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3章 「知ってる世界」はどれくらい? ※出版記念 無料チラ見せ公開※

初級編: 探す・触れる・考える・面白がる

気づいてる?
実は教科書の中には「誰かの人生」が詰まっている。
何かに興味や欲求や情熱をもって、
国を動かしたり、自然界の法則を見つけたり、
言葉の違いを解き明かしたり、
それで何かを伝えたいと強く想ったり……。
そんな人たちのロマンや叡智が詰まってる。

だけど……正直に言えば、そんなに面白くないよね?
それはたぶん、教科書や参考書が悪いんじゃなくて、
「お勉強」にはロマンなんて入り込む余地がない。
受験という現実がある。
でもね。
だからこそ、ちょっと違う世界に目を向けてみてほしい。
世界が自分の興味とリンクすると、勉強の意味が変わっていく。

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▶️「勉強が面白くない」その理由

うちの生徒は勝手に勉強をする。

気づけば電気や動力の仕組みを、日本語の文化や背景を、生き物の生態を、外国語や会計や経営や写真やデザインを、勝手に勉強している。
木材をノコギリで切っている子の横で、パソコンを使って写真の修整加工をする子。自家製ジュースの味見をしながら砂糖の量を調整している子の隣で、畳に寝そべりながらiPadで川辺の生物を調べる子がいる。

教室のスタッフや親が指示しなくても、ぼくらが見ていないところでも、教室のそこかしこで、好き勝手に勉強をしている。
もともと不登校だった子もいるし、学校の勉強が苦手な子もいる。
逆にできすぎて「勉強なんてつまらない」という子もいる。

そんな彼らが勉強している理由は、電気自動車をつくりたかったり、小説を書こうとしたり、絶滅危惧種を守ろうとしたり、地元の梅で商売をしたり、病院で水族館の動物の写真展を開くため。

その光景を見ていると、彼らは「勉強がつまらない」んじゃなくて、勉強を面白がる周波数にチューニングが合ってなかっただけなんだ、と気づかされる。

「勉強なんて面白くない」
その理由は、すごく単純だ。

そもそも誰かに「やらされる」ものが、面白いわけがない。

勉強って、いつのまにかそういう認識が広がっていて、「義務教育」という言葉が「子どもは勉強する義務がある」だと思われて、強制されるものだと思われている。
勉強に限った話じゃなくて、楽しいゲームやマンガ、美味しい料理とかだとしても、「さあ、もっとやれ!」、「まだまだもっと!」って押し付けられて、「やらなきゃいけない」ものになったとしたら、そりゃイヤになるのも当然じゃない?

決まった時間に、みんなで同じ内容を聞いて、そのほとんどは机に座り続けて受け身……。
その上さらに、テストの点数で人と比べられて優劣を突きつけられている気がしちゃう。それを小中学校で9年も、日常的に繰り返していたら、面白さに気づけなくなるのは当たり前。

逆に言えば、自分から興味をもって「知りたい!」、「わかった! できるのが楽しい!」と思えたら、「やらされ感覚」は薄れていくし、勉強だって自然に面白いものに変わっていく。

▶️「憶える修行」と「探す冒険」

お勉強の中でも「どうせ役に立たないランキング」で、よく挙げられるトップ3のひとつが、「三角関数」。
子どもは子どもで「こんなのどこで使うのさ」、「これができたからといって何なのよ?」と言うし、大人でさえ「社会で働いてン十年、おれは一度も使ってないわい、ガハハ!」なんて言ってる。

でも三角関数がなければ、ぼくらはスマホも使えないし、ゲームもできない。何なら道路はガタガタになるし、飛行機も飛べなくなる。
そもそも電気が安定しない。
むちゃ大事なのに不要な扱いをされて嫌われる、不憫でかわいそうな三角関数……。

まあ、そういうものだとも思う。
ぼくらの生活とリンクしている実感がないもんね。
どれだけ勉強をしても、役に立っている実感がなかったら、そりゃ面白くないのは当たり前。

特に高校以降の「お勉強」は、役に立つまでが遠い。

「いつか役に立つから」、「あとで後悔しないように」、「何かあったときのため」に勉強が必要だと言われるけれど、今のところ身近な「役に立つ」っぽいのは、外国人との会話と買い物の計算くらい?

むしろ今では、大人の方が楽しそうに勉強していたりもする。
実際に社会に出てから、勉強の必要性を感じて大学に再入学したり、英会話やDIYや歴史小説を学んだりもする。「リスキリング」と言われて、新しい知識やスキルを身につけたりするのも、勉強が興味や日常とリンクしているから、すぐに使える便利ツール。

うちの生徒たちが、勝手にどんどん勉強するのも同じ理由。
彼らにとって、知識や理論や技術は「憶えるもの」じゃなくて、「すぐに使うもの」。その対象を「探す」を楽しんでいる。

いつ役に立つかわからないものを憶えるよりも、「冒険感覚」で知識や人やアイテムを探して、攻略法を自分で見つけ出そうとしていくから、面白い。
通常のゲームでも、レベルアップやアイテム収集は目的じゃない。
あくまでもクリアしたいイベントが目の前にあるから、必要なレベルアップやアイテム収集をする。
どんどん枠の外に出て「探し回る冒険」をするからこそ、むしろ逆に枠内にあったものの便利さに気づくこともある。

多くの人が「枠の中で憶えるガチャ」をしてるからこそ、そこから抜け出して「違うガチャをやってみる」だけで、オリジナリティや個性やユニークさが生まれていく。どんどん枠からはみ出て、日常を冒険にしちゃえばいい。

▼続きの目次

▶️「車輪の再発明」はムダじゃない
▶️「触れる」のって、怖いこと?
▶️「異質」に触れると世界が広がる
▶️  過去の偉人が「考える」をしてくれた
▶️ そこに「考える」はあるんか?
▶️「101点以上」をとる方法
▶️「炭鉱のスカブラ」の価値
▶️  視点が増えると「面白がれる」
▶️  運や他人に「面白い」を任せない
◇ 3分コラム 10代の横顔 file.02「幻のミツバチ、育てる場所はどこにある!?」
◇ 5分ワーク 「探すガチャ」のチュートリアル


(🔽第4章につづく)


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