②−1【対談企画】ミュージカルへの関わり方とその仕組み
こんばんは。『クローズアップNPO法人 〜現場の声から〜』の時間です。
初めてコモンビートを知る人が団体に対して持つイメージで最も多いのは、「なんか楽しそう」という言葉。
でも、ただ楽しいだけじゃないんです。
企画の現場にいつだってある“楽しんで学んでもらうための仕掛け“は、NPO法人として「社会貢献活動」を実現させる一つの手段でもあります。
では一体、その仕掛けは誰がどう作っているのか、企画がどう社会貢献に繋がっていくのか。
コモンビートを運営するメンバーの皆さんに伺います。
今回のシリーズからは、理事長である安達亮(以下、りょうさん)さんと現在国際交流チームの短期インターンメンバーである髙橋真二郎さん(以下、しんじろー)の対談が始まります。
取材担当:広報インターン ジュン
ーーここからは、無形財産への考え方について質問をしていきます。
無形財産とは、物質的実体を持たないが権利などの形で売買したり、移転したりすることが可能な資産のことです。広い意味で言うと、自分のスキル、人脈、家族、ブランド、心身の健康など、色々なことが挙げられます。
コモンビートは価値創造型のNPOと呼ばれており、ミュージカルなどのプログラムを通して得た価値もこれらの無形財産に含まれると言えます。
それについて、りょうさんに質問していきます。
まずはしんじろーからお願いします。
⒈ミュージカルに関わる人々
1−1 「キャスト」がプログラムの起点
【しんじろー】なぜ、市民の方はコモンビートのミュージカルに惹かれるのかなと。
ミュージカルって関わり方がたくさんあると思っていて、りょうさんみたいに最初は演者から入って運営という裏方になるっていうのもあるし、それこそ演者さんもいるし、あとはそれを観に来る人もいると思うし、いろんな人がいると思うんですけど、なぜコモンビートにそういう力があるのかりょうさんの意見として伺いたいなと思ってます。
【りょう】なんだろうな。それは関わり方をこちらである程度仕組みとして作っているからだと思います。上演している作品がひとつなので、そのひとつの作品のプラットフォームに乗ってきた人がぐるぐる色んな役割をするという仕組み作りは結構こだわってる。加えて、コモンビートでは必ずキャストをやらないとスタッフなどの他の役割へは進めない仕組みになってる。
そうやってミュージカルの舞台に立つ経験がないとその先には行けない構造になっているので、ミュージカルという共通言語がみんなに入って、その共通言語がある人たちともっと面白いことやりたいって人もいたり、それが地域を越えて仲良くなれたり、そういうふうに繋がってコミュニティが生まれていくんだろうなと思う。
まずはキャストやって、次にスタッフをやって、その後はブラピ(「ブラックスピリッツ」というコモンビートオリジナルの名前の略称。大道具などを専門とする舞台スタッフの方々を指す)、その後はウェルカムキャスト(劇場運営などの当日制作スタッフ)をやって、そこからさらに、もっと関わりたいからコアスタッフ(主に運営スタッフの中心メンバーを指す)をやり……最初は観客として行ったのに観客だけで終わらない。
あとは「キャストをやったらウェルカムキャストもやるでしょ」という文化を見出したのも大きいかな。コロナ禍による休止で今は途絶えてしまっているけど、今までは前の期のキャストが次の期のウェルカムキャストをして、その次の期のキャストがさらに次の期のウェルカムキャストをする、みたいな恩送りの循環を作って、OBOGが運営を手伝っていく文化になりました。
キャスト参加者においても、今まで参加した人たちが、「あなたもやってみたら良いよ」と広告塔になってくれて、口コミで参加者が集まってくる。「広告宣伝費をたくさんかけているんですか?」とよく聞かれるけど、基本的にかけたことがありません。
「私が出たんだからあなたも出れるよ」というOBOGたちから広まる口コミには強い威力がありますね。「観に行ったら舞台に上がれちゃうミュージカル」なんてコモンビートぐらいかなと。そういう特色も強みになっているかな。
1−2 表現することがリフレッシュにもなる
あとは社会人になると、指示系統の中に入って仕事をすることが多くなり、となるとなかなか自分を表現できなかったり、押さえつけられたりで閉塞感や窮屈さが絶対生じる。それで鬱病になったり、自殺者が増えたりすることも社会問題として取り上げられると思うけど、それらの鬱憤を晴らしたり、閉じてるものを開くようなこと(表現)をしたりが必要だと思う。本人はそこまで(閉塞感や窮屈さを)自覚してないのかもしれないけど、どこかではっちゃけたいと思ってるマインドは今の世の中には存在しているような気がするね。
僕もコロナ禍でめちゃくちゃ窮屈だったわけですよ。だって一番好きなミュージカルができなくなって、コロナがいつ終わるかもわからない中で、経営どうするのか、コモンビートはこれからどうなるのか、大丈夫か、と言われまくった。「正直、俺もわからない!けど、コモンビートは継続しなければいけない」と思って、ミュージカルを再開すると決めて、公演会場も確保して。やるんだったら舞台にも立っちゃおうと自分自身もキャスト参加を決めました(笑)。(コロナの日々を過ごしていると何かしらの)鬱憤が溜まっていくから、歌とか踊りとかで表現して、自分から出て行くパワーを感じたい、という思いがある人が多いんじゃないかなって思います。コモンビートのミュージカルって「フルマラソン走ったことある?私はある」みたいな、なかなか経験した人がいない部類に入るチャレンジの対象だと思う。人生のネタとしても、「私ミュージカルに出たことあるんです」って言えるのは面白いじゃない。
⒉ミュージカルという共通言語
2−1 ミュージカルの感想
【しんじろー】りょうさんは再開記念公演というステージに立ったと思うんですけど、そのときの感想ありますか。
【りょう】あのね、「めっちゃ気持ちよかった!」ただそれだけかな。言葉にするとそれしかなくて、しんじろーにもその気持ちよさをいつか感じてほしいですね。
【しんじろー】ありがとうございます。りょうさんのその表現で、ステージが見えてワッーって拍手が来る瞬間を思い浮かべていて、そういう感動が他の人にも伝わってまた伝わってっていう良い循環になっているんだなって。その感動した作品を観ているだけじゃなくて、(参加してみることで)身体を動かして頭を動かしてやるからさらに感じられるものが多いのかなと思いました。
2−2 関係性の中に「共通の鼓動」が
【りょう】そうだね。お客さんと演者の関係性は「呼吸」みたいなものだと思ってます。こっちが吐けば向こうが吸うし、向こうが吐けばこっちが吸うし、っていうのを繰り返している空間なので、その呼吸があった時の高鳴りっていうのが、しんじろーが言ったように感動で表現されるものだと思うんだよね。
それって舞台の上とか、会場だから実現できることとかではなくて、例えば今日のこのしんじろーとの会話でも呼吸が合っていくと、言葉では言いづらいんだけど調和するような、何かしっくりくる感じも同じように言えるのではと思う。
そういう呼吸みたいなものをコモンビートはずっと大事にしているところもあるので、観客とキャスト、観客とウェルカムキャスト、キャストとブラピ、そういう色んな人との関係性の中で呼吸を合わせようといつも頑張っているのはなかなか面白いよね。
そうやって、いろんな人たちとの共通の鼓動を見出そうとしてるんだろうなという感覚があるんだということを、今のしんじろーの話にインスパイアされて思いました。
【しんじろー】ありがとうございます。自分自身もデザインとかアートが好きになったのは気持ちの変化が共有できるものでもあるし、心のよりどころがあるものがアートだと僕は思っていて、その作品があることによって離れた後も感動とか胸の高鳴りとかが残ってるっていうのがアートの力だなって思ってるので、そういう話も踏まえながら聞いていたらさらに興奮してきたというか、「良いなミュージカル」と思いました。
【りょう】おもしろいよね。形のないものばかり取り扱ってるように見えてもミュージカルという作品は有形と捉えた場合に、それが共通言語として人と人をつないでいくという強みはすごくありますね。
【しんじろー】ありがとうございます。パワーワードというか、共通言語があるというのがコモンビートを語る上ではすごい言葉だというか。
【りょう】これは他の団体が真似できるかって言われていると、なかなか真似できないと思う。なぜなら、うちも作ろうとして作ったわけじゃないから。これを作り出そうとすると結構難しくて、うちの場合はただのラッキーだったなって思います。共通言語を作ろうという話をNPOマネジメントの中ですることがあるんだけど、「うちはなかなかできないな」という所感を(他のNPO団体の)皆さんはお持ちですね。
ーー補足として、舞台監督さん、音響さん、照明さんはプロの方に外注してお願いしています。その方達もコモンビートのスタイルやビジョンに共感して参加してくださっているそうです。
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