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黒白の世界
コラム『あまのじゃく』1952/1/7 発行
文化新聞 No. 203
不満足な色刷り新聞
主幹 吉 田 金 八
元旦号は中央各紙も色刷りを多分に使用して、新聞もいよいよ戦前に復帰した景観を呈した。
本紙では、印刷部をゆっくりと5日間休養させるために、30日の夜から5日まで私と女房だけで素人印刷を強行したので、平常号より悪い出来栄えで、各方面からお叱りを被った。
だが、負け惜しみを言うのではなく、新年号の各紙の色刷りも、あまり多色を複雑に使用したのは、見た目にきたならしく、むしろ広告や漫画に若干の色刷りの部分があった位の方が成功だったと思う。
特に写真版をゴテゴテ多彩に彩ったのなどはどうかと思う。
もちろん、多くの色彩が表現出来ることは結構だが、新聞のように安価な大量印刷のものには、紙やインキの関係でアメリカ等の物資豊かな国は別として、日本の現状では困難なのであろう。
映画なども天然色ものが外国ではほとんどの様になってきたが、私などの感覚ではどうも重苦しく、目が疲れるし肩が張るようでならない。
天然色と言っても、本当に自然な色彩を表現できる時代になったら話は別で、現在の赤や紫や黄のみ誇張されている段階では、むしろ黒白の世界に限定されて、その明暗の階調の中に芸術的効果を生かす、在来の写真の方が親しめるように思う。
コラム『あまのじゃく』は、埼玉県西武地方の日刊ローカル紙「文化新聞」に掲載された評判の風刺評論です。歯に衣着せぬ論評は大戦後の困窮にあえぐ読者の留飲を下げ、喝采を浴びました。70年後の現代社会にも、少しも色褪せず通用する評論だと信じます。
このエッセイは発行当時の社会情勢を反映したものです。内容・表現において、現在とは相容れない物もありますが、著作者の意思を尊重して原文のまま掲載いたします】