交通事故の被害にあった場合に弁護士の僕ならどうするか-11(症状固定)
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このブログでは、弁護士である僕が、もし仮に自分が紛争・トラブルの「当事者」となった場合に、「自分だったこうするだろうな」ということをお伝えしてしています。
僕自身、これまでの人生で大きな紛争・トラブルの当事者となったことがなく、今この瞬間、紛争・トラブルに直面されている方の苦しみや不安を代弁できるような立場にはないのかもしれません。
ただ、自分が紛争の当事者となった際の対処法を弁護士目線でお伝えできれば、それが、ご覧になった皆様のお役に立てるかもしれないと考えています。
あくまで、「僕だったらこうするだろうな」ということですから、ご覧になっている方々に必ずしも当てはまらないとは思いますが、僕のやり方をヒントに、自分なりに応用していただけたら、とても嬉しいです。
ご覧になっている皆様のお顔も名前も残念ながら知ることができませんが、アクセスしてくださり、ありがとうございます。本当に励みになっています。
【 今日のトピック:交通事故 】
昨日に引き続き交通事故について書いていきます。
昨日は「症状固定」について書きました。
「症状固定」とは、ケガの症状が残っているけれども、これ以上治療を続けても改善の見込みがない状態を意味します。
ちなみに、医学的に素人な僕が「症状固定」の意味について偉そうに語っていますが、「症状固定」は法律用語です。
昨日書いたように、症状固定となった後、医師に「後遺症診断書」を書いてもらうんですが、その後遺症診断書には「症状固定日」の欄があるので、症状固定となったかどうかは医師が決めそうな感じがします。
でも、裁判で症状固定日が争われた場合に、裁判官が、医師とは違う日を症状固定日として認定できます。
だから、「症状固定」という概念は、めちゃくちゃに法的なんです。
たぶん、医学的に「症状固定」って、医師もなかなか言いにくいと思うんです。「もう改善の見込みがない」なんて、治療してみなきゃわかんないですし。
症状が残っているのであれば、その後も治療する意味はあるはずで、「改善の見込みがないんだから、これ以上治療してもムダですよ」というのは、医師は言いにくい。
だから、「症状固定」って、医学的ではなく、法的な用語として、使われています。
「法的」というのは、ここでは、「常識的」と同じ意味でしょう。
これまでの治療の経過や現在の状態を踏まえると、「常識的に考えて」、これ以上治療しても改善の見込みがない。
これが「症状固定」です。
「症状固定」というのは、被害者にとっては悪い話です。
ただ、交通事故でケガを負わせたのは間違いないけれども、じゃあ、そのケガの治療費を、加害者が一生負担しなきゃいけないというのは、やっぱり、「常識的に考えて」やりすぎなんだと僕は思います。
今の現代社会は、自動車が存在することを前提に成り立っていますが、自動車が存在する限り、交通事故のリスクはゼロにできません。
だから、交通事故が起きることを前提にシステムを構築する必要があって、その際に、加害者に過度の負担(無限に続く負担)を強いると、せっかく自動車という便利なものがあるのに、誰も利用しなくなってしまいます。
それはよくないから、どこかで線を引いて、支払うお金の金額を決めなきゃいけません。
この「線引き」のために用いるのが「症状固定」です。
「症状固定」となってしまえば、それ以降の治療費を加害者は負担せず、あくまで、「後遺症が残った」という意味で賠償額が上乗せされるだけです。
そうすると、「症状固定」は、被害者と加害者のバランスをとる意味を持っているような気がします。
「症状固定」という概念を用いて、加害者の賠償責任に歯止めをかけているからこそ、安心して自動車を運転できるのです。
「症状固定」という概念がなく、治療費を一生負担しなきゃいけないということになると、損害の上限がなくなってしまい、理論上、保険料が無限大になってしまいます。
被害者本人が亡くなった後も、その相続人に対しても賠償責任を負うと考えると、いつまでも賠償は終わりません。
こんな感じで、法律の世界には、システムを維持するための線引きの役割を担っているものがいろいろとあります。
他にも、例えば、破産事件では、「自由財産」といって、売却しなくてもいい財産が認められています。
「破産」とは、財産すべてをお金に変えて、1円残らず配り歩くという手続きなんですが、本当に何から何までお金に変えてしまうと、破産した本人が暮らせなくなってしまいます。
着る洋服も「財産」ですし、手持ち現金もすべて配ってしまうと、その日の食費さえ確保できません。
本当に文字通り「身ぐるみはがされて」しまうと、生活を営むことすらできなくなってしまいます。
ここまでの仕打ちを破産した人に与えてしまうと、せっかく、人類が「お金の貸し借り」を発明したのに、誰もその利便性を享受できなくなってしまいます。
だから、「自由財産」といって、生活に必要な最低限の財産(家財道具や家電製品、普段着る洋服、99万円までの現金など)は、お金に変えずに済むようになっています。
「症状固定」も、「自由財産」も、人類の発明にひそむリスクを、被害者と加害者に適切に振り分けて、発明のメリットを享受できるようにしているんです。
さて、「症状固定」の話に戻りますが、「症状固定」が決まると、賠償額は、症状固定「前」と症状固定「後」に明確に線引されます。
症状固定「前」は、治療費、慰謝料、休業損害といった項目で損害を算定します。
症状固定「後」は、後遺症慰謝料と後遺症逸失利益が損害の項目となります。
難しい漢字が並んでいますが、もう何日か経てば、説明が登場すると思います(多分・・・)。
すみません、今日は後遺症について書く予定でしたが、またもや「症状固定」について書いてしまいました。
「症状固定」という概念は、交通事故の案件でとても重要だと僕は思っているので、かなり詳しくお話させていただきました。
今日はこの辺にします。
それではまた明日!・・・↓
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