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本〚ラグジュアリー産業 急成長の秘密〛著:ピエール=イブ・ドンゼ

ラグジュアリー産業(いわゆるブランド産業)の歴史を経営面から見た書籍
①ヨーロッパが世界に誇るラグジュアリー産業ができるまで
 グローバル企業上位にヨーロッパの企業が名を馳せているのは、情報産業でも工業産業でもなく、唯一、[ラグジュアリー産業]である。
 私が知っている全てのブランド品は、ヨーロッパのラグジュアリー産業3社[LVMH/リシュモン/ケリング]のうち、どれかに属している。
 例えば、ルイ・ヴィトンのバッグを買えばLVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)の売上になり、カルティエのリングを買った場合はリシュモンの売上、グッチのお財布を買えば、はケリングの売上にそれぞれなる。
 これらの3社[LVMH/リシュモン/ケリング]は1980年代から小規模な家族経営だった一流で高級な品を製造・販売している事業を買収・統合・編成し、グローバル企業として設立させた。
 このことにより、ラグジュアリーな製品を生産販売していた中小企業の多くはグローバル社会で生き残ることができた。
 更にはコングロマリットされた中小企業が他の追随を許さないくらい大企業なり、その後、ヘリテージ戦略を用い、これまで培ってきた貴族向けの高級な品物・皆が憧れるようなイメージのストーリーを仕立て、強固なイメージを発明し一貫性を貫く。また、規模の経済を用い、各製品にかかるコストを以前よりも抑えられ、売上を伸ばしていった。
 また、コングロマリットによりラグジュアリー企業を拡大してきたLVMH/リシュモン/ケリングの3社は、〚地中海型資本主義(アメリカのように金融市場へ大きく依存せず、多数の仲介者を介してピラミッド型の組織構造を構築)〛を用いており、企業家が1人で資本の大半を直接所有せずとも、企業をコントロールする事が可能なのである。
②イタリアの例外
イタリアはヨーロッパの一国ではあるが、グッチやアルマーニなどのラグジュアリー産業は、コングロマリットするという意欲がなく、家族経営という色濃い社風が合併として運営するうえでは妨げとなることを理由として挙げている。
③グローバル・ラグジュアリー産業アクターたち
LVMHを設立したアルノー氏や、リシュモングループを設立した南アフリカの投資家ルパート氏、ケリングの起源となったピノー氏。
 彼らの金融と経営の手腕がなければ、これほどにも稀有な職人技術によって作られたラグジュアリー製品は今の日本の素晴らしい伝統工芸品のように撲滅の一途をたどっていたことでしょう。

〚日本での百貨店縮小とに関係〛
 本書では日本の百貨店の役割についての詳しい記載がないが、近年デパート呼ばれる日本の百貨店が無くなっている事へ寂しさを感じている方々も多いのでは無いでしょうか。 
  戦後からバブル期にかけて、デパートの屋上で遊んで育ってきたシニア世代は、週末にデパートへ行き気分転換をする、という生活スタイルを変えざるを得ない状況にある。
 1987年にLVMHが設立され、日本での販売は百貨店や商社に頼らずとも(ライセンス契約を結ばなくとも)、日本で子会社を設立、表参道などへの高級繁華街に凱旋店を構えるようになった。百貨店で販売しなくてもよくなったのである。戦後から今に至るまでの百貨店の財務情報は分からないが、ライセンス契約料が収益の多くを占めていたとすれば、経営が危うくなるのは必然と考える。

 〚本書を選んだきっかけ〛
私は、学生時代よりラルフローレンが大好きだったがファッション関連の書籍にはラルフローレンの本は1冊もない。
 ChannelやGIVENCHYなど関する文献や写真集が何段にも本屋さんにあるのに。
 本の後半にテリー・エギンスという、ジャーナリストによるNYの〚芸術的な創造性ではなくマーケティングに基づいて行動するNYのデザイナーたちに厳しい目を向けている事から見えてきた〛
 下記より、ラルフローレンの服はファッションという位置づけではなく、プロダクトのカテゴリーとしてとらえられている。
 確かにラルフローレンは、ユダヤ系アメリカ人が1代で築き上げた、マーケティング優位になるように作成したただのプロダクトのすぎない。
ー引用ー『パリで修行したこともなければ、学校その他でファッションを学んだこともない、作品集を持たないデザイナーたち。デッサンもしない、縫製もしない、つまり「デザイン」しないのである。』ー引用終ー


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