花宮香織さん④『意地悪な質問と、NPOに興味を持つ学生へ』
こんばんは。『クローズアップNPO法人 〜現場の声から〜』をお送りします。
初めてコモンビートを知る人が団体に対して持つイメージで最も多いのは、「なんか楽しそう」という言葉。
でも、ただ楽しいだけじゃないんです。
企画の現場にいつだってある“楽しんで学んでもらうための仕掛け“は、NPO法人として「社会貢献活動」を実現させる一つの手段でもあります。
では一体、その仕掛けは誰がどう作っているのか、企画がどう社会貢献に繋がっていくのか。
コモンビートを運営するメンバーの皆さんに伺います。
今回お話を聞かせていただいたのは、コモンビート事務局長である花宮香織さん(以下、はなさん)です。
本日9月15日(木)は、④『意地悪な質問と、NPOに興味を持つ学生へ』をお伝えします。
なお、はなさんのシリーズは全4回。
⭐︎前回の記事はこちらから
③『花宮さんと、目標に対する考え方』
https://note.com/lucky_oxalis903/n/n4f921523a96e
⭐︎はなさんの自己紹介はこちらから
NPO法人コモンビート 公式HP
https://commonbeat.org/outline/staff/
取材担当:広報インターン ジュン
ーーここからは、私が気になっている質問をしていきます。これはもしかしたら、モヤモヤする意地悪な質問かもしれません。この問いに対しての回答ははなさんご自身のご意見で大丈夫です。
ーーでは初めに。認めたくない意見も認めなければいけないのが多様性でしょうか?
「多様な価値観を認めよう」と言われると自分が嫌だと思う価値観すらも受け入れねばならないというイメージがあるのですが、それについてはどう思われますか。
それは本当にジュンが言ってる通りだと思ってる。多様性という言葉を掲げてしまうと、「多様性なんだから何でもありでしょ」っていう解釈と結び付きやすいなと思う。
私個人は、特にコモンビートというコミュニティにおいては、「多様性を認め合いたい」と思ってるけど、「多様性を認めたくないって思ってる人の意見を受け入れたくはない」とも同時に思ってる。いろんな人たちを受け入れたいとは思ってるけど、人を傷つけたり差別するような人は受け入れたくないと思ってるのね。
つまり、多様性だから何でもいいって話ではないし、多様性だから何でも受けいれなきゃいけないというわけでもない。
どこまで良いの?何なら駄目なの?っていうのを決めるのは、そのコミュニティの持ってるポリシーだったりとかルールだったりすると思う。「D&Iや一人一人のウェルビーイングを掲げる団体として、それらを阻害するような行為や価値観にはNOを示す」というのが、コモンビートにおいての多様性に関する姿勢かなと。特にコミュニティ運営という意味ではそう考えています。
個人ベースの話にすると、その人の価値観や信条によって、その人の価値だとかを他人が勝手に決めつけるのはナンセンスだと思うんだけど、自分が共感するかとか自分がその意見を認めるかっていうのは、また別の話なんだよね。
自分とは違う意見の人がいたときに、違うからといってその人の人格を否定したらそれはD&Iじゃないと思う。自分とは違う意見の人ともどうやって一緒にやっていこうかって考えることがD&Iだと思うから。
「誰でも何でも認めて受け入れる!」って話と、私たちの目指す多様性はちょっと違うんじゃないかなっていうのはすごい思ってる。
ーー次の質問に移りたいと思います。多様性というものは一部の人たちだけのものなのでしょうか?
ここでいう一部の人たちというのは、例えば、大学へ通っていて芸術文化に触れる機会が多い私のような人間のことです。「文化資本や経済資本に恵まれている人たちだから、多様性というものについて考える余裕があるのだ」という声もあります。
それに関してはどう思われますか。
うん。めっちゃわかるよ。例えば、学歴を重視するのと経験を重視するのってどっちが公平だと思いますかという問いがあるとして。「学力が高い人は塾に行けたりとかする人たちが多いから結局お金ある人だけが優遇されるから、経験重視にしよう」という意見に対して「でもボランティアをしましたみたいな経験ですらお金で買えるものであったりとかするから、経験重視って言える人はお金のある人だ」とかって議論になってたね。
私もこうして自由な働き方をさせてもらえているのはある意味恵まれているからで。だからこそ、自分の恵まれてることをまず自覚して、その自分の恵まれてるものを使う矛先が社会のためであったりとかそうじゃない(恵まれてはいない)人たちのためであればいいなって私は思ってるんだ。その自分の持ってる特権を自分たちみたいに特権がある人たちのためだけに使うってなると、格差の再生産をするだけだと思うから、私はそうしたくはないなと思う。
それが私の場合だと、コモンビートを運営するということに(自身が恵まれていることを)使ってるとも言えるかもしれない。加えて、コモンビートの活動がもっと進んでたりすると社会が良くなるから、特権を持ってる人もそうでない人も一人一人のウェルビーイングが上がるはずだとも思っているし、特権を持ってる人たちが特権を持ってるって気づくことにもなるはずだなと思ってる。
特権を持っているというのは自分では変えようがない事実だったりとかするから、認めた上でそのときはあなたはその特権を何のために使いますかっていうところが、何か社会のためであれば別に私はそれでいいと思うんだよね。
社会のために使える特権だったらむしろ使っていきたいと思うから。
ーーなんでみんなして不幸になろうとするのかなと不思議でたまらないんですよね。
不思議だよね。日本は特に、みんなで楽になろうじゃなくて、みんな我慢してんだからお前も我慢しないよっていう方向への圧力が強いよね。
みんなが我慢することでみんなを並べて公平にするんじゃなくて、みんなが楽になるようにみんなを公平にした方が絶対いいじゃんと思ってるから、なんでつらい方でみんなを合わせようとするんだろうみたいなものは結構なんか謎だよね。
ーーその謎に気付くきっかけを与えるのもNPOの「啓蒙」という役割だったりするのかなとは思いますね。
そうだね。さっきの特権の話で言うと、自分が特権を持ってるって気付いてないマジョリティーに対してアプローチするのが一番だと思う。
マジョリティーに合わせて社会が作られてるから、マジョリティーが変わらないと社会が変わらない。気づいてないことを気づかせるってめっちゃ大変だけど、D &Iに元々興味がある人たちももちろんだけど、D &Iという考え方があることを知らずにコモンビートのプログラムに参加してくれる人がいるのも大事で。
だからミュージカルってめちゃくちゃでかいエンターテイメントを入り口に掲げているのは、D&Iとか異文化理解とか平和に興味がない人も一緒に、練習をしていく100日間の中でそういうことを知ってもらえたら良いなと思っているからなんだよね。
ーーこの話で、今までお聞きした全てが繋がって一周したって感じがしました。
なんでミュージカルなの?という疑問が解消されたというか。
できるだけ間口を広くしたいって気持ちがあって。入り口の時点でD&Iを聞いたことがない人も、100日後のプログラムが終わる頃にはそういうところに感度がある人になってほしいなと。100日間のその変化を見れるのはすごいやりがいはあるなと思う。
ーーミュージカルって余裕のある人しかできないじゃんって思ってたんですけど、余裕のある人がやるからこそいいんですね。
そうとも言えるね。それと同時に、余裕がある人しかできないプログラムって参加の間口を広げられてるのかなって疑問はある。参加条件として、土日が開けられる、参加費が払える、心身ともに健康・・・ってかなりのハードモードだなって。だからある意味、偏った集団なのかもしれないけど、自分の社会の中での立ち位置や、一人一人の違いを理解するには多様なメンバーがいた方がいいのは絶対変わりがない。色んな人が参加しやすくなるために、間口を広げられる何かがあった方がいいなとは思っています。
これはコモンビートの課題でもあるかな。
ーーこれですべての質問が終わりました。ありがとうございました。
いえいえ、こちらこそありがとうございます。
ーー最後にですね、NPOを目指す学生やそうでない学生に向けても、何か応援コメントをいただけないでしょうか。
そうだな・・・「何かやりたいことやったらいいじゃん」としか言えない自分もいるんだけど笑
とにかく、自分が興味があることとか、行きたい方向とかはとりあえずやってみたらいいし、やってみたら違ったって場合もあるだろうからそしたらそこで軌道修正すればいいと思うんだよね。
よくさ、人を幸せにするためには自分がまず幸せでないとねみたいなことを言われたりとかすると思うけど、自分の幸せよりも人の幸せのために時間を使う時期があったりとかすることもあるだろうし、それが必ずしも悪いこととは私は思わないから。
うーん・・・NPOを目指す人たちへ向けて「この言葉だ!」っていうのはないかな。
ただもしNPOとかに勤めたいなら、、NPOっていう時点で結構多様な人間と関わるだろうなとは思います。わかりやすい昇給とか、指示系統とかが組まれてるような会社とは違うし、いろんなモチベーションで関わっている多様なステークホルダーがいるのはNPOの一つの特徴かなと思うの。
NPOで働いてみたいとかNPOで活躍したいって思うんだとしたら、やっぱり多様な人に触れておくこととか、自分の中に多様なものを持っておくとかっていうのはすごい大事かな。
どれだけ社会に貢献したいとか、NPOでいいことをしたいと思ってても、多様な人たちと一緒に活動することができないと相当厳しいと思うので、何か多様な経験をしたらいいだろうなと思うし、多様な人たちと喋ったらいいだろうなと思う。
っていうのはNPOで働きたい人たちだけに限った話じゃないけど笑
特に学生みたいに、時間があるとか特に体力があるとかっていう時期にそういうことをしてもいいんじゃないかなとは思います。
・・・ってなんかすごい無難な答えになってない?面白くないな笑
とにかく、私から言えるのはこれです。
全4回、いかがだったでしょうか。
花宮さんの語り方は、終始柔らかくもその底に積み上げられた思考を感じられる素敵なものでした。
次回から特集するのは、
国際事業部インターン 加藤美歓(みかん)さんです。
☆関西公演情報☆
【ミュージカル「A COMMON BEAT」再開記念シリーズ 関西公演】
▼日程
2022年10月2日(日)
初公演:開場 12:30 開演13:00
千秋楽:開場 17:00 開演17:30 ★オンライン配信あり
▼会場
吹田メイシアター 大ホール
▼詳細
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