キミが隣にいない夜
ズルいよ、キミは。
あれだけ、私のことを好きだって言ってくれたのに…
もう1週間も会っていない。
電話しても出てくれないし、LINEしても素っ気ない返事ばかり。
ほかに好きな人でもできたのかしら。
頭の中に良からぬ妄想が駆け抜ける。
そんなことない。
彼に限ってそんなことないもん。
あれだけ私のこと好きだって言ってくれたんだから。
仕事が忙しいだけだよ、きっと。
ひとり寝のベッドの虚しさ。
さみしいよ。
どうしてあなたは、隣にいてくれないの?
私の心には、ぽっかりと大きな穴が開いてると言うのに。
夢うつつにまどろみながら、ウトウトしていると、突然スマホが鳴り響く。
「ごめん、遅い時間に。もう寝てた?」
突然の彼からの電話。
「今から、そっちに向かいたいんだど、いいかな?」
えっ、もうすぐ日付が変わる時間だよ?
明日もお互い仕事があるんだし、おしゃべりする時間もあまり取れないんだけど…
「ん、うん。別にいいけど、何分くらいかかりそう?」
「今仕事が終わったから、タクシーで30分くらいかな」
突然の彼の来訪。
嬉しくないといえば嘘になる。
ていうか、めちゃくちゃ嬉しい。
どうしようか。
お化粧した方がいいのかな。
パジャマを着替えた方がいいのかな。
でも、今からどこかにお出かけするわけでもないし。
このままでもいいかな。
インターホンの鳴る音。
モニターに映る彼の姿。
私の心臓は、破裂せんばかりに鼓動を激しくしてしる。
マンションのオートロックを解錠し、部屋の鍵も開ける。
心臓の鼓動が高まり、呼吸が激しくなる。
「ごめんね、こんな時間に。今日はどうしても会いたくて、仕事帰りに駆けつけたんだ」
ドアを開けるなり、私のカラダを二つの手で包み込む彼。
汗臭さとコーヒーのニオイがツーンと嗅覚を刺激する。
「ねぇ、こんな時間にどうしたの?」
「えっ、もしかして忘れてた?」
彼の瞳が、じっと私の瞳を見つめてくる。
「今日は、俺たちが出会って6ヶ月記念だろ?どんなに忙しくても会わなきゃいけないんだよ」
ボロボロと泣き出す私。
彼ったら、私たちの記念日をしっかり覚えてくれてたんだ。
それなのに、彼の愛情を疑った自分が腹立たしい。
「どうしたんだよ。そんなに俺に会いたかった?仕事が立て込んでてどうにもならなかったんだよ」
「ずっと会いたかったよ。ねぇ、どうして連絡もくれなかったの?」
「俺もキミのことが忘れられなかったよ。でも、キミという存在がいるから仕事も頑張れるんだけど」
部屋の鍵を閉め、私のカラダをお姫様抱っこする彼。
「なぁ、いいよな?」
こくりとうなづく私。
拒否する理由なんかない。
ズルいよ、きみは。
あれだけ私のこと、放ったらかしにしてたくせに…
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