暁闇を楽しむ
深夜3時35分
漆黒の闇が空を覆っている
部屋の電灯を消し
ひとり
暁闇を楽しむ
携帯シーシャの発する仄かな電光が
ストレートグラスに佇む
ウォッカの透明を照らし出す
口の中には
ウォッカの苦味と
シーシャの甘みが
混在している
あれはいつのことだったろう
煙草のけむりを肺の中に入れ
むせるくらいの咳に苦しんでいた私
ケラケラと笑うあなた
難しい本ばっかり読んでるくせに
煙草もろくに吸えないんだねって
回転式のライターすら
まともに使えなかった私
あの頃の私は
世間知らずだったな
そんな私を抱きしめ
そっと私の唇を吸い寄せてくれたよね
ヤニの染み込んだ舌先が
私の口の中を
這いずり回ってた
あなたの色に染められる私
このままあなたと一体化しちゃうかな
若かりし頃の淡い思い出に浸りながら
ひとり
暁闇を楽しむ
私も
やがて
老境と呼ぶことができるくらいの
年齢に手が届きそうになっている
あれから数十年
少しは
世間ずれ
してきたかな