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#358 もらいすぎても返さなくていい(相続の話)

※画像はイメージです

どうも,こんにちは。

古田博大(ふるたひろまさ)です。

このブログを初めてご覧になる方は,はじめまして。

いつもご覧くださっている皆様,いつもアクセスありがとうございます。

僕は,1990年生まれで現在30歳。2017年1月から弁護士として働き始め,ちょうど2年半が経過した2019年7月10日にうつ病を発症し,それから今日までずっと休職しています。

うつ病発症からしばらくは,眠ったり食べたりすることもままならず,生きることそのものが苦しい時期が続きましたが,長い時間をかけて少しずつ回復することができました。今は,週2日の休みをはさんで毎日出勤練習(慣らし勤務)を繰り返しながら,復職への準備を進めています。

うつ病をきっかけに「自分も何か行動したい!」と思い,2019年12月から,この毎日ブログを始めました。とはいえ,このブログでは,うつ病に関することだけでなく,日々考えたことを自由気ままに書いています。

書きたいことがたくさんあって,文章が長くなってしまうことも多いですが,ブログの負担が大きくなりすぎてうつ病に悪い影響を与えないよう,書き始めてから1時間程度でアップロードすることにしています(#ほぼ毎日時間オーバーしていることはナイショです

「書きたいがたくさんある」と「1時間でアップする」は両立が難しく,そのため,文章がつながっていなかったり,文章自体がわかりにくかったりと,弊害も多々あるんですが,どうしても「毎日ブログ」を続けたいので,毎日綱渡り状態ですが,アクセスしてくださる皆様のおかげで,今日までなんとか続けることができています(;^_^A

僕のうつ病の経過については↓でまとめています。

それでは,今日も書いてきます!

今日は法律の話です。法律の話の中でも,相続の話です。

「相続」なんて言葉,普段は使いませんよね。僕も仕事以外で「相続」なんてワード,使いません(笑)。

あまりにも不謹慎なワードですからね。

「相続」というのは,死んだ人の財産を生きている人にどのように引き継ぐかという話です。

当たり前ですが,土地や現金などの財産は三途の川を渡れません。

三途の川を渡れるのは死んだ本人だけで,生きている間に築いた財産は,三途の川を渡ることなく,全部現世に取り残されます。

※「財産は三途の川を渡れない」ということを理解するだけで解決しそうな紛争が,相続に限らず結構ある気がします。

死んだ人の財産が,三途の川を渡れないまま取り残されますが,その取り残された財産を,生きている人のうち,誰にどれだけ分配するか。それが「相続」と言われる分野です。

相続について網羅的に全部書こうとすると,それこそ一生かけても足りないくらいなので,今日は,タイトルにもあるとおり,「もらいすぎても返さなくていい」ということについて書いてみましょうか。

さて,「もらいすぎても返さなくていい」ということだけ言われても,何のことかわからないと思いますので,少し説明しますね。

「法定相続分」という言葉を聞いたことがある人は多いかもしれません。

例えば,ある男性が亡くなり,その人の相続人が妻と2人の子ども(長男と二男)の合計3人だった場合,相続人3人の「法定相続分」は,妻=50%,長男=25%,二男=25%,と表されます。

まあ,ざっくり言えば,男性が死んだことで現世に取り残された財産=遺産から,妻は50%,長男は25%,二男も25%,それぞれもらう権利がある,というのが「法定相続分」の意味するところです。

男性の遺産が合計1億円であれば,そのうち,妻は5000万円,長男は2500万円,二男も2500万円を,それぞれもらうことができ,その根拠となっているのが「法定相続分」です。

まあ,ここまでは理解しやすいです。

ここから少し難しくなります。

仮に,遺産1億円の内訳が,土地建物が5000万円,預金2500万円,上場株式2500万円だったとしましょう。そして,男性は,「土地建物は長男に相続させる」という遺言を残していたとします。

まず前提として,「相続させる」遺言の話をしなければなりません。

そもそも,遺言がない場合に,死んだ人の遺産を誰にどれくらいわけるかを決める手続きを「遺産分割」を呼びます。

「遺産分割」は,最初は話し合いです。この話し合いは「遺産分割協議」と呼ばれます。話し合いの結果(=遺産分割協議の結果),誰にどの遺産を分配するか決まったら,最終的に「遺産分割協議書」に,話し合いに参加した人=相続人全員で署名捺印(実印)します。

その遺産分割協議書を,普通は,相続人全員分作成します。相続人の頭数と同じ数だけ遺産分割協議書を作成して署名捺印し,相続人一人ひとりが1通ずつ持っておきます。そして,相続人それぞれは,自分が持っている遺産分割協議書(と相続人全員の印鑑証明書)に基づいて,死んだ人名義になっている不動産を自分の名義に変更したり,死んだ人の預金口座を解約したりします。

もちろん,自分で名義変更したり解約したりできるのは,自分が取得することになった遺産だけです。

話し合いがまとまらなければ,「遺産分割調停」を裁判所に提起します。「遺産分割調停」は,裁判所で話し合う手続きです。つまり,「遺産分割協議」の場所が裁判所(家庭裁判所)に変更されただけです。

裁判所で話し合った結果,話し合いがまとまれば,「遺産分割調停調書」が最終的に作成されます。これは,裁判所が関与した「遺産分割協議書」なんですが,↑に書いた「遺産分割協議書」と同じように,これに基づいて,名義変更や預金の解約ができます。

(遺産分割調停調書には署名捺印しないので,遺産分割調停調書で名義変更や解約したりする際は印鑑証明書は不要です)

裁判所での話し合いもまとまらなければ,最終的に「審判」といって,裁判所が遺産の分け方を強制的に決めます。不服があれば,「抗告」といって,高等裁判所に不服申立てができますが,ただ,不服申立てができるのは最高裁までです。最高裁で覆らなければ,裁判所の判断が確定します。

そんな感じで,「遺産分割」という手続きが進みます。

ざっくり言えば,遺言がないから,相続人同士の話し合いで遺産を誰にどれくらい分配するか決めなきゃいけなくって,それを決めるのが「遺産分割」です。

誰にどれくらい分配するかの基準となるのが「法定相続分」です。相続人には,それぞれ,法定相続分はもらえる権利があるわけですから,その権利の分だけ,各相続人に行き渡るように,遺産を分配します。

遺産をうまく分けることができない場合は,お金で調整することも多いです。法定相続分を超えて遺産をもらうことになった相続人は,自分が法定相続分を超えて遺産をもらったことによって,他の相続人が法定相続分に足りなくなっているわけですから,その足りない分をお金で補填するわけです。

そんな感じで,相続人全員が法定相続分を確保できるように,遺産分割は進んでいきます。

じゃあ,「相続させる」遺言がある場合はどうなるんでしょうか。

先ほどの例だと,遺産1億円のうち,不動産5000万円を長男に相続させるという遺言が残されていました。

この場合,どうなるんでしょうか。

「相続させる」遺言がどう考えられているかというと,死んだ瞬間に,遺言に書いてある財産については,遺産分割が済んだとみなされることになっています。

ちょっと難しいですね(笑)。

先ほどの例で説明すると,ある男性が「不動産は長男に相続させる」という遺言を残して死んだわけですが,そうすると,この男性が死んだ瞬間に,「不動産は長男が取得する」という遺産分割が完了したことになります。

つまり,死んだ瞬間に,長男が不動産5000万円を取得するわけです。だって,その不動産については遺産分割が済んでいるからです。

本来,「遺産分割」というのは,↑に書いたとおり,相続人全員で話し合い,話し合いがまとまらなければ,遺産分割調停を提起したりと,かなり面倒くさいです。

でも,「相続させる」遺言があれば,こんな面倒な手続きをすっ飛ばして,対象となった財産については,死んだ瞬間に遺産分割を済ませたことにできるのです。

これが,「相続させる」遺言です。「〇〇を相続させる」と書いてあれば,「〇〇」という財産は,死んだ瞬間に遺産分割が済まされちゃうんです。

だとすると,↑の例では,男性が「不動産を長男に相続させる」という遺言を残して死んだので,不動産5000万円については,死んだ瞬間に「長男が取得する」という内容で遺産分割が完了し,その結果,長男が取得します。

実際に,この長男は,法務局に「不動産を長男に相続させる」と書かれた遺言書を持っていけば,名義を変更することができます。

(なお,遺言書が公正証書遺言であれば,遺言書だけで名義を変更できますが,自筆証書遺言の場合は,遺言書の他に,裁判所の「検認調書」が必要です。法務局は,自筆証書遺言だけで名義を変更してくれません。自筆証書遺言が裁判所の検認を経て初めて,法務局は名義を変更してくれます。)

(※ただ,自筆証書遺言は後に遺言が覆される可能性があります。遺言書は,必ず公正証書遺言で残すよう僕は説明しています。公正証書遺言であれば,その遺言書が覆される可能性はまずないと言っていいからです)

話を戻します。

不動産5000万円については,「相続させる」遺言によって遺産分割が完了しますが,残りの預金2500万円と株式2500万円については,遺言の対象となっておらず,遺産分割が未了なので,↑に書いたような面倒くさい遺産分割の手続きを経て,誰にどれくらい分配するか決めなきゃいけません。

でも,ここで1つ気になることがあります。

遺産1億円のうち,長男の「法定相続分」は2500万円でしたよね?

でも,長男は不動産5000万円を取得しています。

法定相続分より2500万円も多くもらいすぎています。

もらいすぎた2500万円を,他の相続人(妻と二男)に返さなきゃいけないような気もします。

でも,そうではありません。※ここからタイトルの話が始まります

確かに,長男は,法定相続分を超えて遺産を取得していますから,残りの預金2500万円と株式2500万円を分けてもらうことはできません。

でも,もらいすぎた分を返さなきゃいけないわけじゃありません。

遺言によって法定相続分を超えてもらいすぎたとしても,それは,死んだ人の意思ですから,他の人にどうこう言われる筋合いじゃありません。

当たり前ですが,誰しも,自分の財産を,いつ,どのタイミングで誰にあげるか,自由に決めていいです。

だから,自分の財産を,自分が死んだ時に,長男にあげると決めたっていいわけです。

そうすると,財産を受け取った長男が,その財産を返さなきゃいけなくなるのはおかしいですよね。

生きている間に,自分の財産を長男にあげた場合,それを返せなんて言われる筋合いはないんですから,死んだ際にあげた場合も,同じように,あげた財産を返せと言われる筋合いじゃありません。

だから,長男は,確かに法定相続分を超えて遺産をもらっているけれども,法定相続分を超えた金額をお金で返したりとか,そういったことはしなくていいんです。

残った預金2500万円と株式2500万円は,妻と二男で分け合うことになります。

その分け方は,法定相続分に従って按分します。つまり,法定相続分の割合は,妻:二男=2:1ですから,預金2500万円と上場株式2500万円は,妻が3分の2,二男が3分の1の割合で分け合います。分け方は妻と二男で自由に決めていいです。

仮に分け方が話し合いでまとまらなければ,裁判所が決めてくれますが,その場合の分け方は,預金も上場株式も,それぞれ3分の2を妻,3分の1を二男が取得する,という形になります。

この「もらいすぎた遺産は返さなくていい」という法則は,「相続させる」遺言だけではなく,特別受益(生前贈与)の場面でも当てはまります。

仮に,↑の男性が,死んだ際に残された遺産が預金2500万円と上場株式2500万円だけだったとしましょう。

ただ,亡くなる1年前に,長男に対して不動産5000万円を生前贈与していました。

この場合も,「相続させる」遺言で長男に不動産を相続させた場合と同じ処理になります。

まず,遺産は,「預金2500万円と上場株式2500万円」とは考えず,生前贈与した不動産も含め,「不動産5000万円,預金2500万円,上場株式2500万円」の合計1億円と考えます。

生前贈与も含めた遺産のことを「みなし相続財産」と呼んだりします。

この「みなし相続財産(=1億円)」をもとに法定相続分を算出すると,相続人それぞれの法定相続分は,妻5000万円,長男2500万円,二男2500万円となります。

ただ,長男は,法定相続分を超える金額の不動産を生前贈与として受け取っているので,これ以上もらえる遺産はありません。

とはいえ,法定相続分を超えてもらい過ぎた分を返す必要はありません。「相続させる」遺言と同じです。

死んだ際に残った預金2500万円と上場株式2500万円は,妻と二男で分けることになります。分ける割合は,先ほど書いたとおり妻:二男=2:1です。

「もらいすぎた分は返さなきゃいけない」と勘違いされている人が多いですが,法定相続分を超えてもらいすぎたとしても,返さなくていいんです。

しかし,もらいすぎたせいで,他の相続人が遺留分さえも確保できなくなった場合は,お金を払わなきゃいけません。

↑の例で言えば,長男が「相続させる」遺言で,1億円の財産全部をもらった場合,自分が法定相続分を超えてもらいすぎただけでなく,妻と二男は1円ももらえませんから,遺留分さえも確保できなくなっています。

妻の遺留分は,法定相続分の半分=2500万円,二男の遺留分は,1250万円(法定相続分2500万円の半分)です。

長男がもらいすぎたせいで,妻と二男の遺留分全額が被害にあっています。

こうやって,他の相続人の遺留分が被害に遭うほどもらいすぎた場合は,お金で返さなきゃいけません。

今日の話は結構難しいですが,とはいえ,相続の場面ではかなりの頻度で問題になります。

この記事で,皆さんの理解が少しでも進んだらとても嬉しいです。

【今日のうつ病】(うつ病経過まとめ:こちら

まだまだ僕のうつ病は治っていないので,毎日うつ病の経過を記録しています。

今日までに経過した期間↓

・うつ病発症(2019年7月10日~):503日(1年4か月と14日)

・実家療養後の1人暮らし(2019年9月27日~):424日(1年1か月と27日)

・午前中の散歩(2019年11月7日~):383日(1年と17日)

・毎日ブログ(2019年12月3日~):357日(11か月と21日)

・出勤練習(2020年3月30日~):239日(7か月と25日)

今日で,出勤練習を始めて7か月と25日です。新型コロナウイルスの影響で,4月13日~5月11日までの約1か月間,一時中断されていましたが,それを差し引いても,約7か月間出勤練習を積み重ねてきました。

今日は休みでした。昨晩は就寝が遅かったですが,その分,今朝は少しだけ朝寝坊できてよかったです。

そんな今日の「SleepCycle」を見ると(睡眠記録アプリ「SleepCycle」についてはこちら),午前0時54分~朝8時5分までの睡眠が記録されています。昨晩も一昨日の晩に引き続き,寝つきは良かったです。就寝が遅く,そのせいで睡眠時間が短くなってしまう可能性がありましたが,朝8時まで眠ることができ,7時間ほどの睡眠時間を確保することができました。SleepCycle独自の睡眠品質は79%/100%でまずまずといったところです。

(なお,僕のうつ病は,主な症状が不眠(①寝つきが悪い②中途覚醒③朝早く目が覚めてしまい二度寝もできない)で,この不眠症状の有無が,その日の調子の良し悪しや,回復の進み具合を左右します。そのため,毎日の睡眠時間や睡眠の質について,睡眠記録アプリ「SleepCycle」に記録されているデータをもとに逐一書き出すことにしています。)

今日は,昼から同僚と飲み食いして遊ぶ予定です。明日も休みなので,少しだけどんちゃん騒ぎできます。

明日は,ゆっくり疲れをとろうと思います。

今日もブログ書けてよかった!

それではまた明日!・・・↓

昨日のブログ↓

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※うつ病への負担を考慮し、「書き始めてから1時間くらいでアップする」という制限時間を設けています。

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