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ショートショート18「壺中天」

「お、酒かい」

「はい、盃と金を渡してくりゃ飲み放題ですよ」

旅の宿、商人の兄ちゃんが酒を振舞っていた。

「こりゃ凄い綺麗な黄金色だ」

上手い。こんな上手い酒を味わったのは久しぶりだ。いいのかねこんな贅沢なことをして。

「つまみもないか」

「ありますよ、しばしお待ちを」

そう言うと兄ちゃんは酒壺をツンっと指で弾くと中から、田楽や湯豆腐、ゆでダコ、芋の煮物やら次々取り出した。これには俺も度肝を抜かれた。こりゃどういうからくりだ。

「兄ちゃんもっと酒くれよ」

ベロンベロンに酔った男が割り込んで来た。

「では、盃を」

「ああ?いいよちびちび飲むのも飽きた。ほらよこせ」

男は強引に酒壺を奪うと直接口を付けた。すると、男は吸われる様にして壺の中に飲み込まれてしまった。

「なっ⁉おっさんは?何処へ消えた」

「ああ、変な事する方が悪いんですよ。壺の中には別天地があるんでさ、もうあの人戻ってこれませんよ」

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