六道の辻とあさがお坂
どうやら私は「あほの子」であったようだ。
フードに覆われた線路を何時までも見ていたって面白くなる筈がない。その後どうしたか未だに思い出せないが、あの歩道橋を行ったような気がするし、行かなかったような気がするし。歩道橋に行ったのは別の日だったかもしれない。
フードに沿ってしばらく行くと線路があらわれるが、土曜日の昼下がり過ぎだと通行する貨物列車がそうある筈もなく、やはり退屈である。橋の下は線路が扇形に広がって貨物駅はその向こうである。東側に鉄道の施設らしいビルが見える。西側は現在相模鉄道線の羽沢横浜国大駅で、どうなっていたかちょっと思い出せない。貨物駅の周辺らしく倉庫があった筈である。そして広がった線路の両側は擁壁になっていてその上を道路が取り囲んでいる。歩道橋はその向こう側である。
長い歩道橋の上からは貨物駅が見下ろせるがその柵は高く、フェンスの網目も細かいのではっきり見える感じではない。ところが夕方を過ぎると東京貨物ターミナルを出る大阪方面行きの列車が大体10分おきに出るので相当うるさい。前に東京貨物ターミナル構内にある陸運業者の事務所で仕事をしたことがあったが、横から見える貨物列車の出発風景は中学校の陸上部の部活みたいなダッシュ練習のようだった。
歩道橋は細く長く、その中間には規則正しく動く鉄道を象徴するかのような鉄骨製の高い時計塔がある。その西側に長大な上屋があってその下は貨物積み降ろしのためのプラットホームがあった。一時このホームが羽沢横浜国大駅の旅客ホームになるのかと思ったが違った。数年前に旅客直通運転に備えて構内配線の変更があったが、ホームも改造された。実はこのホームで取り扱うのは貨物ではなく荷物(小包類)で、それを搬送するためのモノラックを大きくしたような物のレールが敷かれていたがもうないだろう。
歩道橋の西側は羽沢で、対面交通路しかなかったがそれが市内でも高級な計4~6車線道路である環状2号線となったのは平成8年のことである。凄いものが出来たと思ったが今見ると雑草の管理も疎かで失望の限りでしかない。ここも道路本線上は歩道橋となっていて若干の高低を経てバス停のあるアプローチ道路を横断歩道で渡ると間知ブロック積みの擁壁があって上からアサガオの蔓が伸びて初夏には花で埋め尽くされる。そうして南西へ向かうと登り道があって登った先の左手にはいまだ機能していない橋があってその向こうが羽沢の六道の辻である。
その名の通り道が6本、輯合(しゅうごう)しているが、六地蔵は見ない。
歩道橋は新駅へのアプローチ通路の一つになり開設に伴って拡幅されるかと思ったが、そのままであった。
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