ハルサメとナッツ9 あの陽に還える
ハルサメとナッツ9 あの陽に還える
毎回とは限りませんが今作はエログロ描写や官能描写を多大に含みますので20才未満の閲覧はご遠慮してくださいね♪
なお現実と烈しく乖離している部分が多いですよ。
まずは1番最初に、咲ちゃん、こと岡浜咲ちゃん、彼女のスペックは見た目身長160cmくらい体重不明なものの、やや細めな割に胸の発育は良くGカップ以上ウエストのくびれやマンゴーの完熟度もナッツに引けを取らず男を狂わせるタイプと言えよう。
肩にかかるくらいのきつめにウェイブがかかった茶髪が特徴で大きな目の大部分を占めてる眼球は純白な中に緑色の瞳が美しい。
地球を出発した時は当たり前だけど中学1年生の1学期初め頃で12才だったが既に地球時間で6ヶ月は過ぎているがので7月始め頃生まれの彼女はもう13才のはずだ。
はい、次は私の悪友、じゃない親友のナッツこと夏野明美、彼女も咲ちゃんと同じく中学1年生だが誕生日が確か3月だった気がするので既に地球を旅立った時は12才だった気がする。
彼女に関してはスペック詐欺と言っても過言じゃないと思う。
黒髪のロングストレートヘアには違いがないのだがその長さと色は胸元あたりから腰まで自由自在に変えられる。
顔はどこかおっとりとした母性を感じさせる某エリカ似だが身長はデフォルトで165cmであるものの実際には145〜175cmまで自在に変えられるらしい。戸籍上は13才の現時点では中学1年生ということになっているが脱ぐとやばいタイプで私はてっきりDカップ程度と予想していたが実際にはHカップ以上はあるらしくて、くびれたウエスト以上にピンク色に完熟したとても柔らかいマンゴーと12才とは思えない大人の色香ははそれを見た男どもを性欲のアリ地獄に引きずり込むだろう。
彼女のニックネーム、ナッツは彼女の口がナッツ類しか受け付けられないことにある、ピーナッツ、マカデミアナッツ、ジャイアントコーンなど、とにかくその手の食い物しか受け付けない。
彼女は7大欲求に関する悪魔らしいが私なんかよりもはるかに長いキャリアを持つ高等悪魔であるらしい。少なくとも一つの恒星系文明が生まれてから滅亡するまでを見とってきたらしい。
最後は私、私の属性は人類、いわば人間などではなく淫魔と呼ばれる、まあ最下層のエロスに特化した悪魔である。
世の中の人間たち男女のエッチな行為やすけべな夢想などから快楽や愛液、精液などの甘い果実を横取り、いや、少しずつ分けてもらいながら棲息しているというとても強欲な、じゃないつましい悪魔だ。
ちなみに私の人間形態での見た目は一応戸籍上は中学1年生12才でありながら身長140cm未満Bカップというお子ちゃま体質である。ちなみに誕生日はナッツよりも2ヶ月早い1月の29日ということになっている、私の母親である詩織と幸恵さんふたり共に高校3年生だった頃に期間をずらして付き合っていた男性が唯ひとり、聡さんとゴムなしピルなしエッチをしたのが年末の慌ただしい時と3月半ばごろに母が日本を旅立つ時にラブホで年を誤魔化してオールナイトで5〜6発はやったらしい。それで問題は誕生日から逆算すると実際に着床した可能性が高いのはラブホでのオールナイトであるらしいと言うことだったが、母である詩織がかなり未開の国に帰化していたのとちょっと怖いことに自力分娩をしたので誕生日に関してはかなり怪しい部分がある。
しかも実は私は実父であるはずの聡さんとはDNA検定の結果血縁関係が全くないことが証明されてしまっている。
ちなみに幸恵さんと聡さんの間には1学年年下の義弟である健太くんがいる。
当然、彼と私の間には本来なら年齢差は2ヶ月彼の方が年上なのだがチョチョイと記憶改ざんををさせてもらい私は母、詩織が高2の時に海外で産み落としてあちらの国の面倒見のいい人に育ててもらっていたことになっている。
名前は波瑠沙芽と書いてはるさとみと読む。
肩にかかる程度の春雨のような透き通った白髪が特徴でこれも私のニックネーム春雨の由来になっている。
おっといけない、またしてもスター、じゃなかった、星紫亜さんの存在を忘れていたよ水星生まれの水星育ち、半導体生物が進化し過ぎちゃった末に中二病をこじらせてA級淫魔処刑執行人になったと言う実体を持たない化け物だ。
見た目は15〜16才くらいの発育の良い娘、結構な美少女と言いたいが赤い癖毛のたぬき顔、あう!
[こら、お主あたしをまるで〇〇の魔女のヒロインみたいな容姿みたいな言い方をしたであろう。]
私の全身が突然に激しい痙攣を始めて周囲に凄まじいまでの放電現象を起こしていた。
そう、あの日、母がいた役場を自動小銃を持ち込んで襲撃して母親の詩織を惨殺したテロリスト武装集団、総人数で35人いたけど私がたったひとり取り逃した犯人がいた。それはあの女、遺伝子上は私の母親であり咲ちゃんの母親でもあるあの火星からやって来た女性クローンだった。彼女が真っ先に私の母、詩織に数えきれないほどの弾丸を撃ち込んだ張本人だった。
そしてその射線上に確実に私はいた。私自身も血まみれになって一度はその場に倒れ、死んでいたのだ。
それを生き返らせやがったお節介が目の前にいやがる。
『ナッツ!なぜ私を母と一緒に死なせてくれなかった⁈私はこの世界がどうなろうが知った事じゃない、詩織のいない世界なんて無意味なんだよ!』
私が放った電撃がはるか遠くにある頭上の木星を貫くと一瞬だけそこが成層圏から地表付近まで糸状に核融合を起こしたがやがてすぐに収まっていった。
[その場に夏野明美、貴様がいたとは意外だったな]
意識の遠くで星紫亜の声が聴こえた気がした。
『別に見殺しにしたわけじゃないんだ、ただ、の時のあたしにはあれが精一杯だったし、春雨の救出を優先させたのは彼女、詩織さんの強い意志からだっんよ』
私の放電をまともに受けてしまった咲ちゃんは全身に大火傷を負い意識不明の重体になっていた。
私が無意識にやってしまったこととはいえすぐそばにナッツがいなかったら即死していたかもしれない。
それでも私はナッツに対して恨み節をぶっつけずにはいられなかった。
あの人、詩織さんは私が受精卵となって細胞分裂を繰り返している間も、胎芽に育ち羊水の中で浮かび始めていた時も胎児となって大きなお腹にしてしまって苦しい思いをしている間も私には温かで優しい環境を与えてくれた。
これは紛れもない事実だ。しかも私はそれほど広くない胎嚢(たいのう)の中だったが私はいつもひとりではなかった。
私の目の前にはいつも優しそうなお姉さんがいた。それが彼女、詩織さんの分身である事に気がついたのは海の中でサメに襲われた時だった。リアルタイムで彼女の右腕の肘から先が食いちぎられて、すぐに左足根本から食いちぎられたのがリアルタイムで理解できたのはそのためだ。
だからこそ私は彼女に対して的確な反撃のアドバイスをする事ができたのかもしれない。
サメに逆襲をして逆に相手を食べ尽くして得たエネルギーで右足首の輪っかを外してなんとか浮上して浜辺に辿り着いたものの詩織さんの死はほぼ確定していたようなものだった。
右手と左脚太ももの太い血管から噴き出している出血の量が多くてあと数十秒で脳死、それから数分で彼女の生体反応は停止するはずだった。
私は臍の緒から流れてくる液体を逆流させて酸素と栄養素を含んだ血液に変換して彼女の心肺機能を再稼働させた。
細胞分裂を活性化させて詩織さんの身体の復元させる事をいそぐ急ぐと同時に私は彼女をライフルのターゲットスコープで覗いている男を感じていた。理事長に雇われたプロのスナイパーだろうけど面倒なことは苦手なので取り敢えず地球というこの惑星から逃げることにした。東の方向にセーブしながら飛んだつもりだったが地球の周りを2周した時点で月の裏側を通りさらに太陽系の外周に向かって飛んでいた。
その頃には詩織さんの身体はほとんど完治していたと思う。
『それにしても何故私は彼女に執着しているのだろうか?』
少し不思議な気がしていた。
『彼女が私に何かしてくれただろうか?』
否、彼女は多少の特殊能力は持っていたが理事長ほどの権力を持っていたわけじゃないし、かと言ってあの自分の胎の中にできてしまった受精卵を他人の胎に怪しげな能力を使い植え付けてしまえるような能力は持っていなかった。
志乃出来るのは層の薄い領域までの透視能力とかべぬけのあまり役に立ちそうもない能力だった。
詩織さんがあのクソ親父の種を植え付けられてからひと月近く過ぎた頃、私に彼女は問いかけて来た。
『君の希望はなんだい』
それは彼女が自分自身に問いかけた言葉だったのかもしれない。
でもそれに対して私は反応してしまっていた。
『時間を5ヶ月も過去に戻す、しかも私がお腹の中に居る状態のままで』
それが私の希望だった。
自分には会いたい友人がいると彼女には伝えたがそれは漠然とした理由だった。
彼女氏はとても温かな家族がいた。彼女自身は気がついてはいなかったようだったが彼らは大震災の津波でさらわれた本当の詩織さんが彼女じゃないことに割と早く気がついていた。
本当の詩織さんは通っていた中学の寮に入って生活していた。
だから当時本当の詩織さんがどんな服を着てどんな姿をしていたか知る者もほとんど波にさらわれてほとんど居なかった。
大津波から1週間が過ぎても本当の詩織さんは戻って来なかった。
それが13日過ぎたある日、海辺をフラフラと歩いている少女の目撃情報が彼らの耳に届いた。
初めは半信半疑だったが3日ほどしても彼女に引き取り手はいなかった。
ただ記憶を失い、虚な目をして救護班の介護を受けている彼女の姿を見ているうちに本当の自分の娘である気がして来たということらしい。それほど彼女は本当の娘に似ていたらしい。
ただし決定的な違いは性格だという。
いつもは控えめな娘で他人同士の争いに決して口を出さなかったという。
ある日、被災者同士が言い争いをしていたらしい。
ひとりはたったひとりの娘さんを波に攫われて運良く漂流していたところを漁船に拾われて軽傷で、とはいえ右腕を骨折して左肩も脱臼していたのだが。
もうひとりの娘さんはもっと悲惨だった。発見救助も早かったが腹にがれきとなった木材が突き刺さっていて子宮などの内臓が細菌によって腐敗が進んでいたという。重傷と言うべきかもしれない。
懸命の救命治療は続けられたが派遣医師団が最終的に下した判断は肝臓の半分と子宮と右腎臓及び膀胱と小腸の一部の摘出だった。
その子の命が助かることを思えば安い代償かもしれないがその娘にとってはこの先とても辛い人生を歩ませることになる。
ある日骨折と脱臼で済んだ子の父親がその娘の前で迂闊なことを言ってしまった。
「傷が治ったらパーティしような、付き合っていた彼氏と結婚をして子供を産んで幸せな人生を築こうな」
その言葉を聞いてしまったその娘は両手で顔を覆い隠して泣き出したと言う。
重傷を負った娘の父親は一瞬怒りの表情をあらわにしたが握りしめた拳をもう片方の手で必死になって押さえて悔しがっていたと言う。
彼の妻も恨めしげな目をしてその継承で済んだ娘と父親を睨みつけていたと言う。
本来の詩織さんならその無神経さをとがめる何か言えるような娘ではなかったらしい。しかし彼女は堂々と言い、そして相手に謝罪をさせた。
それからしばらくして家族の前で『そんなことしたっけ?』ととぼけていた。
それよりも大胆だったのはその後の偽詩織さんの言動だったと聞かされた。
仮ベッドで横になって泣いているその娘のかたわらに寄り添うとそっと耳打ちをしたという。
『大丈夫、人生が終わったわけじゃないし赤ちゃ部屋も半分以上なくなるけどまだ卵を作る部屋は残るから』
そう言ってその子の下腹部に軽く触れると一瞬その娘は痛みで顔をしかめたけどすぐに安らかな表情になって眠り始めたという。
『もしも心に決めた好きな相手が出来たら私に君の卵をちょうだい、私が人工授精して私のお腹の中で育てて産んであげるから、それから君の下の世話は私がやるよ、だってもう君と私とは大親友なんだから・・・」
そこから先は詩織さんの両親も相手の両親も聞き逃していたという。あまりにも浮世絵離れなことを言っていたらしい。それこそ中学生の少女が言うような、いわば中二病的な発想だと思っていたらしい。
『でもその時の娘さんが今の詩織の親友の幸恵さんだったのはびっくりだったけどね』
朝の食卓で言うようなセリフじゃないけどそれを聞かされた詩織さんはただ笑っていた。私、波瑠沙芽のお腹に伝わって来た感情はとても温かく感じた。
こうして卵を作る機能を持たない少女と赤ちゃんを産む部屋を持たない少女の奇妙な友情が始まったらしい。
私、詩織は親友である幸恵に1通のメッセージを送った。
『一応、君は聡くんと生でもエッチはできるから安心して、内膜症とか心配しなくてもいいから毎日体温測って排卵期が近づいたら私が今住んでいるこの国に来て、卵子を採取するから。
それと君の穴は先が密閉状態になっているから聡くんとエッチして出してもらった精液はもれなく入口から溢れ出すからこれから送る道具で採取して試験管に入れて冷凍便で送ってね、色々ゴムの中の薬品とか気になるから必ずナマで出すように言ってやってね、や・く・そ・く・したからね』
そうしたらしばらくして私のPCに返事のメッセージが届いていた。
『本当にいいの?あなたも聡くんを好きだったんじゃ?とりあえず心配なのでゴムをつけてもらいました。排卵期が近そうなので会いに行きます、残念ですが聡くんは単位がアレなのでついて来れないそうです』
そして彼女は某国の施設で働いていた私の元に来ていた。
そして彼女のお腹を切開して左右の卵巣で熟成しかけていた卵子数個を取り出すと数機ある人工卵巣機に移した。
『約束していた聡くんの冷凍性液は?』
と言うと幸恵は申し訳なさそうに言ったけど心配だから後で必ずナマで出した精液を今度は冷蔵便と冷凍便の2種類に分けて送ってもらうことにした。
『ねえ、詩織ちゃん、私、本当に聡くんと幸せになっていいの?自分の好きな男の人の子供をお腹の中で産んだらすぐに取られるの悔しくない?』
幸恵があまりにも真面目に聞いてくるのでつい私は吹き出してしまっていた。
『まさか君はあの日、私と交わした約束を忘れちゃいないよね?』
由紀恵は両目からたくさんの涙を流しながら頷(うなず)いた。
私と由紀恵はその夜、ベッドを共にした。本当はふたりとも裸でといきたかったがほぼ年中寒いこの国では日本人である彼女にはキツイかもしれないという配慮からだったが
『ねえ、本当は詩織は何者なの?、あの日から違和感を感じていたんだけど』
やっぱりバレていたか?と言うことに今更ながら気がついた。どうやらあの話をマジで信じていたようだった。
『高校を勝手に中退して行方不明になったり不思議な人、本当は宇宙人でしょ』
突然彼女は確信したかのように言い出した。
『近からず遠からずね』
私がそう言うと幸恵は勝手に自分のパジャマを脱ぎ出して裸になった。そして私のパジャマズボンも引きずり下ろした。
『寒くないの?』と私。
『詩織の存在を近くに感じるだけで身体が火照って』と幸恵。
私もあきらめて裸になるとふたりで抱きあってお互いに相手が感じそうな場所を舐め合っていた。
朝目を覚ますと私の隣には既に幸恵ちゃんの姿はなくキッチンから美味しそうな香りが漂って来た。
目玉焼きと焼きベーコン、ボイルしたウインナーそしてコールスローを用意してトーストにバターを塗っているエプロン姿の幸恵がいた。
『ありがとう』
私は涙ぐみながら裸のまま彼女の背中に抱きついてしまった。
そしてその日のうちに幸恵は帰国して行った。
『どう?別に男女のエッチじゃなくても美味しいでしょ』
詩織の言葉には確かな確信が込められたいた。
そして彼女は聡の精子を幸恵さんの卵子に人工授精させて細胞分裂が始まったことを確認すると彼女が所属している研究スタッフに着床をさせる処置をお願いして手術用のベッドに寝かされたまま手術室に入って行った。
着床は上手くいきエコー検査でもその小さな存在は確認できるようになっていた。
『私がこれよりも少し大きくなった頃にタイムリープして5ヶ月も逆上がりしたんだよね』
私、波瑠沙芽が言うと鏡に写っている詩織は少し微笑んでいった。
『さとみちゃん、ほんとは私と学生生活を暮らしたくてあんなことをしたんでしょ』
ーいや、そんなことないしー
と私、一応否定はするが鏡に写る詩織のニヤニヤ笑いが止まらない。
「なーに、にやついているの?気味が悪い」
背後から幸恵に声をかけられていた夢をみていた。
『私、はたちになるまでにふたり子供を産む夢をみたんだ』
『それでは恋をする暇がないじゃない、詩織は人生を子育てに捧げる気ですか?』
『あの日交わした約束、覚えている?』
女の子同士で子供が作れるわけがないじゃないか、そんなことくらい生まれてさえいない淫魔の私でも知っている。
こんな馬鹿なことを言っているようだからあんなエロ理事長や火星から来たインベーダーに騙されて私を孕まされる羽目になったんじゃないか?いい加減に気がつけよ。
鏡に写っている私に悪態をついたが詩織の耳のは届いていないようだった。
『あんな約束を本気にしていたの?あたしは高校に入ってからこの世から詩織が突然いなくなる夢を何度もみた、あなたはあたしの子供よ』
と突然に言った幸恵。
人目を気にしないでそんな幸恵に急に抱きついた詩織をみてさすがに淫魔である私でさえドキドキしてしまった。
ここまで女の子同士の恋が刺激的だとは想像さえしていなかったせいもある。
私は産まれてさえいない胎芽に毛が生えたような幼い淫魔だったが過去に何度も男女の営みが生み出す甘い精液とほろ苦い愛液の味をまだ覚えている。他にもさまざまな分泌類や感情などが入り混じって複雑かつ濃厚な味を醸し出して私を満ぞ来させてくれたものだったが今、目の前で抽出されている純粋な愛液の味に私は酔いしれていた。
『大丈夫だって、私はどこにも行かないよ?この地球から離れる気はないからね』
意味深な言葉を残して私は夢から覚めた。
この国に来てからの詩織はいつも夜は何も身につけずに産まれたままの姿で北欧調のベッドの上で眠りについている、敷いてあるクッションはあるもののそのしなやかな、しかしお腹のふくらみが目立ち始めたその身体の上には何もかぶせてはいなかった。
透明な姿になっている私はいつも彼女に正面から抱きつくようにしていつの眠りについていた。
詩織の中にいる小さな命の心音と私の心音がシンクロして心地よかった。
部屋の中が暖房がよく聞いていて暖かいという訳ではない、むしろこの北極圏に近いこの国では暖房は必須で、しかもこの部屋の気温ときたら暖かい日の日中でも-18°Cより上に上がったことはない、まるで冷凍庫のようだ。そんな中でも詩織の周りは常に暖かいし、気持ちがいい。
『おはよう、波瑠沙芽ちゃん、今日も元気かなぁ?』
彼女は何故か私の事を自分の姓名ではなく、彼女の親友である幸恵さんが今付き合っている聡さんの姓名である『波瑠』で呼ぶ。
『何か意味があるのか?』とたずねたことがあるがなぜかいつも笑って誤魔化されてしまう。
それから何ヶ月が過ぎて詩織はひとりの男児を出産した。
彼女はすぐに幸恵にメールを送ると彼女の所属する研究所のリーダーに相談していた。
生まれたての赤ちゃんを飛行機に乗せて運ぶのは不可能、しかも今度こそは軍事上の機密とやらで某国の政府ににらまれている。
ので私は代案として某国にて幸恵さんの卵子に聡さんの精子を人工授精させて詩織の胎の中で育てて出産したことにしてある。
最初は許可などの申請が面倒だと思っていたがこの国の厚生省とやらと一悶着している時にたまたま権威のある女医さんが訪れていてそれがたまたまあの津波災害の時に被災地に救援診断に訪れていて、緊急処置で幸恵さんの子宮などを削除した本人であり『そういった理由があるのなら今回だけは』ということになって諸々の人工授精と代理母による借り腹の詳細なデーターと共に生後6ヶ月を条件に日本への入国が認められた。
もちろんその時は私と母である詩織の存在は隠されていた。私の存在そのものが某国にとって国家機密であり、母である詩織に関してはまだ例の理事長に生存を知られるのは再び命を狙われる可能性があったからという理由もある。
しばらくして詩織が代理母となって産んだ男の子の父親である聡さんと幸恵さんから1通のメールがPCに届いた。
どうやらその子は『健太』という名前がつけられて今ではつかまり立ち歩きができるようになって来ているという。
『もうそろそろ〇〇電気グループの理事長も詩織の死亡を確信しただろうから会いに来ないか?』
といった内容だったけど詩織さんは仕事が多忙である事を理由に帰国を拒んだ。
しかし彼女は両目からたくさんの涙を流しながら喜んでいた姿を私は今でも覚えている。
あの役場での銃撃戦で母である詩織だけでなく私自身も命を落とし、なおかつ私と母の体に銃弾の嵐を降り注がせたのがあの火星人の女だったというショックと私だけを生き返らせたナッツに対する怒りの暴走が咲ちゃんをこんな目に合わせてしまった。
『もしも咲ちゃんがこのまま死んでしまったら私は永久にこの星にいようかな』
私は自分がしでかした彼女に対する電撃行為が不可抗力であり尚且つ自分が持っている能力ではないことくらい分かってはいたが。
『ごめんね、私が取り乱したばかりに』
私はつぶやきながら彼女の動かなくなった焼きただれた体を開きしめている間に自分自身もうとうととし始めていた。
私は自分が何者かわからないまま海の中を漂っていた。
すると突然に海の中が大きく荒れて一方に圧倒的な圧力で押し流されたかと思ったらしばらくして今度は逆方向に一方的にものすごい速さで流され始めていた。
目の前をいろいろなものが私よりも早く流されてゆくのを感じていた。その中のひとつ、金属の棒が2本、私の胸と腹を貫いていた。
まさかこの星について着水早々こんな目に会うとは想定さえしていなかった。
理由はこの星の地殻変動による地震で起きた津波だったと何故かすぐに理解できたが。
目の前を同様にほぼ命の炎が消えていた少女が流れてゆくのが見えた。
彼女も私と同様にがれきに胸を貫かれていた。
しかし私と大きく異なったのはその瓦礫が木材で分解しやすかったことくらいだろう。
それに彼女の中にはこのへっぽこ火星人とは違い『まだ生きたい』という思いがく強く感じられていた。それにその少女は地球人でない何かが憑いていた。
『君の願いはなんだい』
私は強く彼女に問いかけてみた。
『まだ生きたい、まだ父にも母にも恩返しができていない、このまま死ぬのは嫌だ』
それを彼女が言った時に私はひとつ提案をした。
『幸いあなたは第二次性徴を迎えて生理もあるようね、私と取引をしないかしら?私と契約をしましょう』
私はそういうと彼女は頷いてむしろ私を受け入れてくれた。
『その代償としてあなたはとても辛い人生を歩んでゆくことになる、それでもいいかしら?』
その娘の意志に迷いは感じられなかった。
まあ確かに二次性徴を迎えていたとはいえ彼女もまた卵子を作れない体だったという時点でどっちもどっちだったけど。
それがかえって意識の融合という奇跡を起こしたのかも知れない。
そして記憶は某国の役場で銃撃テロを受けて母である詩織があいつに蜂の巣にされた時に戻る。
その契約を結んだ時点であの場所で私は銃殺される運命になっていたのは確定していた。
相手は私と同じ火星からやってきた妖魔と契約済みの女性クローン、しかし私の親友でもあり娘でもある波瑠沙芽も巻き添いとなり蜂の巣にされ殺されてしまうのは想定外だった。
『おばちゃま、あなたの望みは何?』
消えゆく意識の中で私はとんでもない存在の声を聞いた気がした。
『まさか、あなたは』
私が問いかけると見た目の年齢は波瑠沙芽とほぼ変わらない幼女が言った。
しかし自分如き妖魔が敵うような相手ではなかった。
もしも彼女がこのテロの主犯だとしたら。
それでもなんとしても波瑠沙芽にだけは生き延びてほしかった。
私は絶望を感じざるを得なかった。しかし彼女はこう返してきた。
『契約成立ね、あなたの魂は常に私の親友春雨と共にあり』
彼女がそう言ったと同時に私は波瑠沙芽と一体となりテロリスト武装集団の一掃を開始していた。
『というわけだからあなたを無理矢理にでも意識のない状態で春雨ちゃんの中に封じておくしかなかったんだけど、今、目の前に二次性徴を迎えてからかなり過ぎる女の子が目の前に黒焦げになって死にかけているんだけど、どうしますか?もと詩織さんと契約を結んでいた妖魔さん、いえ、いまだに未練たらしく詩織さんの記憶と意識と彼女に憑いていたなにかを抱きかかえ続けていたダメダメ妖魔さんというべきかしらね』
ナッツにそう言われた私の中の詩織さんが反応したせいか私の目から大量の涙が溢れ出して頭上に引き込まれていった。
『木星に誓う、君はこれからどう生きたい?』
『普通の女の子として、いいえあいつらのせいで人生を狂わされた人たちに真っ当な人生を送ってほしいです』
咲ちゃんはボソボソっと言ったが私の耳にははっきりと届いた。
『私と契約を結んだからといってそれが必ず実現するとは限りませんよ、それでもいいですか?』
私、いや私の中の詩織さんは念を押すように言った。
『実績のない妖魔じゃないのは私もさとみさんがみていた夢でちゃんと確認しました、私は妖魔、詩織さんと契約します』
私は咲ちゃんの言葉を聞いてうなづいた。
『では私、元、詩織はこれにて岡浜咲と契約を結びます、ってあの妖魔が言う契約って私たちと親友になることだからね、これからは呼び捨てだよ、咲』
『もちろんだよ、春雨とナッツ、そんでもりゆき?』
最後にとんでもないボケをかましてくれたがそれでも咲の声がだんだん力強くなってゆくのが感じられた。
『咲の火傷が完治するのがここに居るみんなの力を合わせても1週間以上、地球に帰るのはそれからね』
ナッツは言うと私と咲に軽く抱きついてきた。すでに治療は始まっているようだ。
『しかしそれにしても幸恵さんも聡さんも私に大ウソついていたな、3月末のオールナイトでバッコンバッコンなんて大ボラ良く言えたものだ』
私がグチるとふたりとも大声で笑い出した。
ハルサメとナッツ9 あの陽に還える
終わり 10に続く
誤字落字などは気が向いたら直します。