【怖い話】公園で遊ぼう
※基本的にはTwitter実体験漫画とは別の話をnoteで記載します。
※【怖い話】タグのお話しはルドヴィカの実体験と創作と妄想をよくシャッフルしてからお届けします。フィクションかどうかはご自身で判断ください。大丈夫ですよ、きっとフィクションです。ええ。
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私は子供の頃、体の弱い子でした。
加えて、学校が終われば習い事三昧で、本当に遊ぶ暇がなく、全然友達が出来ません。
私の事情をわかってくれる子もいたのですが、いつもその子にベッタリという訳にもいきません。
ですから、体調が良く、ずっと一緒に遊びたかった子を遊びに誘ってオーケーをもらった日は、喜び勇んで出かけるのでした。
その日も、そんなふうにはしゃいで出かけた日でした。
「学校が終わったら、●●公園集合ね」
そう言われて、漕げるようになったばかりの自転車で公園に向かいました。
公園に着くと、友達が皆待っていました。
「遅いよー」
「ごめんね、何して遊ぶ?」
小学校中学年位です。
因みに、年齢がバレそうなのですが、この頃の遊びにケータイゲームはありません。
ゲームボーイが出る少し前位の話です。
しかも我が家は漫画もゲームも禁止。
遊ぶといえば、鬼ごっこかかくれんぼかごっこ遊びです。
そしてその時のリーダー各の女の子の気分次第で、ルール可変式で遊びが展開されるのでした。
この日も、そうでした。
そしてあるタイミングで、鬼ごっこをすることになりました。
範囲を、公園周辺から公園を出ても良いとして。
これは少し困りました。
母に、公園で遊ぶと言ってきていたのです。
その後にピアノの練習が控えていましたから、17時の鐘がなる前には公園の前には母がいて、17時の鐘が鳴り始める時には、家に着いているように私を引っ張っていくでしょう。
公園に居ると言ったのに、公園周辺に居なかったらどうなるかなんて、考えただけで恐ろしい。
私は反対しました。
公園の中だけにしよう。
そう言うとリーダー格の子が言いました。
「そういう事言うんだ。じゃぁルドちゃん鬼ね」
えっ、と言う間もなく「逃げろーーー!!」と友達は皆散って行きます。
私は公園でオロオロしながら、見送るしかありません。
ど、どうしよう……
もしかしたら、追いかけなかったら、戻ってくるかも……
暫くブランコに腰掛けて待っていました。
待っても、待っても。
友達は帰ってきません。
日も傾いてきてしまいました。
母が迎えに来てしまう時間です。
私は仕方なくトボトボと自転車のところまで戻りました。
と。
「ルドちゃん?どうしたの一人で」
公園の前の家に住んでる子(以降Mちゃんとします)とそのお母さんでした。
頭がよく、私と私の母に理解がある、母の御眼鏡に叶った親子。
私はホッと胸をなでおろしました。
「●●ちゃん達と遊んでたんだけど、皆公園の外出て行っちゃって……私、もう帰らないといけないから、困ってたの」
「えっ、じゃぁずっと公園いたんだ?気付かなかった……」
「●●ちゃんね、見かけたら言っといてあげるわ」
「ありがとうございます」
お礼を言って踵を返すと、道向こうから腕を組んだ母がこちらに歩いてきているのが見えました。
なんとか、時間には間に合ったようです。
私はそのまま自宅に戻りました。
「自転車で来ていたの。なら私が家に戻るまでに家の前で待ってられるわね」と言われたので、駐車場まで、大急ぎで自転車を漕いで……
翌日。
「なんで来なかったの」
開口一番、リーダー格の子に詰め寄られました。
「ご、ごめんね!でも、あの、公園から出て、ママが迎えに来たときに居なかったら怒られちゃうから……本当にごめんね」
そう言うと、リーダー格の子が、変な顔をしました。
両脇の子も意味がわからないといった顔をしています。
「そうじゃなくてさぁ」
「なにそれ、わからないふり?ムカつく」
「遊ぼうって言ったのコイツじゃん、ありえない」
すごく怒っています。
そりゃぁ、置いて帰ったんですから、怒って当然でしょう。
けれど、これで「次からしない」なんて約束は出来ないのです。
何せ、次も、その次も、17時の鐘がなる15分前には、出かける前に伝えた場所に居ないといけないのです。
時々、抜き打ちの様に探しに来ては居ないと「嘘をついた」事に対して罰がくだされてしまうので、移動するときは電話をしないといけない決まりです。
理解してもらおうと私は必死で説明しました。
「こ、公園に行くって言ってきたから、公園から出ちゃだめなんだよ、私……本当にごめんね、だってみんな、急に走っていっちゃうから……」
目の前の三人はいよいよ怪訝な顔をしています。
そして、
「何の話してんの?アタシはぁ、アンタが昨日、公園に来なかったから怒ってんの」
と言ったのでした。
「……え?」
「アンタ、誰の話してんの?誰と遊んだのよ」
あなたと、とは言えませんでした。
顔を思い出そうとしたのですが、急に靄がかかったように思い出せなくなってしまったのです。
でも確かに、遊んだのです。
そしてその間、私は目の前の子達の名前で昨日の子達の名前を呼び、昨日の子達もそれに応えていた筈でした。
「しらばっくれてる!サイテー」
「ルドヴィカ、嘘つきじゃん」
両脇の子達は完全に私の事を嘘つき呼ばわりでした。
けど、リーダー格の子は、私が本当に楽しみにしてたことや私が今まさに混乱してるのを見て、何か変だと思ったのでしょう。
「ルドヴィカ。アタシ達は、昨日、公園に行ったらアンタが居なくて、自転車があったからアンタのだと思ってずっと待ってたんだよ。」
と事象を整理しようとしてくれました。
ですが、私はそれを聞いて、ますます混乱します。
「……●●公園?」
「そう、●●公園。あんた、自転車何色?」
「ピンク……」
「じゃやっぱ、アレあんたの自転車だったんだ。どこに居たのよ」
「公園で遊んでたよ……」
リーダー格の子の顔が、嫌悪したものになりました。
「やっぱ嘘つきじゃん。ルドヴィカとは二度と遊ばない」
私は泣き出してしまいました。
どう言ったらいいかわかりません。
嘘はついていないのに、嘘つきだと言われているのです。
悲しくてしかたありません。
「泣いたって許さねーから!」「この嘘つき!」と罵られていると、Mちゃんが気付いて、助け舟を出してくれました。
「私、昨日ルドちゃんに会ったよ。ルドちゃん、嘘ついてないと思う」
これにはリーダー格の子も「えっ」と声を上げました。
Mちゃんは、正義感が強いのですが穏やかで、擁護も批難も、きちんと理由を説明するタイプの子です。
『えらぶっている』とやっかまれることが無いわけではありませんでしたが、実際の成績も満点ばかりでしたし、人間的に大人だったので、みんな一目置いていたのです。
私にも非があれば関わってはこないでしょうし、精々言っても『もうそのへんにしなよ』ぐらいだったでしょう。
けど、Mちゃんは昨日私と会っていて、その時の話と今朝の私の話が一貫している事に気付いたのでしょう。
私の味方をしたのです。
リーダー格の子にはこれが予想外だったようでした。
「ルドちゃん、皆が戻ってくるの待ってたって。ルドちゃん迎えにルドちゃんちのお母さんが来てたし、多分ずっと公園にいたんじゃないかな。本当に●●公園?」
「●●公園だよ」
「私、皆を見かけてないんだけど、帰っちゃったの?」
「コイツが来ないから、帰ったよ。鐘が鳴るちょっと前に」
「Yんちにゲームしにいったの」
「そっか。じゃぁもしかしたらすれ違いだったのかもね。ルドちゃんは、他の人と遊んだのを勘違いしたのかも」
「…………………………」
リーダー格の子は納得できないという顔をしていました。
まぁ、そうでしょう。
私と他の子が遊んでいるのは見ていないし、私はずっと公園にいたと言っているんですから、矛盾しています。
ですが、第三者が関わってきたことで、バカらしく思えてきたのでしょう。
「もういいよ、そういうことで」といい、自分の席へと踵を返しました。
私に「気持ち悪」という言葉を最後に吐いて。
三人が去ったあと、Mちゃんが話しかけてきました。
「ルドちゃん……私、これだけはわからないんだけど……昨日、本当にずっと公園に居たんだよね?外に出たり、してないんだよね?」
「うん……ずっと中って訳じゃないけど、公園の周りからは離れてないよ……道路には出てない……」
「そう……なんだ」
Mちゃんは少し困ったように考えていました。
ですが、言わなきゃいけないと思ったようで、私に顔を近づけて小声で話しかけてきました。
「あのね、ルドちゃん……公園、私の部屋から見えるんだ……ずっと見てた訳じゃないし、よく見てた訳でもないんだけど……出かける直前に見た時に、私、公園でルドちゃん見てないの。ピンクの自転車は有るの知ってたけど」
「……え?」
「だから、びっくりしたのよ。家を出たらルドちゃんがいるんだもん。それに……」
言葉を区切る。嫌な予感がしました。
「あの子達の前では言わなかったけど……私も、昨日誰かがあの公園で遊んでいる声も、姿も、見てない。今日は静かだなって思ってた。……ね、本当に嘘ついてないよね?嘘でも怒らないから、私にはちゃんと教えて。私は、ルドちゃんを信じていい?」
すぐには答えられませんでした。
意味がわからなかったのです。
けれど、このまま黙っていたら、嘘だと思うでしょう。
何か勘違いしている部分がないかと昨日の記憶を掘り起こしましたが、どうしてもわかりません。
結局、これしか言えませんでした。
「私、嘘ついてないよ……」
「……わかった。それだけでいいよ。置いていかれて、さみしかったよね」
「うん……さみしかった……」
ボロボロとまた泣き出す私を慰めて、Mちゃんもホームルームに向けて自席へと戻っていきました。
私は、ずっとグルグルと考えていました。
が、何もわかりません。
結局、この騒動で揉めた三人とは以降宣言通り二度と遊ぶことはなくなってしまいました。
この事象がどういうことだったのか、今でもわかりません。
私が、何か勘違いをしていたのでしょうか。
もしかしたら、リーダー格の子達が嘘をついていた可能性もあります。
けれど、誰も何も間違っていない事を前提で1つ仮説を立てるなら……
私は一体、誰と、何処で。
END