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心お弁当《#毎週ショートショートnote》

「ユキのお弁当カワイイ」
「その卵焼き、美味しそう」
いつもの賑やかな光景を背後に感じながら、私はひとりトイレへ急ぐ。

コロナ中はよかった。
「自分の席で黙って食べろ」「昼休みも静かに過ごせ」
そのお陰で、一人でお弁当を食べていても、昼休中ずっと読書していても、誰も「ぼっち」と後ろ指を差したりしなかった。

コロナが下火になると私の「トイレご飯」は再開した。
昼休みが終わるまで、カカオ80%のチョコひとかけと個室に籠り、イヤホンをして、ただ時が流れるのを待つ。

昼休みに部活の特訓をさせていた部が問題になったことがある。
その後に掲げられた「昼休みは心身を休め、友達と談笑したりして過ごしましょう」というスローガンには笑った。

談笑で心が休まる人が羨ましい。

お弁当は、空腹を満たし、栄養を補給し、携帯できる便利なもの。
私の心を満たすお弁当は、この音楽だけで充分。

私はイヤホンをグィと押し込み、いつものように気が済むまで、とヘドバンを始めた。

(411文字)

先週は参加できませんでした。今週またお邪魔しました。田原さま、いつもありがとうございます。よろしくお願いします。

ヘドバンかよって、笑ってもいいです。泣いてもいいです。
本当は、トイレで出会った誰かに救われる話にしたかったですが、文字数の関係もあるし、嘘っぽいものしか書けない気がして諦めました。

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豆島  圭
最後までお読みいただき、ありがとうございました。 サポートしていただいた分は、創作活動に励んでいらっしゃる他の方に還元します。