吉野寄り道一人旅(電車編)
吉野へ向かう車窓
くすみかけの彼岸花
静止画のようなコスモス
風にそよいで揺れる姿を
きめているのは誰
ガタンゴトン
揺れているのは私自身
リュックを放おった
ベンチシートにいる人は
あちらで1人こちらに1人
一人旅が揺れている
金峯山寺を目指している
柄本佑の道長が行ったから
ただそれだけに心押されて
旅人たちはどこへ流れた
電車1両貸し切りになった
一月遅れの季節はやっと秋が来るような
物悲しい空気が澱んでいる
本物の道長がムスッと顔をしかめている
昨日改札を素通りしてしまったことに気づく朝
無人改札機は通してくれない
きっと私もムスッとした気持ち顔に出して
切符を買って乗り込んだ吉野行き
解け始めた私ガタンゴトン
窓枠に流れるシーンを独り占めしていた