#128 借地借家法(難しいことは僕もよくわかりません!)-⑬
一昨日のブログ(こちら)の続きです。
昨日はコロナウイルスについて少し書きましたが,今日から通常営業です。好きなことを好きなように好きなだけ書いていきます。
で,一昨日のブログは,借地借家法の「正当事由」について触れたところで終わっていました。土地ではなく建物の賃貸借契約を念頭に置くと,建物の賃貸借契約では,一応,契約期間=建物を借りる期間というのが契約書には書かれていますが,その期間が終了したとしても,自動的に契約が終了して立ち退かなきゃいけないのではなく,契約期間が終了しても,無期限の賃貸借契約に更新されるのです。
なお,世の中には「定期借家」といって,契約期間が終了すると同時に,本当に立ち退かなきゃいけないのもあります。とはいえ,「定期借家」という題名にしとけばいいわけではなく,大家さんが定期借家で貸したい場合には,契約に先立って,契約書とは別に,「この契約は期間終了によって立ち退かなきゃいけませんよ」と書かれた紙を,借主に渡しとかなきゃいけません。こういう説明書きの紙を渡していなかった場合,その契約は,どれだけきちんと「定期借家」と契約書に書かれていたとしても,法律上は「定期借家」にならず,その結果,契約期間が終了しても,引き続きその部屋に住むことができます。
定期借家の説明はこれくらいにしておいて,定期借家じゃない建物賃貸借契約の話に戻ります。
(わざわざ言うことでもないかもしれませんが,「借家」と「建物賃貸借契約」は同じ意味です。そのため,「建物賃貸借契約」の中には,「定期借家」と「定期借家じゃない建物賃貸借契約」の2つがあります。)
これまでの説明だと,建物(部屋)を貸している大家さんとしては,いつまでも部屋を貸し続けなきゃいけないことになりそうですよね。せっかく契約期間を設定したのに,その期間を経過してしまえば,法律上,無期限になってしまうからです。無期限になったら,なお一層,部屋を返してもらうのが難しくなりそうです。
(大家さんとしては,期限までに必ず返してほしいのなら,全部「定期借家」にしてしまえばいいんじゃないの?という疑問が浮かぶ方もいるかもしれません。しかし,借りる立場になってみてください。人生,何が起こるかわからないのに,契約期間が過ぎたら必ず返さなくちゃいけないという約束は,なかなか難しくはありませんか?しかも,その部屋は,自分が生活するために借りているわけで,その部屋を失ってしまうと,同時に生活の中心を失ってしまうことになります。そのため,なかなか「期限までに必ず返す!」という約束はしづらく,結果的に,定期借家で借り手を募集しても集まりにくいのです。借り手が集まりにくいと,当然,需要と供給の関係から,家賃を安くするしかなくなります。このように,定期借家だと,借り手が集まりにくいので,家賃が下がってしまうのです。家賃が下がるということは,収益性が落ちることにつながります。そうすると,大家さんにとってもデメリットとなってしまうので,大家さんとしても,定期借家で充分な収益が見込めればいいですが,そうじゃない限り,なかなか定期借家で建物を貸し出すという判断はしづらいのです。定期借家で充分な収益が見込まれるとしても,その場合,定期借家じゃないなら,もっと大きな収益が見込まれるわけで,そうなると,やっぱり定期借家という判断はしづらいような気もします。)
話を戻しますが,
契約期間が終了すると無期限になってしまうのであれば,大家さんとしては,是が非でも契約期間が過ぎる前に返してもらいたいと思うでしょう。でも,ここで立ちはだかるのが「正当事由」というやつなんです。この「正当事由」というやつがない限り,大家さんが「契約期間が過ぎたら返してもらいますよ!」といくら言っても,返してもらえないんです。借主の立場から言えば,契約期間が終了する前に大家さんから「契約期間が過ぎたら返してくださいよ!」と言われても,「正当事由」がない限り,立ち退く必要はないのです。
これが,契約期間が終わる場面の話です。「契約期間が過ぎたら返してもらいますよ!」という大家さんの発言は,「更新拒絶」と呼ばれます。その言葉通りの意味です。建物賃貸借の契約期間が終わろうとしているときに,その契約更新を拒絶することが「更新拒絶」です。
じゃあ,契約期間が過ぎ去って,契約が無期限になった後はどうなるのでしょうか。もちろん,借りている側から,「この建物返しますよ」と言えば,返すことができます。大家さんが,返すのを拒否することはできません。民法では,「この建物返しますよ」と言ってから3ヶ月は契約が続く(つまり,3ヶ月は家賃を支払い続けなきゃいけない)となっていますが,契約によっては,この期間が1ヶ月だったりします。
話を戻します。契約が無期限になった後,大家さんが建物を返してもらう方法です。この場合も,更新拒絶と同じように,「正当事由」が必要になります。つまり,大家さんが,契約期間が終了した後に,その建物を返してほしくても,「正当事由」がない限り,返してもらえません。
もちろん,大家さんの「返して」というお願いを借主が「いいですよ」と承諾してくれれば,それで返してもらえます。
しかし,借主が拒否することもあります。そりゃそうですよね。借主はそこに住んでいるわけですから。自分の都合で引っ越すならまだしも,大家さんの都合で自分の住処を奪われちゃ困ります。
そういう風に,借主が建物を返すことを頑なに拒否することもあるのです。それでもなお返してほしいと,大家さんが思ったときに必要になるのが「正当事由」なんですね。
じゃあ,「正当事由」って何だよ?ということになりますが,これまた,まあ,簡単な説明ができないのです。条文にはいろいろと要素が書いてあるのですが,それをここで書き連ねても意味がありません。
具体的な場面を思い浮かべるのが大事だと思うのですが,よくあるのが「老朽化」ですね。つまり,「この建物は老朽化しているから正当事由あるでしょ?」という大家さんの主張です。「老朽化して建て替えを考えているから,出ていってくれませんか?」というのは,よくある話です。
でも,正直なところ,老朽化だけで「正当事由」が認められるのは,ほとんどないでしょうね。僕も一度調べましたが,老朽化で正当事由を認めるようなのって,もう,古すぎて住むこと自体が危険な建物の場合です。
建ててからずいぶんと時間が経過して(この時間経過を「ずいぶん」と評価できるかどうかは,その建物が木造が鉄筋かだとか,他にも,その建物が建っている場所の気候(塩害があるかなど)によっても違ってきます),もうボロボロで,ちょっとした地震でも崩れてしまう危険性があり,その修繕も,ほとんど不可能だったり,もしくは,建物を建て替えるくらいの費用がかかってしまったり,そういった,もはや,普通だったら誰も住まないような建物に,意地になって誰かが残っているような場合であれば,「老朽化」一本で勝負できることもあるっちゃあります。
しかし,例えば,昭和45年築(今から50年前)のマンションを考えてみましょう。当然,こんな古いマンションなら,間取りや水回りが古臭ーくなってますから,壁紙は新しくできるかもしれませんが,どうしても古臭さがとれず,家賃は安くせざるを得ないでしょう。また,外壁や水道管の老朽化が進めば,修繕も必要になってきます。すると,大家さんとしては,古くて家賃も下がり,なおかつ,修理費用もかさむような建物は今すぐにでもピカピカのマンションに建て替えて,たくさん家賃収入を得たいと考えるでしょう。そのため,大家さんとしては,住民全員に立ち退きを求めることができて当然と思うかもしれません。
でも,いくら築50年のマンションとはいえ,老朽化だけを理由に立ち退きを求めるのは,かなり厳しいです。このマンションも,耐震偽装事件のように,構造上耐震性能が欠けているならまだしも,特に地震の被害などを受けていないのであれば,耐震性能はキープされているはずです。また,建築基準法の改正により,耐震基準は厳しくなっていますが,このマンションを建てた時点での基準をクリアしているのなら,このマンションを建てたこと自体が違法なわけではないですし,改めて耐震性能を検査した結果,大きくダウンしていないのであれば,耐震性能が欠けているとはいえないでしょう。仮に,耐震性能に少し問題があったとしても,修理すれば改善されるのであれば,修理する方法もあるわけですから(というか,大家さんには,建物を修理する義務が課せられています),「建て替えが必要」とは言いにくいです。
水回りや間取りの古臭さも,使うのに問題はないし,また,壊れたとしても,修理すればまた使えるようになります。
裁判をやると,こういった反論が借主側から出てきて,裁判所も,借地借家法が借主に有利な法律なので,借主有利な判断をする傾向にあります。
とはいえ,大家さん有利の判断,つまり,立ち退きを認める判断をすることもあるのです。↑に書いたような,ボロボロすぎて住むのも危険な建物じゃなくても,立ち退きを認めた例もあります。
こういった例を調べた結果,僕が着目するべきと思ったのは,
①大家さん側の事情(立ち退きを求めることがどれくらい必要なことなのか,また,立ち退きが済んだ後に待ち受ける建て替えなどのプランがどれくらい具体的に練られているのか)
②借主側の事情(立ち退きを求められた場合に,借主が被る不利益はどれくらい大きいのか。借主が,その建物以外へ引っ越すことはできないのか。)
③借主が被る不利益は,大家さんから立退料をもらうことで,回避することができないか。
こういった3つの視点です。
今日は時間がきましたので,ここまでにします。
明日は,この3つについて説明していこうと思います。
それではまた明日
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