【ゼロからわかる中国ビジネス①】ーライブコマースの光と闇
今回からは【ゼロからわかる中国ビジネス】シリーズを書き始めました。主旨はニュースになるようなテックカンパニーの意外と知られていない一面、もしくはそれほど知られていない中国ビジネスのインサイトをお届けしようということです。第一回目はライブコマースで、続編も色々と面白いこと描ければと思いますので、よければ是非フォローをお願いいたします。
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コロナ禍で多くのビジネスが戦時状態に臨み、なんとか伸ばしてきました。そんな中、スタートアップや大手が続々と参入する、セレブたちも配信試始める、といった具合に隆盛だ。よって中国ECのトップトピックに「ライブコマース」が何度も登場しました。
タピオカの二次ブームみたいに、これから日本またライブコマースが来るんじゃない?と議論が飛び交っています。
こんな時に、ライブコマースが活躍している光の一面と裏の闇を解剖しお届けしたいです。
1.ライブコマースとは
1.1 解釈
ライブコマースとは、ストリーミング配信による商品の売買を指している。スマホの普及により携帯ベースの配信が多いため、大体の場合スマホベースのライブコマースに連想する。
また、エンタメのライブ配信も一部ありますが、今話題となっているのは実物を売るECの方です。
1.2 代表企業:タオバオライブ
タオバオライブは2016年にアリババがリリースしたライブコマースアプリです。実は、タオバオアプリから独立しライブ機能に特化した存在です。
タオバオライブが発表したデータによるとGMVの成長は3年連続150%成長を遂げました。
そして関連するMCN(インフルエンサー事務所のこと)の会社が1000社を突破し、ライブコマースマーケティング代行が200社を超えたという。
*出典 <2020タオバオライブの経済効果レポート>タオバオECユニット
2020年のタオバオのGMV規模は7兆円に到達するとも言われています。
1.3 KSF
ライブコマースは主に三つの点において従来の販売チャネルより魅力的と言われます。
■ライブ限定の激安価格:
通常ライブ配信者は提供側に価格交渉を行います。ライブ配信中の商品は必ず他のチャネルより低くなければならないのです。となるとユーザーが自然にライブで買うのは一番安いとイメージ形成します。
■ライブでの質問で、購入前の不安解消が可能
ライブ配信中、疑問がある場合そのまま投稿欄に気になることを書き込み、配信側が即答するようになっています。例えば口紅の販売で、口紅の色がどれぐらい赤いだろうと気になった場合、配信者がすぐ塗ってみたり、他の色と比べたりして疑問を解消させます。そうすると、化粧品や服など、リアルで見ないと心配だと思う商品も気軽に買えます。
■エンタメ性に富むインタラクティブなコミュニケーション
ライブ販売の本質はテレビ販売とは違い、第一にそもそも配信者のために見に来ている人が多い点と、第二に同時に複数のユーザーとやりとりできる点があります。不謹慎な喩えをすると、超人気なアイドルのファンが、そのアイドルと話す機会があり、話している時に商品が勧められた、に近いかもしれません。そうするとコンバージョン率が高いことも可笑しくないはずです。
2.ライブコマースのエコシステム
2.1ライブコマースの四つの要素
・商品提供主
・KOL/MCN
・配信プラットホーム
・ユーザー
上記要素の相互作用が長年続いた結果、2020年に目まぐるしく伸びてきたと思われます。その四つの要素のエコシステムは下記の図のように表現してみました。
まずユーザーの行動を理解しましょう。彼らの目線で考えると、まず日々使うアプリ全てにKOLが存在しています。KOLがたくさん情報を発信しているので、行動が少なからず影響を受けます。どんどんKOLの言うことを聞くようになり、ついついKOLたちが配信している広告商品も信頼して買ってしまうほどになります。
今まで文字で発信をするKOLが多かったですが、やがてライブコマースの概念が普及し、KOLたちも徐々にライブを試し始めました。結果ユーザーとコミュニケーションを取ることが、CVRに寄与することがわかり、どんどんライブの配信を強化していこうとするのです。
その流れの形成にKOL自身の進化はもちろん、KOLをサポートするMCNも必要不可欠と言われています。なぜならば、販売チャネルを拡大するには、ライブ配信の「生産能力」を上げなければいけない、MCNは生産能力を向上させる「工場」です。2020年の予測データですが、MCNが28,000社も超えるだそうです。
*「2015-2020年MCN数の推移」iimediaデータセンター
一方、プラットホーム側の成長やライブ配信に提供するサポートも大事だと考えています。プラットホームの思惑は収益の創造にほかならないです。中国でうまく行っていないパフォーマンス広告より、ライブコマースみたいに人が介在して販売量をコミットしてもらえる広告の手法は当然ウケが良いので、強化したくなるのです。
当初ライブコマースが人介在式販売方法の一つに過ぎないと思われていたが、、現在は圧倒的な利便性を提供しているとわかっているため、ユーザーもプラットホームも支持します。
まとめると、ユーザーの情報収集の行動変容によりマーケティングのチャネルも拡大してきました。それぞれのマーケティングを占領するためにたくさんなKOLが出てきて、KOLを束ねる専門会社が出現しました。同時に業界の生産能力も大いに向上されました。その上、ライブコマースは一番効率の良い販売経路だと認識され始め、総合的な変化よってライブコマースは今のように著しく成長してきました。
3.日本は同じくライブ配信が普及するだろうか
前文を踏まえ、ライブコマースの普及にはいくつかの条件があるように思います。
・スマホが普及し、ユーザーはオンラインでモノを買う習慣があること
・ライブ配信がユーザー生活に浸透し、ユーザーが見る&配信するに抵抗感が少ないこと
・インフルエンサーがサプライヤーにとって魅力的な販売チャネルであること
もちろん日本でもスマホが普及し、EC化率はどんどん高くなっていっているのですが、ライブ配信がまだ広く支持されるサービスになっていません。
仮説ですが、日本の配信者にとって三つの壁が存在すると思います。
①顔出しで配信するのは恥ずかしい
②隣人に言われたら恥ずかしい
③会社に特定されたら面倒臭い
さらに今影響力のあるインフルエンサーがまだ少ないので、販売側にとってYoutubeのような成熟チャネルが魅力的に見えて、ライブでコマースハックしようとしないです。
4、知られていないライブコマースの闇
ライブコマースは必ずしも明るい一面だけ存在しているとは限りません。実は裏で以下のようなシステムもあるといわれています。少しファクト足りない部分はありますが、今過剰なバブルが生じていることを含めて考慮すると、多少推論でも肌感にあっていると考えます。
■データ水増し
よく見かける手口のひとつです。
まず、「データクリエーター」という人たちが存在しています。彼らが数百台の携帯端末を保有し、特殊な機械を使って同時に操作します。そして、彼らはオーダーによって指定のチャネルに入り、コメントしたり、バーチャルギフトあげたりをします。そうすると本来人気がない配信チャネルも一瞬で賑やかになり、まるで人気チャネルのように映えます。
大体商品の提供者がフォロワー数、エンゲージ数を見て広告投入するか否かを検討するので、上記のような配信者と遭遇すると、無駄に捏造されているデータに広告費を払ってしまうことになります。一回の配信広告費はおよそ40万円がかかるだそうです。
*水増しデータの「購買」価格 参考1
*コントロールセンターの様子 参考2
■返品詐欺
だんだん視聴者数が多いだけでは売り上げは向上しないのが商品提供者わかってきて、商品提供主は販売額保証(ノルマ)を課します。そして、MCNが販売額保証の広告プランを打ち出します。一定額を満たすとGMV10%前後の手数料+広告費を徴収します。しかし、ここにも大きな罠があります。
例えば、データクリエーターはライブ配信中にすぐ保証額の100万円分を買います。買った後量を商品提供側が気づかないほどの量で分けて50%の商品を返品します。従来ライブコマースのオーダーキャンセル率も高いため、嗅覚がそこまで良くない中小の商品提供主は全く感じ取れません。
そうすると、ライブ中の100万円の販売額は達成できたので、10万円は支払われます。そして100万円分の50万円分は返品したので、残り50万円分の商品が自分のところに届きます。次に手に届いた商品をまた二次流通させて、80%ほどの金額を回収します。結果、10万円+40万円+広告費収入がもらえるので、全く人気のないチャネルも簡単に儲かってしまいます。
■ロングテール詐欺
まあひどいキャンセル率が騙されるサインだって徐々に業界内に知られ始めるので、MCNにどんどん厳しく条件をつけるようになります。ですが、MCNはさらに狡猾な詐欺手段を作り出しました。
一部のMCNは巨大なスペースを借りて、無数な配信ルームをパーテーションで区切ります。低い賃金でたくさんの女性を雇い、一人ずつすでにフォロワー数が数十万人を超えるアカウントを配布します。中小な商品提供主を狙って「うちのライブコマース広告はものすごい安いけど、やってる」と営業をかけます。ただし、低単価なので、GMVは保証しません。そうするとやはり低単価に魅了される広告主も出てきます。MCNはそうやってたくさんの中小店舗主を引きつけてます。
一方、MCNはライブ中に商品の露出を1〜3minにコントロールし、一回の配信を数十個の商品を販売するような売り方をします。効果を保証しないから数を稼げるので、全体の広告収入は結構大きいです。広告主にとって効果は微々たるものだが、払っている金額は少ないからいいやと思う人が少なからずいます。
SEOで言うと、いっぱいロングテールのキーワードを拾って流入を生み出す戦略になります。
■サンプル詐欺
一部MCNが商品提供主に対して優位な場合、色々と商品提供者に言いつけることができます。例えば「ライブ配信する前に商品をチェックする必要がある」とか「商品の品質をテストしたい」とか「複数のKOLが配信したい」とかと言い訳をし、大量なサンプルを要求します。狙われるサンプルはほとんど高価な商品になります。商品提供者は弱者の立場なので、サンプルの提供を断ることができません。
だがサンプルを手に入れた瞬間MCNが「テストした結果、商品の品質が基準満たせませんでした」とライブで配信することを拒否します。もちろん商品は全部テストしたから返すこともしません。また同じやり方ですが、二次流通市場で商品を値引売りして収益を出します。
ライブコマースは輝かしい一面の裏には相当泥深いわけで、一方間違えると期待と程遠い結果になり得ます。そしてこの裏一面も過競争している市場やまだ整っていないビジネスのモラルインフラに起因していると思われます。
言いたいのは、ビジネスの映えだけを追求するとか、トレンドに追うとは決してしてはいけません。やるにしてもまずは状況を360度で観察し、リスクや真実を見極めなければいけないということです。
ただでも新しい販売方法の様式は盛大に挑戦すべきだし、歓迎もすべきであると思っています。その光や闇を両方鑑みた上で挑戦していただければと思います。
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拙い文章を最後まで読んでいただきありがとうございました。この文章はライブコマースの過度繁栄に疑問を覚える起業家たちに判断材料提供できたらと思っております。
ライブコマースといった話題となっているソーシャルECの事例をYJキャピタルのイベントでご紹介します。ご興味ある方はぜひご参加ください。
https://twitter.com/mishimayutoufu/status/1267782628532346880?s=20
よければついでにtwitterもフォローお願いします。@Luke Lee
参考リンク
1、ライブコマースのデータ捏造:[http://it.people.com.cn/n1/2016/0617/c1009-28453735.html]
2、データ量産の犯罪バリューチェーン:[https://m.yicai.com/news/100296946.html]
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