【学校教育】聴覚的ワーキングメモリのトレーニング
先生:さっき、言ったばっかりでしょ?
子供:あれ?なんて言ってたんだっけ?
こんな光景をよく見かけますが、これは、聞いた言葉を覚えておくのが苦手な子、いわゆる聴覚的ワーキングメモリ容量が小さい子の特徴です。
聞いたことを一時的に覚えておく力(以下、聴覚的ワーキングメモリ)は、生活をするうえで、とても大切な力です。
先生:13日(金)までの消印が必要ですから、今週
中に、必ず、郵便局から送ってください。
子供:忘れていました。
なんてことになると、その子の人生が変わってしまいます。
ですから、聴覚的ワーキングメモリを一定程度、高めてあげる必要があるのです。
【聴覚言語の記憶は難しい】
耳で話し言葉を聞いて、一時的に記憶しておく機能のことを、言語性、特に聴覚的ワーキングメモリといいます。
一方で、目で書き言葉を読んで、一時的に記憶しておく機能のことを、言語性、特に視覚的ワーキングメモリといいます。
目で文字を読むのは、文字がそこに存在しますので、何回も読むことを通じて、記憶しやすいのです。
でも、耳で言葉を聞くのは、言葉が一度きりで、消えてしまいますから、記憶しておくのが、とても難しいのです。
英語のリーディングテストは、なんとかなったけど、ヒアリングテストは、太刀打ちできなかったという経験がおありの方は、まさに、この難しさだったのです。
【学校教育における可能性】
では、学校教育では、この聴覚的ワーキングメモリをどのように高めてあげられるのでしょうか?
聴覚的ワーキングメモリを高めるには、聞いて覚える練習をするしかありません。
そうなると、学校教育どの場面で、その練習をすることができるのか、ということが問題になります。
現状、学校教育における聞いて覚える練習は、国語科の話す聞く領域において行いますが、小学生は、多くとも年間25単位時間です。そのなかで、聞いて覚える練習をするほかに、話す練習をします。となれば、この数単位時間数の中で、聴覚的ワーキングメモリを高めるほどの聞いて覚える練習をすることは、極めて難しいこといえるでしょう。
では、どの場面で、聞いて覚える練習をすればよいでしょうか?
それは、毎日の授業です。
毎日の授業には、十分な話し言葉が飛び交い、聞いて記憶する練習をするにはもってこいです。
例えば、授業中に、
先生:くまさんは、どんな気持ちでしょう?
子供A:嬉しい気持ち
子供B:ちょっと嬉しかったんじゃない?
子供C:嬉しかったし、またやりたいと思ったん
じゃない?
といった場面は日常茶飯事でしょう。この日常のどこにでもある場面が大切なのです。
例えば、先生が、
先生:Aさんは、何て言っていたかな?
先生:次に、Bさんは、何て言っていたかな?
と、問うとどうでしょう。子供の発言を思い起こさせ、ノートに書くのもよいでしょう。
毎日、このように問うと、子供が、他者の話を聞く必要が生まれるとともに、一時的に覚える力が高まるのです。
現状の学校教育においては、教師の指導技術と称され、子供の発言を先生が記憶したり、すぐに黒板に書いたりし、子供が他者の話し言葉を聞いて覚えておく必要がないことが、実は多いのです。
先生の指示が聞けなくて、授業が楽しくなくなって、離席するというようなお子さんもいます。また、大切なポイントの教示を聞くことができず、学習の理解ができなくなることもあります。ですから、そのような様子になる前の幼児教育や初等教育の早い段階から聴覚的ワーキングメモリを高めてあげることが、その後の子供の豊かな生活につながるといわれています。
【家庭教育】
聴覚的ワーキングメモリは学校教育にだけ求めるものではありません。当然、家庭教育においても、その考え方は通ずるものです。
ぜひ、お子さんに、
「何て言ってた?」
と、問うて、鍛えてあげてください。