はちみつの簡単採蜜(お金をかけずに)
ここで紹介する採蜜要領は初めての方でもわかるように出来るだけ写真で進めていきます。高価な採蜜用具は一切必要はありません。「いちばんおいしいはちみつ」を絞る方法です。器具は100円ショップのもので十分、費用は1000円もかかりません。茂木日本ミツバチの会講習教材として作成したものです。
ハチミツの採蜜は「遠心分離器や圧搾器」によるものや「巣から垂れる蜜を採蜜する方法」、「蜂の卵や幼虫、花粉全てを圧搾器で一緒に絞り、腐敗を防止するため加熱する方」等があります。ここでは「巣から自然に垂れる蜜を採蜜する方法」のなかでも高価な採蜜用具を使用しない安上がり採蜜方法について説明します。しかも採取したはちみつは高価な器具を使用したものと全く変わりません。そして「いちばんおいしいはちみつ」を採蜜することができる方法です。
1 いつ・どのように採蜜したらいいのか。
①採蜜に最適な時期:温暖化で採蜜時期が変化しています。春(5月下旬~6月中旬)及び秋(9中旬~10月下旬)が最適です(地域の寒暖状況・蜜源の状況などにより若干異なる。特に九州地方など秋に蜜源が十分でなく春から初夏に多くの花が咲くところもあるので、採蜜の時期は箱の重量で蓄蜜の量を把握するとよい)。
②採蜜してはいけない時期:夏の時期は、気温が高いために巣が柔らかくなり、巣の脱落や逃走の原因となる。晩秋は採蜜後に花がなく貯蜜が乏しくなるので出来るだけしないほうが良い。
③巣箱のどこから採蜜するのか:1回に採蜜するのは最上段の巣箱です。
④採蜜可能の判断:巣の落下や蜜蜂の冬越し用の貯蜜を確保するため、採蜜巣箱を除いて、巣のついている巣箱を少なくとも3段は残すようにしましょう(脱落防止棒があるかを確認)。また、貯蜜が十分でなく巣箱が軽い状態の場合は採蜜はしてはいけません。蜜蜂が冬越し出来なくなります。
厳密に考える必要はありません。万が一巣の一部が落下してしまったら数日間はそのままにしておくと蜜蜂が蜜を上部の良好な巣に移動してくれますので後で落下した巣を取り除きましょう。
2 採蜜用具
◎写真下(左上から順に)
①電動ドライバー(あれば便利。ねじ回しでもよい) ②スクレーパー(包丁でも可) ③ 面布 ④メントール入りガム又はハッカ油 (薬局で600円位) ⑤0.5~0.8mm位のピアノ線(銅線、真ちゅう線、鉄線は切れる時があるが使用は可能です) ⑥包丁(家庭の料理用で可) ⑦厚手のゴム手袋(採蜜及ミツバチから刺されるのを防止)
◎写真下(左上から順に)
①金網ザル1個とバケツ2個(金網ザル直径より少し小さめが良い、大きさにこだわらない)。 ②フルイ(使わなくても良い、小麦粉をふるう目の細かいもの)。 ③蜜こし布(洗濯小物入れネット、オーガンジー布等)
3 それでは採蜜をはじめましょう(手順)
①面布、手袋を着用
②ドライバーで巣箱天板を止めているネジを外す。
③天板を2~30回少し強くたたいて蜂を巣箱下方に下げる。
④天板と最上段の巣箱上部の間にピアノ線を入れて、左右にピアノ線を動かして切り取るようにして天板と最上段巣箱を切り離す。
⑤針金が入らない場合には写真下のようにスクレーパーかドライバーを差入れて針金の入る隙間をつくると切断しやすい(巣箱の状態によっては針金が切れることもある)。また、巣箱を体に密着させておくと巣箱が安定するので容易に巣箱を切り離すことが出来る。
⑥天板と巣箱の間に針金を入れて切り離し、天板を開く(写真下)。
※スクレーパーと針金使用時は細心の注意しないと思わぬ怪我をする。
⑦巣が付着した天板は最後に蓋をかける時には巣が巣箱の巣を圧迫するようであればスクレーパー等を用いて付着した巣を削り取る。蓋をかける際は巣箱と天板の巣の向きを同じくすること(写真下)。
⓼最上段巣箱とその下側の巣箱を止めている帯板(止め板) を取り外す(写真下)、テープ等で固定している場合は固定部分を取り外す。
⑨ピアノ線で、天板を外す要領(④)で最上段巣箱と上から2段目巣箱とを切り離す。切り離す場合は蜜蜂が最上段巣箱内に残らないように直前にメントール小片を口に含むかメントール入りガムをかんで(ハッカ油を唇に付けても良い)、メントールの臭いを巣上部から吹きかけると蜂は下方に逃避する。(最上段の巣箱から蜂がいなくなるまで優しく息を吹きかけます)なかなか蜂が移動しない場合は箱の上部をスクレーパー等でたたくと移動が早くなる。
⑩切り離した最上段の巣箱の脱落防止棒を引き抜くか、竹や木の場合はノコギリで巣箱内側から切断する。すると巣だけが写真下のように巣箱から取り出しことが出来る。2枚目の写真は納屋に出来た自然巣です。自然巣の場合は蜜が入っている巣を丁寧に天井から切り離します。
⑪取り外した最上段の巣箱は、用意したバケツ等の容器に蜜の入っている部分のみを包丁等を用いて取り出す。(蜜がたれるので注意、紛れ込んでいる蜂に刺されないように注意。目立つごみやスムシは取り除く。)
⑫別なバケツを用意してバケツの上に金ザルを載せ、取り出した巣を手で潰していきます。(写真下)
⑬半日ぐらいすると蜜がバケツの中に大部分垂れ。(巣屑からはミツロウが作れます)。
⑭バケツに貯まった蜜は蜜濾し布や細かい目のフルイを使用して濾過する。
⑮さらに蜜こし布で濾過すると綺麗な蜜が採蜜出来ます(写真下)。
⑯採蜜完成品(写真下)~採蜜はとても簡単です。安心してトライ。
垂れ蜜は空気中の水蒸気に触れる時間が長いため1%位糖度が低下する場合があります。日本ミツバチのはちみつの糖度は西洋ミツバチよりは少し糖度が低く75%~80%が普通です。瓶に入れると少し小さな気泡が立ちますがこれは多くの乳酸菌などが生きて活動している証拠で体にとっても良いのです。市販品の多くは82%に調整されています。この濃度はもう乳酸菌が活動できずに脱水症状(干からびたような感じ)の状態なのです。
4 蜜蜂消滅群(スズメバチ、スムシ、暑さ等による逃走・崩壊)の採蜜
蜂群が巣箱から逃走した場合や消滅してしまった場合には巣箱の中にほとんど蜜が残ってない場合が多い。原因はスムシ、スズメバチ、盗蜂、農薬など様々ですが、農薬やアカリンダニによる消滅の場合には蜜が残っている場合も多い。これらの巣箱はそのまま放置しておくことなく出来るだけ早く解体することは大切な管理です。採蜜方法は概ね次の手順で行って下さい。
①巣箱から、巣を全て取り出す。
②「蜜の入っている巣」と「空巣」と「スムシ食害の巣」等を区分けする。
③蜜の入っている巣~採蜜する。後日、ミツロウを抽出する。
④空の巣~後日、ミツロウを抽出する。
⑤スムシの食害の巣~焼却する。スムシはそのまま捨てると健康な巣箱に数時間で戻ってきます、30m位は這ってどこかの巣箱に侵入してしまうので要注意
⑥長期間巣箱内に置かれた蜂蜜は念のため加熱してください。
写真下(スムシの食害を受けた巣)
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