【散文詩】半自動筆記に依る夜想曲(2)-1:『MAD REGAL』-1
彼女は聖書の教えだけを信じ、風と共に月明かりの照らす中を、
全てが完璧な迄にデザインされ尽くした森の中を駆けて逝った。
明くる日私は電車に乗ってバビロンの遺跡迄物見遊山に出掛けた。(乃至はそう夢想した)
と、隣に座る大して身奇麗でも無く冴えない青年が大戦中のと或る独軍戦車に附いて熱弁を振るい始めた。
熱く語る彼は終わりの方では声を震わせ涙を浮かべ、「これも、愛するが故の宿命なのだ」と話を締め括った。
私は、何も彼もが有害な電波に毒されて居るのでは無いかと思い、
目の前の意識の何も彼もが黒く塗り潰された様に思った。
何故なら、其の車内の全ての人々が、彼の話に涙して居たからだ。其の事で私は、シューベルトを歌いながら墺太利の国境へ向かって歩く、と或る家族の事を強く想った。
彼女は出来上がった三つ編みを後ろに垂らし、とても奇妙な色をした蛙を見に家の直ぐ近くのペットショップに歩いて行った。
しかし、檻の中には見事な筋肉美の青年が居るだけだった。