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四月一日あなたは嘘をつきますか

エイプリルフールの日が近い。
嘘をついてもいいよとお墨付きのある日だ。
原則として一日で完結する嘘に限られる。
他愛ない嘘に限られる。

皆が小さな嘘をつくこともある。飛びっきりのプレゼントを用意していて、その人の手に渡るまで気づかれてはいけない。そしてその瞬間を迎えた時、それはサプライズと言われる。ドラマにあるシーンなだけで経験したことはないけれど。

嘘をつくことは手段。
騙す目的のために嘘をつく。
目的の種類は二つ。
騙すためと隠すため。

騙すための嘘は人を陥れる。
たいていは、私利私欲のため。
詐欺。

隠すための嘘は自分が苦しい。
たいていは、言えない事のため。
そこに相手が存在したら黙していても不誠実に思われるだろう。何かを言葉にしてしまったら、それが嘘になってしまう。
病気の告知に悩むご家族とかもそうだ。
ペットの死を遠く離れた場所にいた私に知らされなかったことだってそうだ。

嘘は信じてしまう。好きな人の嘘は本当でしかない。その裏には嘘じゃないと思いたい自分も含まれている。もしかしたら嘘じゃないことを信じたい祈りのような気持ちも含まれているかもしれない。

嘘はふつう一日では終わらない。
嘘に関わっている事象が終わるまで終わらない。
自分を守るための嘘であっても苦しい、
誰かを守るための嘘であっても苦しい。
一つの嘘のために前後の辻褄を合わせてこないといけない。
だからどこかで綻びが見えてくる。
苦しいよね、嘘をつくって。

その会見では「嘘」という言葉を何度も聞いた。
大谷選手の口から「嘘」と言う言葉が何度も発せられた。
聞いていて悲しくなった。
彼に嘘という言葉は似合わない。

通訳のその人の嘘には騙すための嘘と隠すことへの嘘が絡んでいる。
通訳のその人のインタビューという一夜限りの嘘が嘘の上塗りだとしたら、一番重い罪だと思う。司法的なことよりも野球界のスーパースターとして信頼を築き上げた選手の全幅の信頼を揺るがせたからだ。
何が本当で何が嘘かなんてわからない。その人物への信頼、そこに尽きる。
そんなに関心のない事柄や人物への評価なんてスルーする。逆に言えば語った事を100パーセントは信じない数もあるということだ。

マスコミにはある事無い事、憶測妄想記事も書かれることだろう。その記事を信じる読者は絶対いるのだ。100パーセント違ってても信じ拡散していくのだ。そのことは我が推しを思えば痛すぎるほど知っている。

間投詞「ええー」は本来不要なもので、次の言葉が定まらないときや、自分の中で考えがまとまっていないときに使ってしまうことが多い。口癖と言ってしまえばそれまでだけれど、会見中気になってしまった。

いつものように苦しい時でさえ自信に満ちた話し方をする大谷選手の言葉を聞いていたいと思った。
その彼らしさを奪い取る、被害者であっても事件に関わるとはそういうことなのだ。


たぶん人は嘘をつくのが下手だ。
でも人は嘘をつく。
一つの嘘を続けていると自分には嘘が正当化されてくる。
何が嘘で何が本当で。
嘘には覚悟が要る。


覚悟を持って騙した人がそばにいたら騙されるのかな。
信じれしまう条件がそろっていたら騙されるのかな。
信じたい祈りを含んで信じてしまうのかな。


「エイプリルフール」
「四月馬鹿」
「万愚節」
「愚人節」
「4月の魚」

愉快な嘘を、優しい嘘を、下手な嘘つきが考えている。

四月一日あなたは嘘をつきますか。




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