ーMCN
・土地ーネットのプラットホーム

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 労働力ーKOL

労働力となるKOLはYoutuberが増えると同様に、コンテンツ発信が面白い、コンテンツを作るのは儲かる、と思う人がどんどん増えて、自分を一メディアとしてキャリア選択する人が増えてきました。
自分がファンを獲得して自己顕示欲を満たす一方、トップインフルエンサーの収入が非常にドリーミーです。

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(SocialMarketing  『李佳琦一条广告费 = 我10年工资!(150个头部KOL报价表)』 2019)
図の通り、Wechat公式アカウントトップインフルエンサーのタイアップ広告費は想像を絶するものです。仕事依頼の形式はタイアップ広告だけでなく、レベニューシェア型の販売契約、イメージブランディングするための広告撮影など、様々なコラボレーション方法があります。
例を挙げると、
・GQ実験室 1,966万円
・視覚志Vision 1,333万円
といった具合ですが、今でもこの価格を維持できているということはある程度合理性を持っているともいえます。
若者にとって少しでも愛嬌があればすぐにファンを惹きつけて人気者になり、一回の広告費が軽く百万円超えたりして、まさに現代の一攫千金ストーリーになっています。新華ネットの調査によると、54%の1995年以降生まれの若者がKOLになりたいとのことでした。

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(新華ネット 『95后的谜之就业观,你看懂了吗?』2017)

 資本ーMCN

さらに資本ーMCNの進化もスマホビジネスの拡大と共に目まぐるしく拡大してきました。
まずMCN語源はMulti-Channel Networkであり、資本&管理ノウハウを用いて在籍するクリエーターが良質なコンテンツを出し続けられるように存在する会社です。一言MCNと言っても様々な形態があります。

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その中に一番典型的なのは数名有力インフルエンサーを抱え、徐々に新人を招聘し規模拡大するというKOLマネージメントをする会社です。KOLに対して撮影設備の提供なり、配信のノウハウをあげるなり、トラフィックの誘導なりをしてあげる割には、KOLの広告レベニューシェアを享受します。これは日本の事務所モデルと近しいのですが、有名KOLであればあるほど、レベニューシェアのプライシング決定権を有します。しかしながら、MCNは配信ネットワーク、クライアント、物流網を持つことによって、KOLと絶妙なバランスを保っています

MCNは大きく四つの角度で良し悪しが判定されます。
・生産コンテンツのクオリティー:どのようなコンテンツがプロデュースされるか、それにどのような口コミを得ているか
・KOLのパフォーマンス:KOLアカウントのリツイ、良いね、などのエンゲージメントパフォーマンスはどれほどよいうか
・広告ROI:一回の広告当たり購入、登録といったコンバージョンはどれぐらい発生するか
・サービスカバレッジ:広告コンサル、販売アフターケア、クレーム対応サービスは完備しているか

ユーザー視点からでKOLは魅力的なのかを見ることは当然ですが、クライアント視点では、KOLどれほどエンゲージパワーを持って、自分のブランドコンセプトと共有して、ROI高く自社の商品PRできるかは判断のキモになります。

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(TOPKLOUT克劳锐「2020年中国MCN行业发展研究白皮书」2020)

ユーザーがTiktok、Wechat公式アカウントのトラフィックが急増する恩恵を受けて、KOLを育つためのMCNも一気に2万社を超えました。もちろん玉石混交ではありますが、マーケットはこれほど大きくなってそれぐらいの人を受け入れられるようになったと理解できます


 土地ーネットのプラットホーム


プラットホームの詳細は別途の記事にて書きますが、KOL/MCNはどのようなプラットホームを好むかはここでご紹介いたします。

まずここでいうプラットホームは狭義的な意味でのものになります。ユーザーが投稿ができ、そこでフォロワーを獲得できる仕組みを構築しているプラットホームのことです。となるとInstagramは対象内、Facebookは対象外になります。

また、ざっくり中国のメインプラットホームは「两微一抖」と言われています。それぞれ「微博」(ウェーボ)、「微信」(ウェーシン)、「抖音」(Tiktok中国版)です。

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(克劳瑞  「2019MCN生存状況調査ー重視するプラットホームランキング」)

図の通りに、「两微一抖」は上位に占めて、次いで「快手」(クゥアイシュー)、「小红书」(シャオホンシュー)、「B站」( Bilibili)があります。
プラットホームに投稿されるコンテンツはそれぞれ特徴を持っていて、ブランドや広告主が自身のニーズを鑑みてどこに広告投与するかを決めます。

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KOL経済圏の三要素が揃った未来の展望

労働力、資本、土地三者の総合作用でKOLを中心とするインターネットメディアの経済圏が成立するようになります。特に日本やアメリカと比べて違う点は、KOLが各プラットホームに分散され、圧倒的にそのプラットホームにおいて影響力を持っているという部分です。ユーザーがフォローしているKOLのところからエンタメ性の高いコンテンツだけでなく、自分の意思決定につながる情報も自然に受け入れています。例えば日本において〇〇芸人の方が売れているという評判があっても、この人が年間どれぐらい広告費売り上げあるかランキングされないでしょう。しかしながら、中国のKOLがすでに「〇〇さん今日の売り上げ〇〇円売れた!」と普通に公開されます。

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(Smartisan元CEO羅永浩さんがTiktok中国版でライブコマースファーストショーの売り上げレポート 1回のライブで16億円)


やや不適切な例えをするとインターネット上の「百家争鳴」時代になりつつあったと私は思います。極普通な人であったでもオンラインで創意工夫をして自ら影響力を手に入れることができ、自分の経済圏を築くことができます。そうすると、「非中央集権型の販売網」が構築されているではないかと思います。若干皮肉的なことではなりますが、KOL経済三要素が揃うことによって、中国のECは空前的に自由に、活発に貿易が行われています。

そして、既存のオフラインの会社はそれに適応しなければならないし、自分自身がどのように進化すれば良いかを考えなければいけません。なぜならば、インターネットは一人間に多大なパワーを与えていて、一度体験できた人は戻ることはありません。ですので、誰もがKOLになれる、誰もがKOLになりたい、というアイディアがどんどんバイラルに拡散し、不可逆的なトレンドになっていくはずで、今後全世界のスタンダードになるのではないかと私は思います。

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以上KOLが誕生する土壌の話でしたが、また次回エコシステムの話をお届けします。拙い文を最後まで読んでいただきありがとうございます。ご指摘などございましたらぜひお願いいたします。

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参考記事
1、新華ネット 「95后的谜之就业观,你看懂了吗?」2017 http://www.xinhuanet.com//video/sjxw/2017-05/22/c_129612932.htm

2、TOPKLOUT克劳锐「2020年中国MCN行业发展研究白皮书」

3、梅花ネット「李佳琦一条广告费 = 我10年工资!(150个头部KOL报价表)」

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