#74 住宅ローンとか担保とか
ああ!
タイトル見て「借金悪いっていう話でしょ」と思ったそこのあなた!
そういう簡単な話じゃありません。
というか,借金が「良い」とか「悪い」とか,簡単に決められるもんじゃない。
世の中を「良い」と「悪い」で分けられたら,それほどわかりやすい話はありませんが,残念ながら,現実はそんなに簡単にできていません。
誰かにとって良いものも他の誰かにとっては悪いなんてことは
よくある話です。
だからこそ,自分で考えてみることが大事です。
世の中を「良い」と「悪い」で見ようとするのは,マスコミのよくある手口ですよ。
そうやって善悪二元論のストーリー仕立てにしたほうが,わかりやすくて視聴率とれますからね。
(まあ,そういうわかりやすいものが視聴率とれてしまうところが,結局悪いのであって,究極的には,世の中をわかりやすいようにしか見ようとしない,視聴者側に問題があるとは思うのですが。とかいう僕も,あんまり小難しいことは好きじゃないし,なるべく世の中をわかりやすく見たいとは思っています。でも,世の中が簡単にできていないので,一生懸命考えているわけです。人生をどうやって生きたほうがいいのか。どうやって生きていきたいのか。これまで考えてこなかった分,考えています。)
ちょっと前置きが長くなりましたが,今日は,タイトルのとおり,住宅ローンとか担保とかについて,僕が考えていることをお話します。
(これまで,ブログを書いていると夜遅くなってしまっていたので,今日からは夜10時で書くのをやめようと思っていますので,尻切れトンボになったらご容赦ください。)
住宅ローンを組んで,家族で住むための土地と建物を買う
まあ,よくあることですね。「マイホームを買う」っていうやつです。
マイホームは,人生で一番大きな買い物とも言われたりしますし,実際に,金額で見たら,人生で一番大きな買い物になる人が多いと思います。
マイホームを買うために,住宅ローンを組む人も多いかと思います。
「住宅ローンを組む」という言い方,なんか濁しているような気がしませんか?
なんか,結局何をしているのかわからないように,うまく隠されているような感じもあります。
実際のところ,「住宅ローンを組む」とどうなるんでしょうか。
そもそも,住宅ローンとは,土地と建物を買うためのお金を銀行から借りることを言います。
だから「住宅ローン」と言われるわけですね。
「住宅」を買うための代金を用意するためにお金を借りる(=「ローン」)ことなので,「住宅ローン」と命名されているわけです。
普通,お金を借りたら,借りたお金って,自分の手元に入ってきますよね。預金口座に振り込まれたり,現金を手渡してもらったりして。
当たり前の話ですが(笑)
お金がほしくてお金を借りているのに,お金が手元に入ってこなかったら怒っちゃいますよね(笑)
でも,住宅ローンの場合って,お金を借りているのに,手元にはお金残りません。
1円も残りません。
これって,どういうことかというと,①建物が既に存在している場合と②建物をこれから作る場合に分けて説明しますね。
①建物が既に存在している場合
既に建物が存在していて,その建物を土地ごと買う場合ってよくありますよね。建売住宅や中古物件を購入する場合です。
この場合,建物と土地を持っている人=売主に対して,お金を払わないと土地と建物は手に入らないわけです。建物と土地を持っている売主が納得する金額を用意して,それだけのお金を支払わないと,買主はその土地と建物は手に入れることはできない。
その,売主に対して払うお金を用意するために借金するのが,住宅ローンなわけなのです。住宅ローンは,借金するのはそのとおりなんですが,借金して手元に入ってくるはずのお金は,直接売主のところへいっちゃうのです。
どういうことかというと,まず,事前に日程を調整して,売主と買主が,買主にお金を貸してくれる銀行=買主が住宅ローンを組む銀行の支店に集合します。その集合した場で,銀行が,直接売主の銀行口座にお金を振り込みます。この振り込みは,直接売主の口座に振り込んではいるのですが,厳密に言えば,「買主にお金を貸す」→「買主が売主に代金を払う」ということになります。
このようにして,銀行からお金を借りながらも,1円も手元に入ってこないという現象が起こるのです。
②これから建物をつくるという場合
この場合(いわゆる「注文住宅」と言われるものですが),住宅=「土地と建物」を手に入れるには,㋐土地を買うこと,㋑その土地の上に建物を建てること,が必要になってきます。㋐土地を買うことについては,①と同じように,銀行で売主さんの口座に直接お金が振り込まれるので,お金は買主=借主の手元に入ってきません。
㋑その土地の上に建物を建てることについても,銀行がハウスメーカーに直接お金=建築代金を払うので,お金が手元に入ってきません。通常,建築代金は,着工時・中間・引渡時の3段階で支払うことが多いですが,各段階で払うお金も,銀行から直接ハウスメーカーに払われます。
どうして,こんなことになっているのでしょうか。
「買うためのお金を借りているんだから,借りたお金を売主やハウスメーカーにきちんと払うのは当たり前でしょ?わざわざ銀行が直接払う必要はないんじゃないの?」
という疑問が浮かぶ方もいるかもしれません。
でも,そうじゃないんですね。
確かに,銀行にとっては,買主にお金を渡そうが,売主に直接お金を渡そうが,出ていくお金の金額は同じです。
でも,直接払わなきゃいけないんですよ。
それは,「担保」です。「抵当権」といってもいいかもしれません。
「担保(たんぽ)」や「抵当権(ていとうけん)」は少し難しい言葉ですが,ゆっくり説明していきますね。
「担保」という言葉は聞いたことがある方も多いと思います。
「この壺を借金の担保に持っていくからな」とかいうセリフを聞いたことがある方もいませんか?(いないか・・・)
「担保」というのは,本当にざっくり言ってしまえば,借金を返せなくなった時に,担保にしておいた財産を売却して,その売却代金を借金の返済にあてることができるということです。
↑の壺の例で言えば,借金の担保として持っていった壺がありますが,これはつまり,壺の持ち主に借金があるわけですね。その持ち主が,借金の貸主に対して,壺を事前に渡しておくわけです。もちろん,借金を全額返済すれば,壺は返してもらえるのですが,借金が返済できなかった場合,貸主は,壺を売却して,売却代金を,返済にあてることができるわけです(もちろん,売却代金額が借金の残り額よりも多ければ,借金の返済に充てた残りのお金は,借主に返す必要はありますが。)
普通,お金を貸す人としては,担保がほしいのです。
だって,借主がお金が返せなくなったときに=貸付金を回収できなくなったときに(借主からお金を返してもらうことを貸主からみて「回収する」といいます。一般的に,誰かに対してお金を払ってもらう権利のある人(例えば,お金を貸していたり,何か物を売ってその代金をまだ払ってもらっていなかったりする人です。)が,その誰かから実際にお金を払ってもらうことを「回収する」と呼びます。「貸付金を回収する」,「売掛金を回収できてよかった」などと使います。),担保にとっておいた財産を売却して,それを返済に充てられるほうが,回収できないというリスクを回避することができるからです。
住宅ローンを貸す銀行もそうです。
担保をとりたい。
貸すだけだと,不安なわけです。
回収できないリスクがあるからです。
「何か担保はないかなぁ」
「あ!ちょうどいいのがある。土地と建物だ!」
そうなんです。
土地と建物を買うお金を貸しているわけなので,当然ながら,借主の手元には土地と建物が残っていますから,これを担保にしちゃえばいいのです。
そして,土地と建物を担保とするのが「抵当権」と呼ばれるものです。
「土地と建物に抵当権をつける」とか「土地と建物に抵当が入っている」とか聞いたことある方もいるかもしれませんが,これは,「土地と建物が借金の担保にとられている」という意味です。
つまり,「抵当権」があると,借金=住宅ローンが返せなくなった場合に,土地と建物を売却して,売却代金が借金の返済に充てられるということです。
「土地と建物が売却される」
なかなかこわいワードですね(笑)
住んでいる土地と建物が売却されるなんて,なかなか恐ろしい。
ただ,銀行は,この「抵当権」がほしいわけです。
というか,買った土地と建物に抵当権をつけさせてくれないと,銀行はお金貸してくれません。
だから,住宅ローンは,抵当権がセットです。
「住宅ローンを返済できなければ,今あなたが住んでいる土地と建物を売って,その売却代金を返済に充てますよ。それがイヤならお金貸しませんよ。」というのが住宅ローンで,それを承諾して,みなさん,お金を借りているわけですね。
そういう内容で住宅ローンを組んでいるわけです。
で,「抵当権」をつけたいから,銀行は,貸したお金を借主に渡すのではなく,直接売主やハウスメーカーに振り込むわけです。
これ,どういうことかというと,「抵当権」というのは,不動産登記がいるんですね。
不動産登記には,表題部と甲区と乙区という3つの欄があります。
ああ!甲とか乙に拒絶反応示さないでください!
甲とか乙に意味はありません。別に「A欄」「B欄」でも良かったのですが,甲区・乙区という名称になっただけの話です。
表題部は,その土地や建物の説明が書いてあります。土地だったら,所在地や面積が書いてあって,建物だったら,所在地や階数・床面積が書いてあります。
甲区は,所有権の欄で,現在その土地や建物を誰が持っているのか,つまり,持ち主の氏名や住所が書いてあります。
そして,乙区が担保の欄なのです。抵当権がついたら,この「乙区」に記載されるわけです。
銀行は,乙区に抵当権の記載がほしいわけです。
なぜなら,乙区に記載しないと,記載しないうちに他の人に売られてしまった場合,せっかくの抵当権なのに,それを主張できなくなってしまうからです。
主張できなくなるというのは,その土地や建物を売って売却代金にあてるということができなくなるということです。それじゃあ,担保の意味がなくなってしまいますよね。
だから,なんとしても,乙区に抵当権を記載したい。
でも,それには,持ち主の承諾が必要なわけです。
当たり前ですよね。持ち主の承諾を得ずに,抵当権を乙区に記載できるはずがない。
だって,抵当権を乙区に記載するということは,借金が返済できなかった場合はその土地や建物を売却していいという意味ですからね。
そんなことを意味する抵当権の記載を,持ち主に無断でできるはずがない。
だから,抵当権を記載するには,持ち主の承諾が必要なわけです。
ただ,ここで問題が発生します。
抵当権を乙区に記載するときに,それを承諾する「持ち主」は,当然,銀行がお金を貸す人=土地や建物を買った人ですよね。
その人に貸すからこそ,その人が持っている土地や建物に抵当権をつけたいわけです。
でも,この土地や建物を買う人は,売主にお金を払わないと土地や建物を手に入れられませんよね。
でも,その払うためのお金は,銀行にあるわけです。
・・・あれ?
銀行は,抵当権を乙区に記載してくれないとお金を貸さない
でも,先にお金を貸してくれないと,土地や建物が手に入らないから,抵当権を乙区に記載するために必要な「持ち主による承諾」ができない・・・
これって,無限ループじゃないか?
先にお金を貸してくれないと抵当権を乙区に記載できないのに,抵当権を乙区に記載することがお金を貸す条件になっている・・・?
お金を貸さないと満たせない条件がお金を貸す条件になっていないか?
それって,お金を貸すための条件が永遠に満たされないのでは???
なんだかこんがらがってしまったかもしれませんが,この問題は解決されています。
どうやって解決されているかというと,
さっき,売主と買主が銀行に集合すると説明しましたよね?
売主と買主が銀行に集合して,銀行が直接売主に代金を払うという話です。
これを俗に「決済」と呼ぶのですが,このとき,お金を払うだけじゃなくて,さっきの無限ループを解決するために,もう1つ大事なことが行われています。
さっきの無限ループをもう一度おさらいすると,
・銀行は抵当権が記載されないとお金貸したくない
・でも銀行からお金を借りて売主に払わないと買主が土地と建物を手に入れることができず(=土地と建物の持ち主になることができない),その結果,抵当権の記載に必要な「持ち主の承諾」ができない
これが無限ループの正体です。
でも,よくよく考えると,銀行としては,「抵当権が記載されないうちにお金を貸したとしても,その貸したお金で土地と建物を手に入れた買主=借主が,確実に抵当権の記載を承諾してくれる」のであれば,抵当権が記載されないうちにお金を貸してもよいはずです。
そうですよね?
買主が確実に抵当権の記載を承諾してくれるのであれば,お金を貸していいはずです。
だって,確実に土地や建物を担保にとれる=抵当権をつけられるからです。
だから,どうなっているかというと,↑の銀行で集合した場に,司法書士を同席させます。この司法書士が,抵当権の記載を法務局に申請するわけですが,この司法書士に,買主が抵当権の記載を承諾するという内容の書面を,買主からあらかじめ渡しておきます。そうすれば,後から「やっぱり抵当権が記載されなかった!」という事態が防げるので,銀行も,抵当権の記載は現実にはなされていないけれども,安心してお金を貸すことができるようになるわけです。
これって,結局,銀行がお金を買主に渡すのではなく,売主に直接振り込むことにも関係してきます。
「持ち主の承諾」が確実になればいいのなら,別に売主に直接振り込むんじゃなくて,銀行から買主にお金渡してもいいんじゃない?だって,銀行がお金を買主に渡すときに,あらかじめ「持ち主の承諾」の書面をもらっておけばいいんじゃないの?
だから,わざわざ売主と買主と司法書士が銀行に集合する必要はないんじゃないの?
とも思われるかもしれません。
でも,そうじゃないんですよね。
なぜなら,「持ち主の承諾」は,買主が「持ち主」になることも確実になっていなきゃいけないからです。
しかし,買主が「持ち主」になるのは,あくまで,購入代金を全額払った後です。
だから,仮に,銀行が売主に直接お金を払うのではなく,買主にお金を渡し,その際に「持ち主の承諾」書をもらっていたとしても,本当に「持ち主」になってくれるかわからないから(お金を購入代金に使ってくれるかわからないから),安心できないんですよね。
これを防ぐために,またもや司法書士が必要なんです。同席した司法書士は,さっき説明した「持ち主の承諾」をするだけではありません。売主から買主への名義変更(いわば「持ち主の変更」)もやるわけです(その変更に必要な,売主の印鑑証明書と実印の押された申請書類も,司法書士は準備しています。だから,厳密に言えば,売主は同席する必要はありません。司法書士に↑の書類を渡していれば。))。
その結果,「買主が持ち主になるかわからない」という↑のリスクもなくなるわけです。買主が持ち主になることも,確実になるからです。
仮に,買主にお金を渡した場合,買主は,そのお金を使って,土地と建物を手に入れることができますよね。
その後,買主=借主は,銀行との間では,抵当権を記載する約束になっていたわけですから,抵当権を記載することを承諾しなければなりません。
でも,本当に承諾してくれるかどうかってわかりませんよね。
いくら,契約上,承諾が必要になっているとはいえ,お金を渡した後に実際に承諾してくれるかどうかはわからないわけです。
もっと言ってしまえば,その買主が,銀行から受け取ったお金を不動産を買うためのお金に使わないかもしれません。ギャンブルとかに使ってしまって,全部なくなってしまうかもしれない。これが,さっき説明した「本当に持ち主になってくれるかどうかわからない」というリスクです。
そうなってしまったら,そもそも不動産を手に入れていないので,「持ち主の承諾」はできるはずありません。「持ち主」じゃないのだから。
こういうことで,直接買主にお金を渡さないわけです。
渡さないでおけば,そもそも不動産を買ってくれないというリスクは避けられるし,買ったはいいものの,抵当権を承諾してくれないというリスクもなくなるわけです。
その結果,銀行は,確実に,買主が買った土地と建物に抵当権をつけた上で,お金を貸すことができるわけです。
今日は,これくらいで時間切れですね(笑)
住宅ローンとか
抵当権の付け方を説明したら終わってしまいました。
明日は,住宅ローンについてどう思っているのか,僕が話したかった核心に入ろうと思います。
それではまた明日。
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