「便座エース激闘編 その2 こう拭く!」
前編からの続きである。
はじめは恐る恐る歩く。
校門の持ちこたえ具合を点検し「早歩き」へ。
再度校門脇の守衛さんと交渉し「駆け足」に、最後は誰にも相談せず「単独スチール」である。
そしてついにその時は訪れたのである。何たる快感、何たる開放感、甘美なるひととき。不埒なるセーガクは轟音・悪臭とともに校門に殺到し、高田馬場方面に逃走した。
大学当局は追跡を諦め、粛々と校門を閉めた。
本学の健康と威厳は死守されたのである。
「天網恢々疎にして漏らさず」・・・そう、漏らさないんである。
甘美なる快感に身を委ね、ふと気がつくと・・・無いんである。あるはずの場所に、無いんである。
ちなみにこの公衆トイレ、ウォシュレットどころか和式である。〜んなもんはあるわけがねぇわな。
さて、定跡通り持ち物検査を開始。
そう、母校の正門に鬼の如く立ちすくむ風紀委員のように、完璧に探した。
背広、ズボン、ワイシャツ・・・やっぱり無いんである。
最後の頼みの綱であるカバンに淡い期待を寄せ恐る恐る探すと・・・あったのである!!!しかし形状がおかしい。重さもおかしい。何か変だ・・・。
思い出した。
数週間前、コンビニでついでに購入した「ギャッツビー男の汗ふき ハードなんちゃら~」とかなんとかいう、黒っぽい入れ物のウェットティッシュである。正直に告白すれば、購入したのも初めてであり、使用体験も無かった。つまり未使用のままカバンに放り込んであったのである。
「なーんだ。こんでいーじゃん!」
さっさとビニールを破り捨て、上面にあるなんだかフタのようなものを剥がした。確かに湿気をはらんでいる。何かしら気になる臭いもしたような気がしたが、先ほどの不埒なセーガクの逃走劇により、室内は悪臭が漂い、全く認識できない。
で。
拭いた・・。
校門内も綺麗に。いぐるように。
校門周辺のゴミもきちんと清掃した。
ご同輩諸兄よ、想像してくれ。
この後の阿鼻叫喚を・・・。
とっくにセーガクは逃走したにもかかわらず、学外に待機していた機動隊が竹槍を並べ、粛々と「魚鱗の陣形」を組み神聖なる校門に正面突破を敢行したのである。
泣いた。
気の済むまで泣いた。
永遠のような数分が経過した後、不思議な感覚が押し寄せてきた。
「こ、これは何だ?」
先ほどの頭の片隅をよぎった臭いはアルコール臭である。揮発性だからいずれは収まるんである。
薫風香る入学式を思い出した。さわやかな春風が優しく校門をなで、文学部スロープの香しい匂いに包まれ、満開の櫻が幻想的に舞っている。
「法悦じゃぁ・・・極楽浄土だぁ・・・シャンバラだぁ・・南無毘沙門天・・オンベイシラマンダヤソハカ・・」
今度は怒濤のように押し寄せる快感に噎び泣いた。
これを読んだら、是非一度試してみてくれぃ。
読者諸兄姉の感想を待つ。
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