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政党の気迫

コラム『あまのじゃく』1963/10/26 発行
文化新聞 No. 4602


二大政党と言うけれど‥物足らぬ社会党

    主幹 吉 田 金 八

  いよいよ国会議員選挙である。
 各党とも必勝の意気に燃えて、自信のある候補者を押さえて、戦列を整えつつあるがその戦績や如何。
 解散の日の衆議院における各党代表の総理大臣に対する質問演説(というより)総選挙に対する自党の宣伝演説を聞いた。社会党の勝間田質問の堂々さには取敢えず感心したが、これに応酬する池田首相の答弁は、実績を背負う気迫があふれて「その勝負あったり」の感を深くした。
 解散証書発表の直前に西尾民主党総裁の演説は、草稿棒読みの素人でもやれそうな無気力なもので、「これでは民社は伸びまい」と同党の行く手を暗示する迫力のないものだった。
 フランスの如く少数党乱立の場合は別として、日本の如く二大政党が対立している場合は、代議士になってもそのどちらかの政党に所属していない限り、自己の政策、所見を実現する道は遠い。
 戦後1回政権を担当したことのある社会党が、もう一度政権を勝ち得ようと「今後3回の選挙を経て政権を握ること」を夢見ているが、果たしてこの念願が達せられるかどうか。望ましいことは二大政党の力がもっと均等して、 一方に不味いことがあれば国民の支持が変わって、今日の少数党が第一党になる、俗な例えだが、あい接して競争店が二店あることが消費者に価格の点、サービスの点で利益であるということである。
 しかし、日本の場合、二大政党であるとはいえ、自民党が大きく対立の社会党が小さい過ぎる。終戦直後に社会党がタッタ一回政権を担当したことが偶然だったような気がする。
 だから社会党が今後三回の総選挙を経たならば、第一党にのし上がって見せると公言しても国民にはピンと来ない。
 政権への期待はおろか、国会で反対の意思は表示できても、議決を阻止する実力すらない。
 だから退場とか評決に際して牛歩戦術というようないみじき反対の戦術しか使えないということになる。
 これが、もっと賢明で国民の支持が高まって自民党とガップリ取組める大政党になって貰いものであるが、今の状態では誠に心細いと言わざるを得ない。 


 コラム『あまのじゃく』は、埼玉県西武地方の日刊ローカル紙「文化新聞」に掲載された評判の風刺評論です。歯に衣着せぬ論評は大戦後の困窮にあえぐ読者の留飲を下げ、喝采を浴びました。70年後の現代社会にも、少しも色褪せず通用する評論だと信じます。
 このエッセイは発行当時の社会情勢を反映したものです。内容・表現において、現在とは相容れない物もありますが、著作者の意思を尊重して原文のまま掲載いたします】

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