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#426 おもしろい条文を条文を発見しました:保証契約の取消し-1

【 自己紹介 】

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【 今日のトピック:保証契約の取消し 】

今日は,ちょっとおもしろい条文を発見しましたので,少し自分なりに分析してみようと思います。「保証人」に関する条文です。

さて,「保証人」って,こわい響きですよね。

「保証人」には,かなりネガティブなイメージがあります。

吉本新喜劇でも,「保証人になって借金背負わされたんや・・・」というセリフは十八番(おはこ)です。「不渡手形」と同じくらい,吉本新喜劇で頻繁に出てきます(笑)。

「不渡手形」「保証人」「借金」

よく意味はわからないけれど,ネガティブなイメージを持つ言葉たち。

今日は,その中から「保証人」について話をします。「保証人」との絡みで「借金」についても話します。

「保証人」って,何かというと,保証契約を結んだ人のことです。

「保証契約」とは,「自分では負担していない債務を,本来返済するべき人に代わって支払います」という契約です。

借入れの場面で説明してみます。

銀行から,ある人がお金を借りようとしています。お金を借りる人は「借主」で,保証人との関係では「主債務者(しゅさいむしゃ)」なんて呼ばれたりします。

借主=主債務者は,銀行からお金を借りたら,当然ながら,そのお金を使うことができます。

借りたお金を自由に使っていい,というのが,「借金」というやつです。

「借金」には,ハチャメチャにネガティブなイメージがついていますが,借りたお金を「使っていい」のも,「借金」の大事な性質です。

「借金」は,借りたお金を「使っていい」し,約束した返済期限までは「返済しなくてもいい」のです。

ここだけ聞くと結構良さそうなんですが,ただ,「借金」は,受け取った金額より高い金額を返済しなければいけません。

いったんお金を受け取ったら,そのお金を,返済期限までに「増やして」返す。

それが「借金」です。

さて,「借金」の話をしすぎてしまいましたが,「保証人」の話に戻ります。

「保証人」は,「借主(主債務者)」とは違って,借りたお金を受け取ることはありません。

でも,お金を受け取った借主(主債務者)が,約束どおり返済してくれなければ,身銭を切って銀行に返済する必要があります。

もちろん,保証人は,後日,主債務者に対して,自分が返済した分を返してもらうことができますが,銀行への返済資金も用意できない人ですから,保証人にだって返してくれないでしょう。

そもそも,日本の「保証契約」は,ほぼ100%「連帯保証契約」なので,主債務者が約束どおり返済しているかどうかにかかわらず,銀行が返済を要求してきたら,それを拒むことはできません。

保証人としては,「僕に言う前に借主(主債務者)のほうに言ってくれよ」と言いたいでしょうし,銀行としても,借主(主債務者)がきちんと返済を続けている場合であれば,あえて保証人に返済を求めることはまずないと思います。

しかし,法的には,銀行は,借主(主債務者)がきちんと毎月返済していても,保証人に対して返済を求めることができ,保証人は返済を拒めません。

こう書くと,なんか,「保証人」って,めちゃくちゃな制度に思えます。

なんでこんな制度があるんだよ・・・と呆れてしまう人もいらっしゃるかもしれません。

あえて言うまでもありませんが,「保証人」というシステムは,お金を貸す側(銀行など)にとってメリットがあります。

本来であれば,銀行は,お金を貸した相手=借主本人からしか返済を受けられないはずなのに,借主以外の誰かと「保証契約」を結べば,「保証人」からも返済を受けることができます。

もちろん,銀行が2重どりできるわけではありませんが,ただ,返済原資が,「借主だけ」から「借主+保証人」に増えるのは,銀行にとってめちゃくちゃありがたいです。

そして,「銀行にとってありがたい」というのは,実は,「借主にとってもありがたい」ことになります。

なぜなら,「保証契約を結ぶ」=「保証人をつける」のは,保証人がいなければ,借主がお金を借りられないからです。

借主としても,わざわざ自分以外の人に,保証人を頼みたくはありません。

でも,保証人をつけないとお金を借りられないから,保証人を頼みこむわけです。

もし,「保証人」というシステムが禁止されてしまうと,この借主は,お金を借りることができず,ビジネスを始めることができなかったかもしれません。

「保証人」というシステムは,お金を貸す側にとってメリットを提供することによって,お金を借りやすくする環境を生み出すことができます。

お金を借りやすくなったほうが,経済が循環し,社会がきっと豊かになる。そういう発想のもと,「保証人」という制度は,多くの被害者を生み出しながらも,禁止されることなく今日まで続いてきました。

ただ,問題は,当の「保証人」です。

この人,何のメリットもありません。

いや,本当は,保証人にもメリットがなきゃおかしいのです。

例えば,保証人になる代わりに毎月保証料を支払ってもらうとか,何かしらのメリットがなきゃ,保証人になる意味がないのです。

だって,「保証人」というシステムは,保証人が損をすることによって,貸主と借主が得をすることになっているからです。

そんなの,何のメリットもなく,引き受けるのはおかしいんです。本来は。

ただ,この日本では,何のメリットもなく保証人を引き受ける人が後を絶ちません。

合理的なメリットもないのに,「恩義」や「情」といった理由で保証人を引き受けるケースがめちゃくちゃに多いです。

それが全部「悪い」とは思いませんが,保証人を引き受ける前に,きちんと「リスク」を計算する必要があるとは思います。

それと,僕がめちゃくちゃに重要だと思っているのは,借主が保証人の代理人となって保証契約を締結できることです。

例えば,借金の契約書(金銭消費貸借契約書)と,保証契約の契約書が,1通で同じになっていること,よくあります。

そして,借主が,借金の契約書に署名押印するのと同時に,保証契約書にも署名押印しちゃう。この方法が「借主が保証人の代理人になる」ということなんですが,こんなやり方も,保証人が同意していれば,オッケーです。

保証人が事前に同意していなければ,その1通の契約書のうち,保証契約の部分は無効ですが,しかしながら,今の時代なら,携帯電話ですぐに保証人の意向を確認できます。

携帯電話で電話して,保証人から同意を得て,その場で貸主に電話を替わり,貸主にも保証人になってもいいよと伝えたら,それで完全に保証契約は成立します。

借主が,保証人に代わって署名押印しても,何ら問題ありません。きちんと,保証人本人が承諾しているからです。

ただ,保証人としては,唐突に保証人を求められても,事情がよくわかりませんよね。

きちんと「ノー」を言える人であれば,突然電話をかけられたら,「そんなの聞いてません」と突っぱねることもできるでしょうが,おそらく,借主(主債務者)も,断ることが苦手なのを熟知したうえで保証人を依頼しているのです。

「この人なら,いきなり電話すれば,断れないだろうから,きっと保証人になってくれる」なんてこと,思っているかもしれません。

他人を疑っても自分が幸せにならないので(幸せの源は誰かとの信頼関係なので),極力他人を疑うことは避けるべきなんですが,ただ,↑のように思っている人が存在するという現実から目を背けるわけにもいきません。

しかも,「保証人」って,なったところで,すぐに痛手を受けるわけじゃありません。痛手を受けるのは,借主の返済が滞った後です。いくら「連帯保証」だからといって,借主がきちんと返済を続けている最中に,保証人が返済を求められることはありません。

だから,「情」や「恩義」などの理由で,合理的なメリットもないのに保証人を引き受けてしまう人が出てきてしまいます。

そんな「保証人」制度ですが,そもそもの保証契約を否定する手段は,ありませんでした。

もちろん,民法には,契約の効力を後になって否定する制度があって,それを適用して保証契約を否定することはできました。

ウソをつかれて保証人になることを承諾してしまった(詐欺)とか,聞いていた話が真実とは違っていてそのせいで保証人になってしまった(錯誤)とか,認知症で判断能力を失っていた(意思無能力)とか,そういった主張は,保証契約を否定する場面でも使えます。

でも,今回の民法改正で,保証契約特有の「取消し」が新設されました。

保証契約とは,あくまで,保証人が「貸主」と結ぶ契約なので,主債務者は部外者なのですが,ただ,保証人が貸主と保証契約を結ぶのに先立ち,主債務者が,保証人候補者に対して,「情報を提供する義務」があることを明記し,その「情報提供義務」に主債務者が違反した場合に,保証人が保証契約の取り消すことができる,という条文が新しく作られました。

これだけの記載だと,かなり画期的な条文に思えますが,ここに書いた以外にもいろいろと要件があって,一筋縄ではいかなそうです。

詳しいことは明日書きますが,この条文を前提にすると,主債務者が返済できずに保証人が返済を求められた場合,弁護士としては,これまでは破産などの債務整理を提案していましたが,そもそもの保証契約の取消しを検討する必要が出てくる気がします。

保証契約の取消しを知らないまま,安易に,破産などの債務整理による処理を提案してしまうと,破産を回避できたのに破産させてしまったとして弁護過誤となってしまう可能性がありそうです。

今日はこれくらいにします。

それではまた明日!・・・↓

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