探偵は、テレビにいる。
ハードディスクに録画している『ミステリと言う勿れ』を消去出来ないでいる。
出来の良さに、ときどき見直す為だ。
映画やドラマに『探偵物語』は欠かせない。
探偵ドラマの原型は『シャーロック・ホームズ』だろう。
コナン・ドイルにナイトの称号が与えられのが頷ける。
だいたいの探偵あるいは刑事が、そばにいる解説役のバディ(相棒)と謎を解く。
探偵ドラマの殆どが、このパターンで進行する。
大学生探偵と新米刑事、変人物理学者と助けを求める女性刑事、茶髪ロン毛の型破り検事と検察事務官、紅茶好き刑事と時々替わる相棒。鉄板の構図。
改編される新ドラマには必ず探偵がいる。
とある中年俳優が「オファー来るドラマが全部、刑事役か医者役だった」とバラエティーのインタビューで答えていた。
一話完結で作り易いし、人気役者を配すれば視聴率も計算しやすい。
だからテレビは探偵だらけ。
印象深いのは『古畑任三郎』。
その構成が『刑事コロンボ』と似てると思った。
犯人は主役級の有名俳優が演じるエリートで、最初に殺人事件描写から始まる。
コロンボがカミさん話などではぐらかし、穴を見つけて追い詰める。
エリート犯人との対比がカタルシスになる。
容疑者を何度も訪問し、嫌がられ、時には罠を仕掛け、トリックを暴く。
『古畑』も、犯人は有名俳優や一流作家などエリートたち。
実在するアイドルグループや野球選手本人が殺人者役というトリッキーな配役も話題になる。
本家『コロンボ』と似たトリックも有ったが、眼を瞑る。
最初に、殺人の様子を描く所もコロンボ的。
探偵好きの視聴者は、必ず隠された伏線を見逃すまいと注視してしまう。
その時点で、もう術中に嵌っている。
コロンボは、ヨレヨレの安コートにボロ車。
しかし天下の二枚目俳優によれよれコートは着させられない。
ボロ車の代りはブランド自転車。
なかなか登場しない主人公が逆光の中、自転車に乗って姿を現す。
あの音楽が鳴り始める。
視聴者は『待ってました』と手を叩く。
無能な部下刑事との、伏線混じりのやり取りが笑いを誘う。
寡黙な美剣士が当たり役の二枚目俳優に、とんでもないセリフ量。
俳優は三谷幸喜の「あてがき」に応える。
矩形や円などの線画アニメと古畑の決めポーズ。
モノクロームのオープニングタイトルも見事だった。
一番驚いたのは古畑がカメラ目線になり視聴者に語り掛ける。
舞台芝居の様に、解決のヒントを話し始めるドラマなど見た事ない。
新たな配役で『古畑任三郎』をリメイクする話も有った。
しかし、主演俳優の死で立ち消えた。
どんな俳優も尻込みすると思う。
独特のキャラクターと話術、誰が演じようと荷が重すぎる。
英国BBC制作の『シャーロック』も素晴らしかった。
映画やドラマ、たくさんのホームズが居たけど、私が見たホームズ物のNO1だと思う。
設定を現在に置き換えたのが大成功。
スマートフォンを駆使する探偵。
中でも『ボヘミアの醜聞』を基にした『ベルグレービアの醜聞』には舌をまく。
宿敵モリアーティや、謎の美女アイリーン・アドラー、兄のマイクロフト。
定番キャラクターを、原作を超えるアレンジに置き換える。
『モンティパイソン』を生んだ英国流のシニカルな毒もいっぱい。
バッキンガムから灰皿を盗んで、依頼人、宮殿の主人が喫煙者とバラしている。
探偵たちは様々な事情でテレビを離れて行き、また新しい探偵たちがテレビに登場する。
とりあえず私は新しい探偵ドラマをハードディスクに録画するが、果たして何人の探偵が残るのだろう。