見出し画像

満点解答でも白紙解答でも、赤に想いを込めて

せっかちな私にとって【ガンジーインキ消し】は苦手な文房具のひとつ。

※万年筆などのインキを化学的に消去する文房具です。

ペンで書き間違えた部分に「液」を塗り、余分な液を吸い取って「液」を塗り、余分な液を吸い取って、再度「液」を塗る。

すると、あら不思議! きれいさっぱり消えている!
そして紙が完全に乾いたら、上からまた記入することができる。

あまり見慣れない文房具だと思う。
これが、けっこう大事だった時期があった。
20年近く前だ。

何を書いては消していたのか。
たしか、このペンで書いていた文字だ。プラチナのデスクペン。

使用していたペンの色は「」。



最初に産んだ子が一歳を過ぎたころだった。
たまたま 某 通信教育の添削指導員の募集を見つけ、試験に合格して「中学生の作文講座」のペン先生(的なやつ。進研ゼミではない)になった。

自宅で出来る「添削指導員」は、私にとって憧れの仕事。子が大きくなり外で働き始めても、ほそぼそ副業として15年ほど続けた。

今や時代はデジタル添削。だから、いデスクペンやインキ消しにお世話になったのは最初の何年かのみ。
業務のことをSNSで発信するのは禁止されていたけれど、数年前に辞めているので時効かな。

以下は、昔むかしの話である。

指定の曜日に、中学生の書いた作文が指定枚数、郵送で送られてくる。
それを2,3日で添削して、ふたたび郵送で返す。
その課題の添削基準に従って、色々な面をチェックしていく。

誤字脱字や表記ミスがないか。原稿用紙の使い方は間違えてないか。
そのあたりは、明確に〇×判定ができるから気が楽だ。

それ以外に「主題は明確に提示されているか」「構成はおかしくないか」「考察が深められているか」「具体例が正しく使われているか」、などなど。
いくつかのポイントを見て、どの部分がどの程度むむむ……だとマイナス何点から何点……

基準は決まっているけれど、細かい配点や添削の文言は添削指導員の裁量によるところも大きい。

私自身、子どもの頃に作文や読書感想文を書くのは大変苦手だった。
原稿用紙の使い方も、この仕事で改めて学んだ。

現在、作文の書き方を教える本はあるし、ネットで公開されている情報も多い。
「感動させろ」「賞を取れ」という訳では無いのなら通信教育まで必要ないかも知れないが、高校入試の作文対策として受講する子が多い。

だから、最低限の「書き方」が身につくように。
さらにもう一歩、深みのある作文が書けるように。

そんな思いで、いデスクペン片手に丁寧に添削をする……が……

「こりゃひでぇ。字も汚いし、何を言ってんのかサッパリわからん」という作文の、「何がいけなくて、こうなった?」を的確に示すのが大変。
主題も分からなきゃ構成も悪い。考えは超浅いのに、無駄に文字数多い!
ここにアレを指摘し、こっちの余でこの要素を3点減点……いやまて、そういう問題じゃないのか……? となるとコッチの点をあげて……アチラの要素を……ひー!

プレバトの夏井先生も、よくペンで直しているが、「一文字しか残らなかったね」でも「直したところで凡人です」ってやつ。
ぜんぶ言葉で直接伝えられたらいいのだけど。余に端的に書いて伝えねばならぬ。むむ、厳しい。

途中まで丁寧に書いて、でも、ごっそり添削し直したくなるときもある。そんなとき、「ガンジーインキ消し」の出番。

でも。
使い方は冒頭に書いたが、「余分な液をそっと拭いて」とか「乾いたら」とか。

せっかちな私に使いこなせるシロモノではない……。

また、マニキュアのように蓋と塗布部分(ガラス棒)が一体化しているのだが、ガラス棒をきちんと拭いてから瓶に戻さないと、液に液が混ざってしまう。気づけば、液の瓶がピンク色に!ひー!!
そうなるともう、いくら液を塗っても綺麗に消えない。塗れば塗るほど真っだった紙が黄色くなってしまうのだ。ひぃぃー!

結局、まだ液が残っているのに新品を注文するハメになる。ヘビーユーザーのくせに最後まで使い切ったためしがない。
一枚〇円という僅かな添削報酬から、ガンジーの購入金額が引かれる。ただでさえ、このころの報酬を「時給換算」したら、スズメの涙なのに!

うーーーわぁーーー

怒るな
自分が正しいときには、怒る必要はまったくない。
自分が間違っているときには、怒る権利はまったくない。

『ガンディー 強く生きる言葉』佐藤けんいち著から一部抜粋
https://d21.co.jp/column/gandhi/

そう。私が怒る権利なんかナイ。
間違えたのは、私のほうだ。

黄ばんだ紙を返却された当時の中学生よ。
ご、ごめん……。



デジタル添削に移行したら、そこそこ枚数をこなせるようになったけれど、まだ添削に慣れない当時は、時給換算したら「スズメの涙」……どころか「ノミの心臓」(使い方違うので「表現で△1」)
それでも、辞めたいとは全く思わなかった。
中学生の書く文章を読むことや、通信欄でのやりとりが、とても楽しかったから。

「作文」には、その人の感情や考えが如実に表れる。性格が滲み出る。生活が垣間見える。
中学生の書く文章は、めちゃめちゃ面くて、可愛いらしくて、素直すぎたり、正義感に溢れていたり、優等生そのものだったり、夢や希望に溢れていたり。

「通信欄」に書かれる呟きは、ほっとする一言だったり、勉強の愚痴だったり、思春期らしい悩みだったり、思春期らしからぬ質問だったり。

中学生ってこんなこと考えているんだ! という驚きと、応援したい! という気持ちでを入れていた。

たとえ提出された作文が「模範解答まるうつし」でも。

たとえ提出された作文が「紙」でも。

例として載せている模範解答をまるうつしする、あるいは単語だけのチョイ変えで提出する子がいる。
「丸写しって、バレてるで!」と心で叫ぶ。
だが、絶対に指摘しない。指摘してはいけないという会社の方針なのだ。

最初はそれが理解できなかった。
高い金払って受講してるだろうに、なんちゅう無駄遣いや! ヘタでもいいから自分の頭で考えて書け~、と親に代わって言ってやりたいと何度も思った。

でも、いまなら分かる。
「丸写しでも、いいのだ」と。

作文っていったい何を書けばいいのか、どのように書けばいいのか。
やっぱり、人によっては難しい。
だから、鉛筆をわざわざ動かして丸写ししたことで、少しでも流れやコツがつかめそうなら。
それで、バン万歳じゃないか!
「一文字も書けない」から「一歩前進」したのだ!

他の教科でもそうだ。答えを丸写ししてから、なぜそれが答えになるのか考えればいい。ゴールが分かれば見通しがつく。「他者参照」は立派な学びのひとつ。

いや、単に考えるのがメンドーだっただけかもしれない。紙だと親にバレて怒られるから、写したのかもしれない。
でも、がんばって考えたけど、書けなかったのかもしれない。

理由は分からないし、担任制ではないので、その後の面倒を見ることもできない。

でも、だから。
「あなたが、ここを、こう書いているから満点で返すよ」と、理由が分かるように添削する。
他の子と同じ分量の字を、丁寧に入れる。

いっぽう、一文字も「書けない」のか「書かない」のか。はたまた、うっかり提出してしまったのか、紙の用紙もたびたび送られてくる。
(手書きのころは滅多になかったかも。親が気づくもんね。デジタル提出ならちょくちょくあった)

紙答案はさすがに 0点 になる。
それでももちろん、他の子と同じ分量の字を入れる。

まずは、ここを考えよう。次に、これを書こう。こうやって話を広げよう。
矢印を引きながら、分かりやすく誘導する。
次は一行でもいいから、途中でやめてもいいから、書いてみて欲しい。
そんな気持ちを通信欄にさり気なく盛り込む。

「丸写し」も「紙」も、「次」のためにを入れる。
今回が何点だったかは関係ない。通信教育は「試験」ではない。カンニングという概念もない。

返却された作文用紙に、びっちり書かれた私の字を、あなたは読んでくれただろうか。
今現在、書いている子、書けないで悩んでいる子は、分かってくれるだろうか。

私たちは、点数で優劣つけたいワケじゃない。
あなたの、お手伝いがしたいんだ。

高校入試の時だけじゃなく、あなたがいつか
「もっと意見を表明したい」
「もっと自分を表現したい」
そう思ったときに、この作文の経験が少しでも生かせるようにと。

その時は、必ず来るから。
文章を綴るのは、とても楽しい!って思う日が、必ず来るから。

そんな思いで、我が子が深い眠りについてから、夜な夜な作文用紙と格闘しておりました。

という昔話。

本文ここまで


さて、こちらの記事は、こちらの企画に参加しております。

このエッセイ、赤白どちらのエッセイだったでしょうか?
「赤」「白」の出現回数を点数として決めたいと思います~

どぅるどぅるどぅるどぅるどぅるどぅる……

じゃん!

🟥赤 …… 14 点
⬜白 …… 14 点

おっと! 同点か??

いや、審議の旗が上がりました!
え? 「シロモノ」は漢字で「代物」じゃないかという声が。
しかも「面白い」もずるいんじゃないか? との声も。

ざわざわざわ……

ビデオ判定中

大変おまたせ致しました。
再度集計した結果が出ました。

じゃん!

🟥赤 …… 14 点
⬜白 …… 13 点
 (「面白い」は有効)

ということで、この記事は「#赤のエッセイ」になりました~👏🎉


📣赤組、がんばれー!



いいなと思ったら応援しよう!

豆島  圭
最後までお読みいただき、ありがとうございました。 サポートしていただいた分は、創作活動に励んでいらっしゃる他の方に還元します。