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映画祭いよいよ開催!/『ジョージア映画全史』試し読み vol.2

教育評論社編集部です。

いよいよ明日31日待ちに待った「ジョージア映画祭」(東京・渋谷:ユーロスペース)の開幕になります! 

開催を記念しまして前回に続き、8月の新刊、はらだたけひで著『ジョージア映画全史』の試し読み第2弾の記事を公開します。「ジョージア映画祭」へお出かけいただくとともにぜひ本書も手に取ってみてください。

早速、試し読みのスタートです!

(読みやすさのため改行を入れています)


ジョージア人とジョージア映画


ジョージアの映画人はジョージアの過去と現在、そして未来を自ずと背負っている。ジョージア人は苦難の歴史のなかで固有の文化、芸術を守り、育んできた。昔、ジョージアでは敵国の侵略に対して、戦士は懐に葡萄の枝を忍ばせて戦いに赴き、たとえ倒されても自らの屍からジョージアを表す葡萄の木を新たに芽吹かせたという。わたしはジョージア映画の存在にも、この葡萄の枝の習わしを重ねて考えている。

ジョージアの映画人は個性豊かであり、それぞれが確固たる自身の「文法」を持っている。そしてジョージア人であること、ジョージア人のために映画を作ることを誇りにしている。映画界の重鎮であるエルダル・シェンゲラヤ監督はかつて「ジョージア映画はジョージアの人々のためのものであり、この国の人々の生活や思いを描いている。そのことによってジョージア映画は、世界中の映画のなかでも、独自の位置を占めている」と述べていた。

ナナ・ジョルジャゼ監督は「ジョージアはわたしにとってすべてです。祖国であり、人生であり、運命であり、わたしの子どもの未来でもあります。わたしのすべてはジョージアと結びついています。ジョージアを除いてわたしの仕事も人生も考えられません。ほんの僅かでもジョージアのために貢献出来ればと、ただその思いだけで生きて、仕事をしているのです」(『朝日ジャーナル』1990.12.14)と熱く語っていた。

愛、夢、情熱、勇気、誇り―ジョージア映画からはこれらの言葉が思い浮かぶ。ジョージア人は個性が豊かで、愛すること、夢見ることに長け、彼らの情熱と勇気は比類ない。特にジョージア人であることの誇り、精神の気高さは特筆すべきだろう。ジョージアの映画人の心には、歴史ある民族の一員としての自負が常にある。

ラナ・ゴゴベリゼ監督「金の糸」(2019)で引用された哲学者メラブ・ママルダシュヴィリの「陽気な悲劇性」という言葉は意味深い。―度重なる困難にもかかわらず、生きる歓びを大切にして、決して屈しない、つよく大らかな心。そして友情に対して揺ぐことのない、無償の与える心、歓待する心。それらジョージア人の気質のすべてが映画の核となって、その比類ない魅力を形作っている。

(本書25頁へ続く)


続きは本書でお楽しみください!

▪️目次

第1章 ジョージア映画の誕生――ロシア帝政末期 
第2章 ジョージア映画の草創期――独立からソヴィエト政権下へ 
第3章 抑圧と粛清――スターリン時代の暗黒 
第4章 世界大戦と戦後の窮乏のなかで 
第5章 ジョージア映画の再生と新しい波 
第6章 百花繚乱のジョージア映画 
第7章 ジョージア映画の成熟と発展 
第8章 改革、そしてソ連邦の崩壊へ 
第9章 独立後の混迷、激動する世界で 
終章 ジョージアという魔法 
〈年表、本書におけるジョージア映画の監督と作品、参考文献〉

▪️著者

1954年、東京都に生まれる。1975年から2019年まで、東京・岩波ホールで世界の名作映画の上映に携わる。1978年に映画「ピロスマニ」の公開を担当して以降、ジョージア文化、特に同国の映画の紹介に努め、2018年、2022年、2024年にジョージア映画祭を開催する。

絵本に『パシュラル先生』のシリーズ、『フランチェスコ』(ユニセフ=エズラ・ジャック・キーツ国際絵本画家最優秀賞)、『子どもの十字軍』(訳・絵)など多数。挿画も『ダギーへの手紙』(E・キューブラー・ロス)、『十歳のきみへ』(日野原重明)、『森のお店やさん』(林原玉枝)など多数。

ジョージア関係の著作に『グルジア映画への旅』、『放浪の画家ニコ・ピロスマニ』、『放浪の聖画家ピロスマニ』などがある。

2022年にジョージアの各都市で「聖ピロスマニ」と題した個展(在ジョージア日本大使館主催)が開催される。日本における画家ピロスマニとジョージア映画の紹介に対して、2019年にジョージアのピロスマニ祭で感謝状、2022年にジョージア外務省から文化功労賞「ジョージアの友人」、2024年に在日ジョージア大使館からジョージア日本友好賞が授与される。

▶本の詳細・購入はこちらから

いよいよ8月31日から、渋谷のユーロスペースにてジョージア映画祭がはじまります!!
本書を手に、ぜひ映画祭にも足を運んでみてください。


*ジョージア映画祭2024の公式サイトはこちら

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